おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

48時間

2021-12-28 09:08:27 | 映画
「48時間」 1982年 アメリカ


監督 ウォルター・ヒル
出演 ニック・ノルティ
エディ・マーフィ
アネット・オトゥール
ジェームズ・レマー
ソニー・ランダム
デニース・クロスビー

ストーリー
ある夏の暑い日、囚人のギャンズが看守のブラディを射殺し、先住民族のビリー・ベアと逃走する。
サンフランシスコでは、刑事のジャックが恋人のエレインと一緒の朝を迎えた。
ジャックは精神的に相当まいっている様子だ。
その頃、ギャンズとビリー・ベアはサンフランシスコに来ていた。
公園のベンチには昔の仲間ヘンリー・ウォンが死体となって横たわっていた。
ウォンは盗んだクレジット・カードを届けに来て殺されたのだ。
2人は昔のギャングの一味ルーサーを脅迫し、例の50万ドルを寄こせと要求。
月曜までに必ず手に入れるとルーサーが約束すると、2人は彼の恋人ロザリーを人質として連れ去る。
ジャックは盗まれたクレジット・カードを調べに来たアルグレンとヴァンザントを手伝うことにする。
2人がホテルの2階へ行くと、そこではギャンズが娼婦のリザと寝ていた。
ギャンスがヴァンザントを射殺、アルグレンにも重傷を負わす。
ギャンズとジャックはロビーで対決する。
ギャンズはジャックがピストルを捨てないとアルグレンを始末すると脅す。
アルグレンが制止したにもかかわらず、ジャックはピストルを放る。
ギャンズは即座にアルグレンを射殺して逃げ出し、呆然とするジャック。
ギャンズの捜査記録から、レジーという黒人の仲間がいたことが分るが、彼は今、刑務所で服役中だ。
ヘイドン署長に散々どなられたジャックは刑務所に行き、レジーから情報を得ようとする。
しかし、相手もさる者、ここから出してくれという。
ジャックは強引なやり方でレジーを48時間だけ仮釈放させることにした・・・。


寸評
エディ・マーフィの映画デビュー作で、主人公のニック・ノルティよりも目立つところがあり役得となっている。
ジャックはいわゆるハミ出し刑事だが、恋人のエレインには頭が上がらない人間臭いところがあるので魅力的なキャラクターとなっている。
彼の場合は捜査なのだが仕事に忙殺されて彼女にご機嫌取りの電話を入れても、仕事を優先させなければならないという悲哀を味わっているのは一般のサラリーマンと変わりはない。

刑事のジャックが刑務所にいるレジーという黒人の男を48時間だけ保釈し犯人逮捕に協力させるのだが、このレジーを演じているのがエディ・マーフィである。
ノルティのジャックがポンコツ車に乗り風采の上がらない格好をしているのに比べ、保釈されたマーフィのレジーは立派な服を着ていて態度もでかい。
犯罪者で服役中のレジーと保釈を認めてやった刑事と言う立場からすれば、圧倒的にジャックが上に立って当然で、実際高圧的な態度も取るのだが、事実上はレジーが仕切っているという関係が笑わせる。
この二人のやり取りがハードボイルド・アクション映画でありながら喜劇的要素を含んだ痛快娯楽作としている。
女を口説くのにもハッタリを利かすレジーが一番ハッタリをかますのが、ジャックから借りた刑事のバッジを見せて刑事になりすましてビリー・ベアの居場所を聞き出す酒場の場面だ。
ジャック以上に暴れまくり、店主や客を恐喝する。
おまけにチャッカリと客から拳銃とナイフを取り上げているという具合で、ことを成し遂げたあとのエディ・マーフィの飄々とした態度が何とも痛快だ。

尾行されているとも知らぬルーサーは、バスを盗んで運転してきたギャンズに会いに行き、金の入ったケースを渡すとギャンズはルーサーを即座に射殺。
ギャンズの非情と異常性を強調する場面で、そこからジャックとレジーがキャデラックで追跡するカーチェイスと銃撃戦が繰り広げられる。
前にもギャンズを取り逃がしていたジャックは、ここでもバスに乗った二人を取り逃がすことになるのだが、どうして銃撃戦の時にバスのタイヤを狙ってパンクさせなかったのかなあ。
しかし刑事らしくないジャックが警官によって犯人逮捕を阻止されるのは納得できるし、同じような状況を他でも描いていてジャックのはみ出し刑事ぶりを強調する演出としている。

レジーは刑務所に戻る前にキャンディと楽しみ、半年して出所したらまた来ると約束する。
女なら誰でも良かった筈だが、キャンディとはお互いに気に入った関係になったようである。
レジーに友情を感じ始めたジャックは「例の50万ドルはお前のものだ。だがまた悪事をはたらいたら、容赦しないぞ」と警告して映画は終わるのだが、レジーの女性関係をこ前述のように締めくくるのなら、ジャックとエレインの関係はどうなったのだろうと気がかりになった。
ストーリーとしては大雑把なところがあるように思うが、ニック・ノルティとエディ・マーフィのコンビが繰り広げる漫才のようなやり取りが楽しめる作品である。
エディ・マーフィがこの後ブレイクするが、それを納得させるだけの面白さが彼にはあった。


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2 コメント

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また一つのはみ出し刑事物 (館長)
2023-11-16 07:43:50
はみ出し刑事物は数多くありますが、これもその一つと言えるでしょう。
それよりも二人のキャラクターが抜群のマッチを見せる痛快娯楽作になっていると思います。
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「48時間」について (風早真希)
2023-11-14 10:44:16
この映画「48時間」は、サンフランシスコの街を舞台に、脱獄した凶悪犯を追うはみ出し刑事が、刑務所に服役中の凶悪犯の仲間に48時間の仮釈放を与え、彼をパートナーとして大追跡を繰り広げる、ごきげんなポリス・アクション映画だ。

スピード感あふれるウォルター・ヒル監督の演出にのって、エディ・マーフィーが見事なデビューを飾った作品としても知られている作品だ。

看守を殺して脱獄した凶悪犯。彼は更に刑事二人を惨殺して逃亡を続ける。
そして、これを追いかけるのが、横紙破りのはみ出し刑事。

こうくれば、あの「ダーティハリー」を思い出すが、舞台は同じサンフランシスコでも、この後の物語の展開が何とも変わっているのだ。

はみ出し刑事は、凶悪犯のかつての仲間を刑務所から仮出所させ、情報を引き出しながら一緒に追跡して行く。
タイムリミットは48時間------。

このかつての仲間が黒人で、はみ出し刑事がアイルランド系の白人。
刑事は、自分の手と黒人の手を手錠でつないで走るのだが、次第に二人の信頼感で強まっていく。

もちろん、これは言うまでもなく、スタンリー・クレイマー監督、トニー・カーチス、シドニー・ポワチエ主演の「手錠のままの脱獄」のアイディアをいただいている。

アメリカの混乱を乗り切るには、白人と黒人が手をつなぐしかないという訴えは、あの時代より遥かに実感をもって迫ってくる。

と言ってもシリアスにそれを描くのではなく、時にアクションで振り回し、時に笑い飛ばして見せる若さは、リアリズムを基調にした訴えではなく、"寓話"としての面白さを創り出して見せてくれる。

いくらアメリカでも、仮出所の囚人に警察手帳や拳銃を貸すなんてことは絶対にあり得ないのだが、その気にさせてしまうあたりが、当時、ニューアクションの旗手と言われたウォルター・ヒル監督の腕前なのだろう。

はみ出し刑事のニック・ノルティのウドの大木的なムード、エディ・マーフィの小賢しさ。
ともに演技というより、キャラクターの面白さで大いに楽しませてくれる。

白人と黒人が手を握って、その一方の凶悪犯側はプエルトリコ系やネイティブアメリカン系の青年。
結局、時代からはみ出していくものは、いつの時代も時の弱小民族なのだろうか。
こんなあたりにも、当時のアメリカの姿が見えて、まことに興味深い映画である。
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