ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

是枝監督 「父になる」とはどういうことか

2018-05-21 17:19:12 | 日記
是枝裕和監督の映画「万引き家族」が、カンヌ国際映画祭の最高賞パルム
ドールを受賞した。ニュースを見ながら夕餉のテーブルを囲んでいると、
出産を間近に控えた娘が、「是枝監督の作品では、『やがて父になる』が
好かったよ」と言う。子供を取り違えられた親子の話で、主演は福山雅治
とのこと。興味をそそられ、ネットで調べると、幸い、この作品はアマゾ
ン・プライムビデオに収録されていることが判った。

2時間ほどの作品である。NHKの「西郷どん」を観おえた後で、焼酎の水割
りをちびりちびり口に運び、眠い目を擦りながら7.9インチのタブレット
で観たこの作品は、私にはあまり面白いとは思えなかった。肩透かしを食らっ
た気がした。「是枝作品だから、すごいはずだ」、「娯楽映画とは違い、話
題になった文芸作品であるからには、気を抜いて観るわけにはいかないぞ」
という思い込みが先に立ったためかも知れない。8インチ足らずの小さなモ
ニタ画面で観たためかも知れない。映像の展開にわざとらしさがなく、俳優
一人ひとりの演技が自然すぎたためかも知れない。

だが、観おわってベッドに横になってから、じわりじわりと私に迫ってくる
ものがあった。この作品には、三様の父子のふれあいの形が描かれている。
(1)良多と慶多、(2)良多と琉晴、(3)良多と慶多。

(1)良多は、福山雅治が演じる1児の父親である。一人息子の慶多に、何
かと気落ちして、「こいつはホントに俺の息子なのか」と思いながら(半ば
無意識に疑いながら)、一緒に遊ぶことも、風呂に入ることもなく、表面的
な日常の受け答えに終始する。薄いふれあいの日々と言えるだろう。
(2)琉晴は、血のつながった良多の実の息子である。病院での取り違え事
故が発覚してから、慶多と引き換えに良多のマンションで一緒に暮らすよう
になるが、群馬で奔放に育てられたためか、良多は初めは違和感をぬぐえな
い。それでも、二人は徐々に馴染み始める。出来立てほやほやの、生煮えの
ふれあいといったところか。
(3)良多は、(慶多が暮らす)琉晴の生家を訪ね、慶多を抱きしめる。そ
こに生まれる熱いふれあい。そういうふれあいへと良多を駆り立てたものが
ある。

この映画を観ながら、私は、自分と息子とのことを考えていた。息子は盆と
正月に帰省するだけ。そういう疎遠な関係がもう10年以上も続いている。
東京の企業に就職するまでは我が家で同居していたが、では、一緒に暮らし
たその23年間はどうだったのか、と考えたのだ。たぶん(1)の、良多と
慶多のふれあいに似ていたのではないか。だからこそ、私には慶多との熱い
ふれあいを求める良多の(3)の気持ちがよく解る。良多を群馬へと駆り立
てたものーー。ベッドに横になった私に、じわりじわりと迫ってきたのは、
良多のその思いにほかならない。
コメント
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