おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

居酒屋ゆうれい

2023-08-05 07:27:37 | 映画
「居酒屋ゆうれい」 1994年 日本


監督 渡邊孝好
出演 萩原健一 山口智子 室井滋 三宅裕司 西島秀俊 八名信夫
   橋爪功 渋谷琴乃 豊川悦司 尾藤イサオ 余貴美子 角替和枝
   絵沢萠子 大竹まこと

ストーリー
居酒屋「かづさ屋」の主人・壮太郎は、妻・しず子が息を引き取る前に決して再婚はしないと約束したのに、兄の豊造夫婦の強引な勧めで見合いをした相手の里子にクラッときて、一緒になってしまった。
ところが、それを恨みに思ったしず子は幽霊となって、嘘をついたのねと壮太郎を問い詰め始めた。
おまえも愛していたけど、里子も愛しているんだ、という壮太郎の胸のつぶやきも、しず子には通じない。
彼をめぐって、この世の女とあの世の女が壮絶な戦いを繰り広げることとなり、「かづさ屋」は壊滅状態に。
とはいっても、他人の眼にはしず子は見えず、「かづさ屋」は若い美人のおかみさん目当ての客が増えて毎晩大にぎわいとなる。
幼ななじみのバクチ打ちの辰夫、三河屋酒店の幸一、魚春のオヤジ、家族を捨て蒸発した佐久間、父を探し歩く娘…そんな人間たちが束の間の寂しさを忘れるために集まる、溜まり場となっていった。
一方、ユーレイ騒動に疲れた壮太郎と里子は、寺へ相談に行く。
和尚は幽霊画の掛け軸を2人に渡しながら、あの世とこの世との出入り口になっている掛け軸の絵の中に幽霊を入れてしまえばもう悩まされることはないと言うのだが、計画は失敗し、壮太郎は掛け軸をうっかり電車の中で盗まれてしまう。
しず子の復讐が始まり、彼女は里子の体に乗り移り、壮太郎を誘惑する。
ところが、さらに事態は急転し、辰夫が別れた妻子とヨリを戻す心機一転のためと、借金をして野球のナイター戦の賭けをしてしまう。
また里子は昔の恋人でヤクザの杉本から呼び出しを受け、行方をくらましてしまった。
壮太郎は辰夫のために、しず子に懇願してナイター戦の結果を前もって教えてもらうのだが、それはしず子にとってはこの世にいられなくなることだった・・・。


寸評
山口智子はテレビドラマの世界でトレンディ女優と言う地位を得ていたが、雰囲気の女優でもあり映画の世界ではこれといった作品に恵まれていないのだが、この作品では可愛い後妻として彼女の持つ溌溂とした明るさを前面に出して魅力を発揮している。
壮太郎(萩原健一)は妻のしず子(室井滋)の臨終に際して絶対に再婚はしないと約束したのだが、いい女の里子(山口智子)と出会って再婚してしまう。
しず子は壮太郎が再婚したのは約束違反だと幽霊となって彼等の前に現れ三角関係を繰り広げるという話で、メルヘン的な雰囲気を残しながらも人情をからませたコメディとしてうまくまとめている。
しず子の姿は子供には見えるが、壮太郎と里子以外の大人には見えない。
壮太郎と里子が良い雰囲気になると、焼きもちを焼いたしず子が彼等の邪魔をしにこの世にあらわれる。
何とか成仏させてあげようとするが、なかなか消えてくれないので四苦八苦するのが本筋となっている。
その内にしず子と里子の間に友情めいたものが生まれ始めるのはドラマ的には順当なものだが、さりげなく描いていて押し付けがましくないのがいい。

舞台は壮太郎がやっている居酒屋なので常連客がいつも集っている。
ギャンブルが原因で財産を失くし、今はマンションの管理人をしている辰夫(三宅裕司)、いつも2,350円で飲み食いをしている魚屋の魚春(八名信夫)、壮太郎の店に酒を卸している酒屋の幸一(西島秀俊)などだ。
そこに道に迷ったことから常連客となった佐久間(橋爪功)も加わるが、佐久間はどうやら蒸発中であるらしい。
辰夫は女房のカスミ(余貴美子)と別れているが、そのカスミが500万円の借金を作って10年ぶりに壮太郎に泣きついてきている。
カスミには子供があるが壮太郎の子供ではない。
父親を捜す佐久間理恵(渋谷琴乃)もこの店に出入りするようになるが、父親の佐久間と出会うことはない。
居酒屋「かづさ屋」はそんな悩みを抱えた人たちが集う場所でもある。

その後の展開を見ると「かずさ屋」は人々の再生の場所でもあり、輪廻転生の場所でもある。
どうやら辰夫はカスミとよりを戻せそうだし、自分の子供ではない男の子との関係も上手くいきそうだ。
佐久間は娘の元へ帰っていきそうだし、幸一と理恵の間にはホンワカムードが生まれ始めているみたい。
しず子は里子に取りついて、里子の抱えている問題を解決してやる。
しず子はあちらの世界の掟を破ったことで人間世界に現れることが出来なくなるが、最後の別れのために里子となって壮太郎と抱擁する。
僕は、しず子は里子となって現世で壮太郎の前に現れたのだと思う。
ぐったりした里子が気を取り戻し、店先に蛍が舞っていることに気づいて表に飛び出し、小指の包帯を外して「あんた、ただいま」と晴々しい表情で声をかける。
その言い方は、しず子が生前に壮太郎のことを呼んでいた呼び方と同じだ。
そうに違いない、しず子は里子となって壮太郎のもとに帰って来ていたのだと思う。
帰ってきてくれるのが山口智子なら大満足だ。
本作はなかなか上質なコメディとなっていて、渡邊孝好としても代表作と言ってもいいのではないか。


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