末つ森でひとやすみ

映画や音楽、読書メモを中心とした備忘録です。のんびり、マイペースに書いていこうと思います。

ナルニア国物語 第1章 ~ ライオンと魔女

2006-04-09 22:43:52 | 映画のはなし

The Chronicles of Narnia
The Chronicles of Narnia
~ The Lion, the Witch and the Wardrobe ~

原作の呪縛に囚われたくなかったので、直前に読み返すことの無いよう、
手元の原作本は知人に貸し出しっぱなしという状態で臨んだせいか、
一つの映画作品として、心乱されること無く (苦笑) 鑑賞することができました。

良くも悪くも、ディズニーらしく無難にまとめてあったと思います。
原作を大きく逸脱することがなかった、という点では、
ディズニーなのに、よくやった! ・・ と、むしろ誉めるべきかもしれません。

映画化にあたっての一番大きな改変は、ペベンシー家の4兄妹のキャラクターを、
よりハッキリと打ち出してきたことでしょうか。
映画は冒頭、ドイツ軍の戦闘機からの俯瞰の構図でシーンが映し出されますが、
彼等の家が空襲にあうという描写は、原作では登場しません。
この、戦争で父親不在の状況下にあるペベンシー家の様子が付け加えられたことで、
ナルニア国に入ってからの、物語進行のカギとなる
長兄ピーターと次兄エドマンドの確執が、しっかりフォローされた形となりました。

父親の代わりに、家族を守らなきゃ ― という気負いが、時に重圧となり、
まだ子どもであるが故の頑なさ、融通のきかなさが裏目に出てしまうピーター。

次男坊であり、次兄でもあるという、
相反するかのような役割をこなさなければいけない、繊細で不器用なエドマンド。

特に、原作では単なる “ イヤな子 ” みたいな印象だったエドマンドが、
父親の写真のエピソードが挿入されたことで、
彼の中に鬱積していたであろう心の傷を思いやることが容易になり、
ナルニアでの経験が彼にもたらす成長の過程を、
無理なく共感ができるよう、わかりやすく作られていたと思います。

まず、はじめに原作ありき ― の作品で、
映画化により主要人物に手が加えられてしまうことは、
賛否両論、というよりマイナスに傾く前例が大いにある中で、
今回の子どもたちの改変は、プラス方向に作用した成功例と言えるでしょう。

一方で、ディズニー映画であることがネックとなり、
不完全燃焼の感が強かったのが、ナルニアという “ 異世界 ” の見せ方でした。

どこが、どう悪い ・・ という訳でもないのですが、
予告編を見て想定した範囲内に、
すべてが納まってしまっているというのでしょうか。
確かに、小さな子どもにも安心して見せられる作りではあったものの、
映画というメディアだからこそ味わえる醍醐味というか、
原作既読者が、それぞれ頭の中で思い描いていたイメージを凌駕するような、
圧倒的な < 映像美 > に出会えなかったという点については、
正直、物足りなかったと言わざるをえません。

無駄に、派手な世界を作り上げる必要はないけれど、
こちらの世界に戻ってきたルーシィが、
再び “ ナルニア ” に訪れたくて 、夜中にこっそり衣装ダンスの扉を開けに来る。。
その部分に、必要十分な説得力を持たせることができるほどのナルニアの魅力を、
< 映像 > としても 表現して欲しかったと思います。

はじめて原作を読んだ小学校4年生の時、
お約束のように (笑) 、家にあったクローゼットの中にもぐり込んでみました。
物語とは違い、別世界に行くことはありませんでしたが、
普段から見慣れている筈の、自宅の部屋の様子が、
クローゼットの内側からという、いつもとは違う目線で見ることにより、
非日常的なズレを持ちはじめたように感じられて、面白かった記憶があります。

この映画で、はじめて “ ナルニア ” に接した子どもたちは、
果たして、どんな風にして < 物語のふしぎ > を、
自分のなかに取り込んでいこうとするのでしょうか。

大人になってしまった私は、
スクリーンを通して再び、ナルニアの世界を楽しみたいというよりも、
ペベンシー家の子どもたちが、再び訪れたナルニアでどう行動していくのか
に焦点をあてて、映画の次回作を待つことになりそうです。

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   映画 『 ナルニア国物語 第1章 ~ ライオンと魔女 』

  ◇原題:The Chronicles of Narnia ~ The Lion, the Witch and the Wardrobe
  ◇関連サイト:公式サイト ( 日本版US版 ) / IMDb ( 関連ページ
  ◇鑑賞日:2006. 4. 7. 映画館にて



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