おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

七人の侍

2017-12-26 10:38:04 | 映画
12/31 BSプレミアム 9:33より放映

「七人の侍」1954年度 日本


監督 黒澤明
出演 三船敏郎 志村喬 津島恵子 藤原釜足
   加東大介 木村功 千秋実 宮口精二
   小杉義男 左卜全 稲葉義男 土屋嘉男

ストーリー
麦の刈入れが終る頃、野伏せりがやって来る。
闘っても勝目はないし、負ければ村中皆殺しだ。
村を守るには侍を傭うことだ、長老儀作(高堂国典)の決断によって茂助(小杉義男)、利吉(土屋嘉男)等は侍探しに出発した。
智勇を備えた歴戦の古豪勘兵衛(志村喬)の協力で五郎兵衛(稲葉義男)、久蔵(宮口精二)、平八(千秋実)、七郎次(加東大介)、勝四郎(木村功)が選ばれた。
もうひとりの菊千代(三船敏郎)は家族を野武士に皆殺しにされた百姓の孤児で野性そのままの男である。
村人は特に不安を感じていたが、菊千代の行動によってだんだん理解が生れていった。
刈入れが終ると野武士の襲撃が始り、戦いの火ぶたは切って落とされた。
利吉の案内で久蔵、菊千代、平八が夜討を決行し火をかけた。
山塞には野武士に奪われた利吉の恋女房(島崎雪子)が居て、彼女は利吉の顔を見ると泣声をあげて燃える火の中に身を投じた。
この夜敵十人を斬ったが、平八は鉄砲に倒れた。
美しい村の娘志乃(津島恵子)は男装をさせられていたが、勝四郎にその秘密を知られ二人の間には恋が芽生えた。
翌朝、十三騎に減った野武士の一団が雨の中を村になだれこんだ。
侍達と百姓達は死物狂いで最後の決戦に挑むが、そこは想像を絶する地獄絵の世界だった・・・。

寸評間違いなく日本映画が生み出した金字塔の一つで黒澤作品の最高峰に位置する作品だ。
黒澤明 、 橋本忍 、 小国英雄のトリオによる 脚本は申し分なく、撮影の中井朝一、美術の松山崇も力を発揮し、日本画家の前田青邨などが美術監修に加わり、早坂文雄の音楽が作品を盛り上げた。
映画は総合芸術なのだと実感させられる名作で、語り尽くされた内容を今更繰り返すまでもない感動作だ。

打楽器による音楽とともに、映像がかぶらない黒をバックに傾いた文字でスタッフ、キャストが表示される。
何度見ても、それだけでワクワクしてしまうのだからこの作品は力強い。
画面が映し出されると、シルエットで野武士が馬に乗って丘の向こうから現れ疾走する。
野武士が村を襲うことがわかり、村人は長老の意見を聞きに行くが、その時に流れる音楽は絶望的なものだ。
やがて侍が集まり始めたところでテーマ曲が流れるが、このテーマ曲はリズムを変えて度々流される。
このテーマ曲がまた絶妙の効果をもたらすのだから、早坂文雄の才能たるやすごいものがある。
七人の侍が決定するまでが全体の三分の一ぐらいを占めているのだが、それぞれのエピソードが面白い。
勘兵衛に腕は上の上という評価をえる宮口精二の久蔵などは、本当に剣豪のように見えてしまうのだが、当の宮口さんは剣道の心得などは全くなかったらしいので、やはり映画はすごいなあと感心してしまう。

ユーモアも含んだ作品だが、その役割は菊千代役の三船敏郎が一手に引き受けている。
刈り入れの時に隠れていた女たちが出てきた時のはしゃぎ様や、夜警で眠りこけて脅かされた時の慌てぶりもキャラクターを前面に出している。
乗馬シーンでは最初の時も、二度目の時も途中で落馬して笑いを誘う。
最初は作品から浮いたようなキャラクターなのだが、繰り返されているうちに親しみが持ててしまう。
彼を中心にして、野武士を迎え撃つ準備段階がやはり全体の三分の一程度描かれ、色々なエピソードが積み上げられていくが、そのテンポは小気味良く高揚感を醸し出していく。

森の中で野武士を発見して、いよいよ野武士との決戦となるのだが、この森の中のシーンは何回か出てくる。
大木だけでなく木々が入れ込んだ森の中をカメラはのぞき見るように人物を追いかける。
思わず、あの環境下でのカメラ位置を想像してしまうし、撮影の苦労も想像させるいづれもみごとなシーンだ。
そして、野武士の出現にオロオロする村人を鎮めるために菊千代が旗を屋根の上に立てると、先のテーマ曲が高らかに鳴り響く。否応なく拳に力が入る場面で、この盛り上げ方は脚本の妙だ。
さて、雨中の決戦。
もうここは色んなカメラを駆使したカットの積み重ねで、時代劇における集団活劇のひとつの到達点だ。
ローアングルで撮ったと思えば、望遠で捉えたアップのショットなどに加え、あちこちで繰り返される戦いの場面を全体で捉えるショットも展開される。
この戦いの場面だけでも語る価値のある名シーンだ。
勝ったのは百姓だと呟くラストシーンだが、勝四郎はこの村に残るのかもしれないと思わせる余韻を含ませたのも脚本の妙だと感心した。
語り尽くせない。




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