おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ギルバート・グレイプ

2022-06-10 08:02:42 | 映画
「ギルバート・グレイプ」 1993年 アメリカ


監督 ラッセ・ハルストレム
出演 ジョニー・デップ
   ジュリエット・ルイス
   メアリー・スティーンバージェン
   レオナルド・ディカプリオ
   ダーレン・ケイツ
   ローラ・ハリントン

ストーリー
人口千人ほどの田舎町、アイオワ州エンドーラで、24歳のギルバート・グレイプ(ジョニー・デップ)は、大型スーパーの進出ではやらなくなった食料品店に勤めている。
日々の生活は退屈なものだったが、彼には町を離れられない理由があった。
知的障害を持つ弟アーニー(レオナルド・ディカプリオ)は彼が身の回りの世話を焼き、常に監視していないとすぐに町の給水塔に登るなどの大騒ぎを起こすやんちゃ坊主。
母のボニー(ダーレーン・ケイツ)は夫が17年前に突然、首吊り自殺を遂げて以来、外出もせず一日中食べ続けたあげく、鯨のように太ってしまった。
ギルバートはそんな彼らの面倒を、姉のエイミー(ローラ・ハリントン)、妹のエレン(メリー・ケイト・シェルバート)とともに見なければなれなかった。
彼は店のお客で、中年の夫人ベティ・カーヴァー(メアリー・スティーンバージェン)と不倫を重ねていたが、夫(ケヴィン・タイ)は気づいている。
ある日、ギルバートは沿道にキャンプを張っている美少女ベッキー(ジュリエット・ルイス)と知り合い、2人の仲は急速に深まるが、家族を捨てて彼女と町を出ていくことはできなかった。
そんな時、ベティの夫が死亡し、彼女は子供たちと町を出た。
アーニーの18歳の誕生パーティの前日、ギルバートは弟を風呂へ入れさせようとした時、いらだちが爆発して暴力を振るってしまい、いたたまれなくなって家を飛びだした彼の足は、自然にベッキーの元へと向かった。
華やかなパーティも終わり、愛するアーニーが18歳を迎えた安堵からか、ボニーが2階のベッドで眠るように息を引き取ると、母の巨体と葬儀のことを思ったギルバートは「笑い者にはさせない」と決心し、家に火を放つ。
一年後、ギルバートはアーニーと、町を訪れたベッキーのトレーラーに乗り込む。


寸評
レオナルド・ディカプリオがすごい!
知的障害を持つアーニーを演じているが、この演技がこの映画を支配している。
とは言え、主人公は長男のギルバートである。
彼は肉親に拘束され町を出ることも、自由に飛び回ることもできない。
父親は自殺しており、そのショックからか母親は食べ過ぎてギルバートからクジラだと言われるくらい太っている。
その巨体は町の子供たちの好奇の対象でもあり、家族はその巨体を恥じている。
母親が家に引きこもっているのは、その巨体の為だ。
そんな母親をギルバートも、姉のエイミーも、妹のエレンも見捨てるわけにもいかず、せっせと世話を焼いている。
そんな母親がたった一度家を出て、保安官事務所に補導されたアーニーを迎えに行く。
所長は旧知の間柄らしく、呼び捨てにしてアーニーを連れ戻すのだが、母親は醜い姿になって人目をはばかるようになっていても、自分の子供への愛情は人並み以上なのだと訴える感動的なシーンとなっている。
ここでも母親は町の人から好奇の目を向けられ、中には写真を撮る者もいるという状況が痛ましい。

知的障害を持つ弟の面倒を見ているのがギルバートで、彼は職場の食料品店にも連れていき、一日中アーニーと過ごしている。
動けない母親と、知的障害の弟を抱えギルバートはどうすることもできない。
そんな環境に対するイライラが内在しているギルバートのはずだが、そのイライラを表立って見せないのは上手い描き方で、彼の立場につい同情を寄せてしまう。
同情は一歩離れた他人の感情で、自分が彼の立場だったらと思うと恐ろしくもある。
母親は太っている以外は普通という状態だが、見ている限りでは要介護者だ。
介護が必要な家族がいる事の大変さは、少なからず僕も経験しているが、世の中の人は僕の経験などとは比較にならないほどの苦労をしているはずだ。
おまけに給水塔に登って何度もパトカーのお世話になっている弟を抱えているのである。
そんな彼のはけ口が中年夫人ベティの不倫相手になることだったのだろう。
妻が不倫しているというこの家庭も変で、夫は気付いているような所があって、子供に対しても極端な行動を見せている。
結局、心臓マヒを起こして子供用のビニールプールで溺死してしまうのだが、街の人は妻が殺したのではないかと噂をしているという始末なのだ。
ギルバートはそんな異様な人間に囲まれていたということになるのだが、それを救うのがベッキーである。
しかし彼女も定住者ではなく、母親とキャンピングカーで旅しているという女性である。
どうやらギルバートの居る町の近くはキャンピングカーの集積地の様で、毎年列を連ねてやってきている。
ギルバートはベッキーと恋に落ちるが、母親や弟を棄てて出ていくことが出来ない。
悲しいことに、そんな彼を救うのが母親の死である。
クレーンで運び出されるのを見物に来る町の人を予想し、家財道具を運び出して家ごと火葬してしまう。
切ないシーンだが、燃え上がる家が美しいシーンでもある。
憂鬱になってくる映画だが、最後になってやっと救われた気分になった。


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