さて、その時、僕らは事務所の近所の和風居酒屋「村田」の個室で、ワイワイ飲んでおりました。
メンバーは、御島社長(31)を筆頭にいつものメンバー、辛辣姫ユキちゃん(28)、若いミユウちゃん(25)、
イケメン貴島くん(29)、若い池澤くん(24)に、僕です。
「わたし、やっぱり、ぶりっ子って本当に嫌いなんですよねー」
と、日本酒を飲みながら、ミユウちゃんが言います。割りと出来上がっている感じ。
「それは女子はぶりっ子が嫌いよ・・・でも、どうして、今頃、そんな話なの?」
と、御島さん。
「いや、最近、よくテレビに出てて・・・いちいちムカつくって言うか・・・」
「個人名は挙げませんけど、某有名歌舞伎俳優の義理の姉のフリーアナウンサーの人・・・」
と、ミユウちゃん。
「いや、それ、名前、すぐわかるじゃないすか・・・」
と、池澤くんは、呆れ顔。
「ま、それくらい、その女性が大嫌いってわけだ、ミユウちゃんは」
と、僕。
「そうなんですよ。ほんと、すべての男性に媚を売るだけの一挙手一投足が、女性を不快にしているって事、何故、わからないのかなー」
と、ミユウちゃん。
「それって、ぶりっ子の女性は常に男にどう見られるか考えて行動しているって事ですか?」
と、池澤くん。
「言わずもがな・・・だけど、そういう事なのよ」
と、御島さん。
「ねえ、なんで、ぶりっ子の人って、女性に嫌われるのがわかっているのに、ぶりっ子するわけ?」
と、僕。
「それは・・・ユキさん、何故ですか?」
と、ミユウちゃん。
「そうね。それはすべての男性に気に入られたいからでしょう?すべての男性の気を引くため、そういう女性はぶりっ子をしているのよ」
「それがまた、男性には、有効だから・・・。特に女性の中身が見抜けない・・・大半の男性に、ね・・・」
と、ユキちゃん。
「どう?池澤くんは、ぶりっ子は好き?」
と、辛辣姫。
「うーん・・・っていうか、ユキさんの指摘通り、俺、その女性がぶりっ子なのか、どうか」
「見抜けないって言うか、案外好きかも・・・ダメですね、男性として」
と、池澤くん。
「ううん。いいのよ・・・20代の前半くらいだったら、そういうものだもの」
「でも、ぶりっ子が増えるのは、その駄目さ加減を見抜けない男性の責任でもあるんですよね・・・」
と、辛辣姫。
「げ・・・それじゃあ、僕くらいから、ぶりっ子は見抜けないと、男子失格って事になるか?多岐川」
と、貴島くん。
「そうですね。貴島さんには、ぶりっ子くらい、見抜いて欲しいですね」
と、辛辣姫。
「まあ、彼女にも同じような事を言われているよ。「あの子、ぶりっ子だから気をつけて」・・・みたいに言われるし」
「・・・そういう意味じゃあ、ぶりっ子って、若い子に多いよね。それこそ、20代前半くらいまでの女性・・・」
と、貴島くん。
「そうなんですよ。本来、20代前半で、自分のやっている事が愚かしいと気づくはずなんですよ」
「それがあのオンナ・・・もう、30代中盤なんですよ?それでも気づかないんだから・・・」
と、ミユウちゃん。
「そう言えば、同じ種類の女性として・・・さとう珠緒って女性がいたっけ」
「彼女も相当女性に嫌われていたけど、それを逆手に取ってギャグにしてたりしたよね・・・」
「あれって、相当儲かったんじゃないかな」
と、僕。
「まあ、そういう一種自虐的なギャグにするのは、ある意味、プロですから、いいんですけど」
「・・・なんか、無自覚なぶりっ子が大嫌いなんですよ、わたし・・・」
と、ミユウちゃん。
「じゃあ、聞くけどさ・・・女性のお三方的に、ぶりっ子を定義すると、どんな言葉になるわけ?」
と、僕。
「そうね・・・いい質問だわ。ちょっと真面目に考えてみようかしら。「ぶりっ子」について・・・」
と、御島さん。乗ってきた。
「ぶりっ子って、某女性のように・・・自分じゃ、ぶりっ子じゃないって、強力に否定するんだけど」
「ぶりっ子って称号は、周囲が認定するものなのね。つまり、その女子が男子によく思われたいから、自分勝手に」
「男性に甘える行為が、ぶりっ子って言われる現象なの。そして、その自分勝手に男性に甘える行為そのものが」
「女性に蛇蝎の如く嫌われるって事なのね」
と、御島さん。
「ほう、なるほど・・・御島さんにかかると「ぶりっ子」も社会現象って感じに聞こえるね」
と、僕。
「結局、それも、ある意味、自分勝手な「俺エライ病」なんですね。自分だけ、男性によくして貰いたいって願望なんですよね、それ」
と、池澤くん。
「そうよ。普段の自分とは、違う自分を演出する「ぶりっ子」もいる。・・・女性の前では、素の自分をさらけだしている癖に」
「男性の前に出ると「わたし、これ怖くて食べられなーい」とか「やだー、わたし、気が弱いから、これできなーい」とか」
「要は、ことさらに、「弱い自分」「小さい自分」「何も出来ない自分」を男性にプレゼンして」
「男性の父性本能を刺激して・・・相手をメロメロにさせる手法を取る女性なの」
と、御島さん。
「実際、女性は、その「ぶりっ子」の女性が普通に能力のある、普通の女性だってわかっているから」
「その「弱い女性」プレゼンに嫉妬するから、不快になるの。そういう事ですよね、御島さん」
と、辛辣姫。
「そうね。確かに同じ女性の嫉妬心を生むわよね・・・ぶりっ子の女性は、他の女性を全部出し抜いて、男性を全部かっさらおうとしているわけだから」
「「コミュニティ皆での共存共栄」をテーマに生きている女性からすれば「ルール無視」のぶりっ子の女性は」
「蛇蝎の如く嫌われるのは、当然よね」
と、御島さん。
「なるほど・・・意図的に自分を赤ちゃん化する事で、男性の父性本能を刺激し、メロメロにする手法を取り」
「自分だけチヤホヤされたいと、他の女性、すべてを出し抜く事を志向しているのが、「ぶりっ子」現象か・・・なるほどね」
「確かに、「俺エライ病」の一種だな。自分だけを特別視し、他を見下している、構図だ」
と、僕。
「だから、女性は不快になる・・・当たり前の構図ですね」
と、池澤くん。
「とにかく、男性の前に出ると豹変して、男性に媚を売ることばかり考えているのが、ぶりっ子、なのよね」
「なんか、自分を男性に売り込むだけの為に女性全員の尊厳を貶めているとさえ、思うわ」
「だから、ぶりっ子は、女性に嫌われるのよ・・・」
と、御島さん。
「でも・・・あの女性・・・毎回、ぶりっ子である事を他人から指摘されても」
「「わたしは、ぶりっ子じゃ、ありません」って言い続けてますけど・・・あれはどういう事なんですか?」
と、貴島くん。
「意図的にやってる事ではないから、わたしは、ぶりっ子ではない・・・そう言いたいんでしょうね」
と、御島さん。
「じゃあ、天然って事なんですか?」
と、池澤くん。
「ううん、それとも、違うわよね。天然な女性は、周囲を不快にさせないもの」
と、御島さん。
「じゃあ、何なんですかね?あの某女性は・・・」
と、池澤くん。
「それって、その女性が「自分は可愛い。だから、ぶりっ子をやっても許されるんだ」って思っているか、否かの違い」
「・・・なんなんじゃないですか?」
と、ミユウちゃん。
「あの女性は、確実に「わたしは可愛い。だから、ぶりっ子をやっても許されるんだ」って思っているんですよ」
「だから、毎回、意図的にぶりっ子をしているのに、それを見破られて「ぶりっ子」と指摘されても」
「「意図的」と言う事を認めるわけには、いかないから・・・「わたしはぶりっ子じゃありません」って言い続けているんですよ」
と、ミユウちゃん。
「なるほどーー。それってすげえ、わかるな・・・そんな奴、男性も嫌いだよ」
と、僕。
「だとしたら、彼女は、裸の王様状態じゃないですか。皆王様は裸だとわかっているのに」
「たったひとり、「わしは裸なんかじゃない。裸に見えるだけだ」って言ってるようなもんですよ」
「それじゃあ、永久に結婚出来ないでしょ!」
と、池澤くん。
「それって、滑稽だな。人生くだらないな、そういう女性は」
と、貴島くんは、クールに言い抜いた。
「結局、ぶりっ子をするオンナって、ココロが卑しいのよ」
「「自分は可愛いから、何をやっても許される。ぶりっ子して、男性に対して、ひとりで目立っても」」
「「他の女性は可愛くないから、何を言っても、わたしは、気にしないし・・・」って思っているのは明白だし」
「要は人生楽したいのよ。他の女性が、いろいろ努力して、男性に見つけてもらおうとがんばっているのに」
「その努力を怠けているのが、ぶりっ子の女性って事なの。だから、男性はそこをよーく見抜いた方がいいって事になるの」
「ぶりっ子な女性となんか結婚して御覧なさい。中身は超自分勝手なオンナだから・・・家事も育児もきっと適当よ」
「だって、この世で、一番、自分が可愛いんですもの・・・きっとひどい事になるわよね・・・」
と、御島さん。
「そういえば、彼女、料理ひとつ、満足に作れないないんですよね。まあ、あの彼女、頭の中では、自分は王女様で」
「自分以外は、召使くらいに思っているから、誰かの為に料理を作れる自分になる・・・と言う発想は一切ないんですよ」
と、辛辣姫。
「そうか。ぶりっ子って、「わたし、プリンセス病」だったんだ。だから、女性は下に見るし、王子様に色目を使っても」
「許されると考えているし、料理なんてそもそも召使達に作らせればいい・・・ただ、男達に、気に入ってもらえるように」
「自分さえ、カマトトぶれば・・・それでいいって事になるんだ・・・」
と、僕。
「「わたし、プリンセス病」・・・確かにそうね。彼女、「自分が可愛いいから、何をやっても許される」って完全に」
「思い込んでいる様子が、痛々しいモノね・・・」
と、御島さん。
「だから、結局、そういう女性は、結婚したら、結婚したで、家事も育児も何にもしないはずです。だって、自分はプリンセス!って」
「思い込んでいるんですから、家事も育児も掃除もゴミ出しも、召使の仕事でしょう?」
「つまり、そんな「わたし、プリンセス」病の女性と結婚したら、旦那さんは確実に召使扱いに降格するのは」
「目に見えているから・・・男性的には、絶対に将来ふしあわせになりますね」
と、ミユウちゃん。
「だから、「わたし、プリンセス」病の女性は、いつまでも結婚出来ないのか・・・」
「なんか、すげえ、わかった感じ・・・」
と、僕。
「結局、それって、親が娘をそういう風に教育してしまったって事なんじゃないかしら」
「両親って、初めての娘をお姫様扱いしちゃうじゃない。まあ、それも、6,7歳までなら、問題は無いけど」
「大学卒業くらいまで、そういう感じで、教育しちゃったんじゃないのかしら。ま、そういう女性って」
「親離れ子離れすら、出来ていない感じなんじゃ、ないのかしらね」
と、御島さん。
「じゃあ、その女性の妹さんが、有名歌舞伎俳優さんと結婚出来たのも・・・「人の振り見て我が振り直せ」効果で」
「自分を鍛え直す事が出来たからですか?」
と、辛辣姫。
「ま、そういう事じゃない?でも、「わたし、プリンセス」病の女性って、友達いなさそうね・・・」
と、御島さん。
「そう言えば、彼女、よく一人旅するって言ってましたよ」
と、ミユウちゃん。
「・・・なんか、悲しくなってきますね。そういう病になったら・・・ふしあわせスパイラル一直線ですよ・・・」
と、辛辣姫。
「でも、そういう話になると、オバサンの「ぶりっ子」が一番厄介って事になりますね」
「って言うか、その女性、もう、オバサン年齢ですもんね・・・だから、最悪なんだ・・・」
と、池澤くん。
「男性の「俺エライ病」とまた、違ったカタチの不幸な病「わたし、プリンセス病」・・・それって本当に最悪かもしれませんね」
と、貴島くん。
「でも、ぶりっ子って、男と見たら、すぐに媚を売る感じでしょう?それがさらに女性から蛇蝎の如く嫌われる理由になっているのに」
「何故、それに気づけ無いんですかね。あの女性」
と、池澤くん。
「そうなのよね。「わたし、プリンセス病」とは言うけれど、男性と見たら、見境なく媚を売るんだから」
「・・・男狂いの「わたし、プリンセス」病って言い直した方が、いいかもしれないわね」
と、御島さん。
「それ、決定ですね。「ぶりっ子」とは「男狂いの「わたし、プリンセス」病」・・・である」
「それが今回の結論と言う事で・・・」
と、辛辣姫。
「そうか。その病って、男性皆に媚を売るから、人の中身を見抜ける男性には、不人気なんだ」
「結局、ぶりっ子の女性は、男性の中身も見抜けないし、その男性の価値もわからないから、男性皆に媚を売る事になるんだな」
「・・・人生修行がまるで出来ていない、ただの能力の低いオンナ・・・そして、仕事は常に人任せで」
「自分じゃ、やらないオンナ・・・それがぶりっ子の正体なんだね」
と、僕。
「結局、ぶりっ子の女性って、男性をすら、バカにしているのよ。ちょっとばかり可愛いければ、女性の方から媚を売れば男性は簡単になびいてくれるとカン違いしている」
「だいたい・・・そういうなびいてくれる男性って、要は、普段、女性にチヤホヤされた事がない男性くらいなのよね」
「結局、それって「似たもの同士」って事になって、ここでも、やっぱり「類友」の法則が適用されちゃうの」
「まともに仕事も出来ない、中身が無くて、人を見る目が無い、人生、ちゃんと考えた事が無い、皆から相手にされていない、異性をバカにしている女性と男性」
「・・・って、そういう事になるもの」
と、御島さん。
「なるほど・・・となると、さらに、まともな男性は相手にしちゃいけない種類の女性って事になりますね、ぶりっ子の女性って」
と、貴島くん。
「ほんとだね・・・ぶりっ子な女性には、気をつける事にしよう」
と、僕。
「僕もそういう女性・・・見抜けるようにしなくっちゃ」
と、池澤くん。
「やっと、わかってくれたわね・・・」
と、御島さんは、ホッとしたような口調で言った。
「日本では、皆に愛されている女性が、皆に愛されている男性と結婚出来て初めて」
「周囲皆を笑顔に出来るから、自分たちもしあわせになれるの。その原則から見たら・・・女性に嫌われる「ぶりっ子」の女性は」
「・・・それこそ、コミュニティに不幸を呼ぶ女性って事になるんだから」
「男性も女性も、決して近づいてはいけないのよ・・・」
と、御島さんは結論のように言葉にした。
「「ぶりっ子」は、不幸を呼ぶ女神か・・・」
と、僕は言うと、焼き鳥を一口かじった。
(おしまい)