ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

祭りのあとで

2016-07-12 15:43:06 | 日記
戦いは終わった。結果は、自公の大勝である。「自公が勝った
ら、改憲が可能になる。そうなったら大変だ!」と騒ぎ立てて
いた「野党びいき」の新聞各紙だが、それではその社説は、こ
の選挙結果をうけて、どういう反応を示すのか。

最も露骨で極端なのは、朝日の反応である。7月11日付の社説
《自公が国政選4連勝 「後出し改憲」に信はない》はこう述
べる。
「この選挙結果で、憲法改正に国民からゴーサインが出たとは
決していえない。」
というのも、「争点隠し」を行った今回の選挙の、その結果を
うけて自公政権が憲法改正に踏み切ったとしても、それは正統
的な民主主義の手続きを踏んだものにはならないからである。
然るべきプロセスを経ないでなされる改憲は、正当性を持ちえ
ない、というのが、朝日の論拠である。

日経も東京も、ほぼ同様の論拠に立って、次のように述べてい
る。
「国政選挙では触れないでいながら、国会の憲法審査会でいき
なり具体的な発議項目を詰めていくような展開は、やはり民主
的な手続きのうえからも問題と言わざるを得ない。」
(日経、7月11日付《改憲より先にやるべきことがある》)

「憲法は、国民が政治権力を律するためにある。どの部分をな
ぜ改正するのか、国民に事前に問い掛けることなく、参院選で
「国民の信を得た」として改正に着手するような暴挙を許して
はならない」
(東京、7月11日付《参院選 改憲勢力3分の2 「白紙委任
」ではない》)

手続きに問題がある以上、安倍政権は改憲を焦らず、もう一つ
の重要な問題に取り組むべきだ、というのが、日経の主張であ
る。
「ここはまず経済再生に政権の力を集中し改憲は議論段階とし
て取り組んでいくのが適当だ」。
改憲よりも先に経済再生を、というのは、いかにも経済新聞ら
しい主張ではないか。

もっとも、これで改憲問題がチャラになったと考えるなら、そ
れは早計である。というのも、有権者は、今回の選挙が改憲を
かけた選挙であることを知らずに、自公に票を入れたわけでは
ないからである。たしかに自民も公明も改憲問題を公約にかか
げなかった。しかし、裏にある実質的な争点が改憲問題である
こと、このことは、各新聞の社説が散々書きたてていたことで
ある。今回の選挙は改憲問題に無関係だと思うほど、有権者は
馬鹿でも「情弱」でもない。

では、有権者はどういう理由から、自公政権を選択したのか。
それは、改憲の政権を望んだというより、「野合」の政権を忌
避したからだと言えるだろう。足並みが揃わない「野合」の政
権では、安保問題に適切に対処できない。それでは困る、と考
えたのだ。日米同盟がもたらす軍事バランスが抑止力になっ
て、現状の「戦争がない」状態が維持されることを、有権者は
望んだのである。

憲法が改正されると、すぐにでも戦争に駆り出されると煽った
新聞もあったが、改憲がただちに徴兵制を意味するものでない
ことは、誰もが知っている。有権者の無知を当てこんで、改憲
が徴兵に直結するかのように書き立てた一部新聞の煽動は(若
者を対象としたものであったとはいえ)有権者を馬鹿にしたも
のだと言わなければならない。

こうしたことを考えると、産経の社説(7.11付)の長たらしい
タイトルは、実に的を射ている。
《政策なき「野合」は否定された 直面する困難を克服するた
め強い政権の継続が必要だと有権者は判断したのだ》

ここで言う「直面する困難の克服」とは、経済的問題の克服で
ある。たいへん興味深いことだが、「与党びいき」の産経、読
売は、改憲よりも経済問題の克服を、まずもって安倍政権が取
り組むべき喫緊の課題だとしている。7月11日付の読売の社説
のタイトル《参院選与党大勝 安定基盤で経済再生の貫徹を》
は、これらの新聞の主張の内容を、端的に表している。つまり、
奇妙なことに、その内容は、「野党びいき」の新聞の社説と、
結論が一緒なのである。

もっとも「与党びいき」の産経は、翌7月12日になると、一転
して《3分の2勢力 憲法改正案の作成に動け 首相は歴史的
使命果たす時だ》と題する社説を掲げ、ラディカル右翼へと急
旋回している。自公大勝の選挙結果をうけながら、「野党びい
き」の朝日、毎日、東京も、「与党びいき」の読売も、すべて
の新聞の社説がこぞって「改憲よりも経済再生を」と主張した
ことに、業を煮やしたのだろう。あるいは、そんななかにあっ
て、この会社本来の独自性を出そうとしたのかも知れない。
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