雪は家へ帰ってから、せっせと荷造りに励んだ。
本は重ねて縛り、食器などまとめ、衣類を詰めて‥。いくつも段ボールを梱包する。

チラと携帯を窺ってみるが、蓮からの連絡はない。
今日荷物をまとめると話しておいたのに‥と一人愚痴をこぼすしかなかった。
「はぁ‥引っ越しめんどいな‥。卒業まで居ると思ったのに‥」

そう口に出すものの、部屋を引き払うことに納得してもいた。
まぁ‥お金の問題だからしょうがないか‥。あと町内の事件もあるし‥

そして雪は昨日の夜、塾からの帰り道を先輩に送ってもらった時のことを思い出した。
「なんかいつも送ってもらっちゃってすいません。先輩も忙しいのに‥」

恐縮する雪に、先輩は「ううん」と言ってかぶりを振った。
「とにかく危ないから、明日にでも荷造りをして実家に戻った方がいい。
このままじゃ心配でしょうがないよ」

雪も先輩の意見に頷いた。
「はい、そうしようと思ってます。両親も帰って来いと言ってますし‥」

そして二人は家の前まで来ると、別れの言葉を掛け合った。
「それじゃあ明日の夜また来るから。ゆっくりしときなね」
「蓮がいるから大丈夫です。余裕ありますよ」

‥という会話で昨日は終わったのだが、今の現状を思って雪は紐を歯噛みした。
結局一人でチマチマと荷造りしているじゃないか‥。

ふと、雪はがらんとした部屋を見回して、一人心の中で呟いた。
残念だな‥。大変だったけど、一人暮らしは楽しかった‥

半年間だけだったが、この部屋には随分沢山の思い出が詰まっているような気がした。
ここで暮らした記憶の数々が、脳裏に浮かぶ。


雪はまた心の中に風が吹き込むような、ヒュルリとした寂しさを感じた。
誰かがいなくなるときや、何かを手放す時、雪はいつも心の真ん中に空いた穴を感じる。

しかし感傷に浸ったままではいられない。雪は頭の中でこれからの予定をなぞる。
これから先輩に夕食をご馳走して(引っ越しを手伝ってくれるお礼だ)、そして後で河村氏に引っ越すことを報告して‥。
トントン!

そこまで考えた時、不意に玄関をノックされた。
恐る恐るドアに近づくと、聞き覚えのある声が彼女の名を呼んだ。
「ゆきぃ~!あたしだよー!」「ゆきさーん!」

急いでドアを開けると、そこには聡美と太一が居た。突然の訪問に雪は目を丸くする。
「じゃじゃーん!来ちゃったよーん
」「来ちゃったヨーン
」

聡美の仕草や言動に、いちいち太一が真似をする(笑)
聡美が携帯を持ち雪からのメールを開いてかざすと、太一もそこに聡美の真似をして指をさす。
「今日部屋引き払うってメールもらったから来ちゃったよ!送別会もなしなんてだめでしょー?!」

雪は思いがけない友人の来訪に、思わず顔が綻んだ。
すると二人の隣から、もう一人ひょっこりと顔を出す。
「俺も来ちゃった」「へっ?!先輩?!」

聡美と太一が先輩の方へ掌を向け、彼を紹介する風なアクションだ。どうやら三人は家の前で偶然顔を合わせたらしい。
遅れてごめん、と言って先輩がニッコリと微笑む。

聡美と太一は、雪と先輩が付き合うようになってから初めてじっくりと二人一緒の姿を見た。
太一は先輩の肩に手を置き、聡美はまとわりつくように彼の周りをウロチョロする。
「味趣連新メンバー‥!」

太一の言葉に、「メンバーじゃないから!」と雪がツッコむが、二人は気にせず尚も彼の周りをわちゃわちゃした。
「雪をよろしくお願いしまぁす
」「お願いしまぁす
」
「もう!やめてよ!
」

味趣連独特の雰囲気にも、先輩はニコニコと笑って応えていた。
一緒に引っ越し手伝うの?とそのまま普通に会話している。

聡美&太一と先輩が一緒に居るのを見るのは初めてに近いが、
案外和やかな雰囲気にあるのを見て雪はホッとした。

やがて彼と目が合って、雪はニへッと笑顔を浮かべる。

そして元々そんなことには気づいてもいない聡美と太一は、先輩を囲んで依然として盛り上がっていた。
「そんじゃビールとチキン食べに行きましょ!略してビーチキ!どうよ?!」
「おお!いいっすねビールとチキン!ビーチキビーチキ!!」

もう一緒に御飯を食べに行く気満々の聡美と太一に、先輩は笑顔でこう言った。
「それじゃあ俺が奢るよ」「「イエー!」」

雪は「け‥結局‥」と一人呟く。
結局年長者の先輩がお金を出す流れになってしまった‥。
今日は先輩に夕食をおごるはずだったのに、むしろ彼の負担が大きくなってしまったことに、雪は気まずい思いを抱える。
「レッツゴー!!」

かくして味趣連‥、いや金担当の彼が加わって、味趣連金の4人は街へ繰り出した。
雪は嬉しい気持ちと気まずい気持ちを抱えながら、彼らの後についていった‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<味趣連金>でした。
久しぶりの聡美と太一ですね!やっぱりこの三人が揃うと楽しいです(^^)
新たに加わった先輩を「金担当」にしてしまいました‥
太一、食べるだろうなぁ‥。
次回は<予期せぬ出会い>です。
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本は重ねて縛り、食器などまとめ、衣類を詰めて‥。いくつも段ボールを梱包する。

チラと携帯を窺ってみるが、蓮からの連絡はない。
今日荷物をまとめると話しておいたのに‥と一人愚痴をこぼすしかなかった。
「はぁ‥引っ越しめんどいな‥。卒業まで居ると思ったのに‥」

そう口に出すものの、部屋を引き払うことに納得してもいた。
まぁ‥お金の問題だからしょうがないか‥。あと町内の事件もあるし‥

そして雪は昨日の夜、塾からの帰り道を先輩に送ってもらった時のことを思い出した。
「なんかいつも送ってもらっちゃってすいません。先輩も忙しいのに‥」

恐縮する雪に、先輩は「ううん」と言ってかぶりを振った。
「とにかく危ないから、明日にでも荷造りをして実家に戻った方がいい。
このままじゃ心配でしょうがないよ」

雪も先輩の意見に頷いた。
「はい、そうしようと思ってます。両親も帰って来いと言ってますし‥」

そして二人は家の前まで来ると、別れの言葉を掛け合った。
「それじゃあ明日の夜また来るから。ゆっくりしときなね」
「蓮がいるから大丈夫です。余裕ありますよ」

‥という会話で昨日は終わったのだが、今の現状を思って雪は紐を歯噛みした。
結局一人でチマチマと荷造りしているじゃないか‥。

ふと、雪はがらんとした部屋を見回して、一人心の中で呟いた。
残念だな‥。大変だったけど、一人暮らしは楽しかった‥

半年間だけだったが、この部屋には随分沢山の思い出が詰まっているような気がした。
ここで暮らした記憶の数々が、脳裏に浮かぶ。




雪はまた心の中に風が吹き込むような、ヒュルリとした寂しさを感じた。
誰かがいなくなるときや、何かを手放す時、雪はいつも心の真ん中に空いた穴を感じる。

しかし感傷に浸ったままではいられない。雪は頭の中でこれからの予定をなぞる。
これから先輩に夕食をご馳走して(引っ越しを手伝ってくれるお礼だ)、そして後で河村氏に引っ越すことを報告して‥。
トントン!

そこまで考えた時、不意に玄関をノックされた。
恐る恐るドアに近づくと、聞き覚えのある声が彼女の名を呼んだ。
「ゆきぃ~!あたしだよー!」「ゆきさーん!」

急いでドアを開けると、そこには聡美と太一が居た。突然の訪問に雪は目を丸くする。
「じゃじゃーん!来ちゃったよーん



聡美の仕草や言動に、いちいち太一が真似をする(笑)
聡美が携帯を持ち雪からのメールを開いてかざすと、太一もそこに聡美の真似をして指をさす。
「今日部屋引き払うってメールもらったから来ちゃったよ!送別会もなしなんてだめでしょー?!」

雪は思いがけない友人の来訪に、思わず顔が綻んだ。
すると二人の隣から、もう一人ひょっこりと顔を出す。
「俺も来ちゃった」「へっ?!先輩?!」

聡美と太一が先輩の方へ掌を向け、彼を紹介する風なアクションだ。どうやら三人は家の前で偶然顔を合わせたらしい。
遅れてごめん、と言って先輩がニッコリと微笑む。

聡美と太一は、雪と先輩が付き合うようになってから初めてじっくりと二人一緒の姿を見た。
太一は先輩の肩に手を置き、聡美はまとわりつくように彼の周りをウロチョロする。
「味趣連新メンバー‥!」

太一の言葉に、「メンバーじゃないから!」と雪がツッコむが、二人は気にせず尚も彼の周りをわちゃわちゃした。
「雪をよろしくお願いしまぁす


「もう!やめてよ!


味趣連独特の雰囲気にも、先輩はニコニコと笑って応えていた。
一緒に引っ越し手伝うの?とそのまま普通に会話している。

聡美&太一と先輩が一緒に居るのを見るのは初めてに近いが、
案外和やかな雰囲気にあるのを見て雪はホッとした。

やがて彼と目が合って、雪はニへッと笑顔を浮かべる。

そして元々そんなことには気づいてもいない聡美と太一は、先輩を囲んで依然として盛り上がっていた。
「そんじゃビールとチキン食べに行きましょ!略してビーチキ!どうよ?!」
「おお!いいっすねビールとチキン!ビーチキビーチキ!!」

もう一緒に御飯を食べに行く気満々の聡美と太一に、先輩は笑顔でこう言った。
「それじゃあ俺が奢るよ」「「イエー!」」

雪は「け‥結局‥」と一人呟く。
結局年長者の先輩がお金を出す流れになってしまった‥。
今日は先輩に夕食をおごるはずだったのに、むしろ彼の負担が大きくなってしまったことに、雪は気まずい思いを抱える。
「レッツゴー!!」

かくして味趣連‥、いや金担当の彼が加わって、味趣連金の4人は街へ繰り出した。
雪は嬉しい気持ちと気まずい気持ちを抱えながら、彼らの後についていった‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<味趣連金>でした。
久しぶりの聡美と太一ですね!やっぱりこの三人が揃うと楽しいです(^^)
新たに加わった先輩を「金担当」にしてしまいました‥

次回は<予期せぬ出会い>です。
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今までは解釈の範疇かなーと思って、些細なところはあえて指摘していなかったりもしましたが、
日本語版乗り越えましたし、指摘した方がいいでしょうか?
どうでしょうか?
今日指摘するところは、全体的な流れでどうでもいいところになるわけですが...
とりあえず、この回で、雪ちゃんがほっとしたのは、先輩との約束が変更になったからではないと思いました。
味趣連メンバーは先輩グループ(...)と積極的に親しくなろうとはしない傾向だったので、仲が悪くは無くても実際に接点はありませんでしたね。
以外にも味趣連と先輩が溶け込んでいるようでほっとした。
と思います。
あと、雪ちゃんは夕食らしいちゃんとしたもの提案してません;
夕食がてらいいんじゃね?←という調子でした。
やっぱこのレベルでの指摘はむしろしないほうがいいのでは。。。
OTL
ちょっと私の思い込みが強すぎましたね(^^;)
言いづらかったでしょうに、るるるさんありがとうございました!これからもよろしくお願いしますね~~!
それにしても、「ビーチキ」という言葉につい反応してしまいました。言葉の響きが新鮮で(笑)。
確かに考えてみれば、韓国語版ではこの場面、「チキンとビール」が提案されているのに、日本語版では「チキン」が省略されてビールだけになってました。韓国語では「チキン」と「メクチュ(ビール)」を合わせて「チメク」というんですが、これを訳すとしたらと考えると、悩んでしまいます…。そんな合成語、日本では使わないしなー。
ま、いずれにせよ、韓国に行ったら使いでのある言葉なので、「チメク(チキンとビール)」と「ソメク(焼酎とビールのチャンポン)」くらいは覚えてしまってはいかがでしょう(笑)。
私自身は、味の濃いヤンニョムチキンはあまり得意ではありませんが、衣のない塩焼きチキンなどは好きです。ビールによく合いますね。
http://www.kpedia.jp/w/19
しかしながら食べ物の食べ合わせで略語があるなんて・・・!おもしろいな~韓国語。
日本にこんな言い方するものってありますっけ?
「うざく」みたいなモンでもないですしね。(うざくは料理だし、しかも方言でしたっけ?)
何がいいたいかというと、とにかくめっちゃチキンが食べたくなりました。
不謹慎でしょーか。笑
こーして皆さんの協力により仕上がっていく記事、というのもステキだなーって。
おまけに、あたいら豆知識まで頂戴して。
師匠が元々韓国語が堪能で始めたのではなく、チートラが好きで独学で精進してこられた経緯を知る者としては、
最初から完璧!な記事を望むモノではございませぬ。
私は、師匠の解釈や文が好きなのであって、さらに、投げ出したくなりそうな言葉による障害にも、都度向き合おうとする姿勢、いやはや脱毛です。
本場や原語を知る方達のコメント、ありがたく拝見しております~。良い出会いがあってよかったね、師匠。
いや~全然知りませんでした。青さん、ありがとうございます!
「ビーチキ」どうですか。これから流行らせませんか?(迫真)
「チメク」については明日の記事の後ろに説明を載せていたところでした!
チキンとビール、食べたくなりますね~♪
うざく、私知りませんでした。かにさん‥。
うなぎときゅうりの酢の物なんですね?美味しそうです。
日本語だと何でしょうねぇ。「柿ピー」はまたちょっと違うし‥。うーん‥。
ちょびこ姉様、温かいお言葉ありがとうございます!
どこか心に沁み入る‥(たけくらべ)
日本語版を完全に追い越す日も近くなってきて、誤訳があまりにも目立つようなら日本語版upを待ってから記事を書こうかな、とも思索中で‥。
とりあえず独学でやってみて、あまりにひどかったらまた考えます。^^;
でも私の拙い文章や解釈が好きだと言って頂けて、本気で(本気と書いてマジ)嬉しいです!
出来るとこまで頑張ります!
皆様との出会いに感謝感激秀樹感激!
「蓮を殺しましょ 蓮は私の仇」。有名なコピペです。
とある小学生の書いた張り紙の写真から由来しました。
その内容は↓
「アリを殺しましょ(アリは僕の仇)
僕らは2年間カタツムリを飼ったけど
とある赤アリの奴がカタツムリを殺しました。
アリを殺しましょ。カタツムリはとても善いでした。
カタツムリはまだ死んでないのに
悪い赤アリが噛みました。気をつけてください。
畜○、Son of bXtch、悪い奴」
私もカタツムリ飼い主同士として気持ちは分か・・・りません。
私はペット兼食用としてフランス産の食用種を飼ってますので。
ふふ、韓国ではカタツムリを食べるのは普通・・・
・・・ごめんなさい、嘘です。私がカタツムリを食べるって言うと友達も親戚もびっくりです。
そしてね、私は日本語版の「味趣連(ミシュレンだっけ?)」のネーミングセンスが好きです。
「ミシュランガイド」と発音が似てますから。