「この人、見たことあります?この前方の建物にある英語塾に以前居たんですが」
そう言いながら男はチラシを通行人に見せたが、誰しもが首を横に振って行く。
「あーくそっ!誰も見ちゃいねぇ!」
その男ー河村亮が以前地方にて働いていた時の社長ーは、そう言って地団駄を踏んだ。
そんな社長を後ろで見つめるのは、亮と仲の良かった元同期の男である。男はオドオドと社長に声を掛けた。
「しゃ‥社長‥もうやめましょうよ~探せないですって‥」
「俺の勝手だろ!!」
社長は通行人もビックリする程の声を上げながら、依然として亮探しを諦めない。
もう数ヶ月もこんな感じなのだ。さすがに元同期の男もゲンナリ顔である。
男は社長に近寄ると、彼の説得を試みた。しかし社長は首を縦に振らない。
「社長‥どうしてこんなに亮に執着するんです‥。もう忘れたかと思ったのに‥」
「俺ぁとびきりアイツを可愛がってたんだよっ!」
社長の剣幕に、男はスゴスゴと引き下がった。心の内にその不満を押し込みながら。
それなら金をピン撥ねしなきゃ良かったのに‥
社長はプンスカ怒りながらも、手当たり次第に通行人に声を掛けて行く。
元同期の男は溜息をつきながら、そんな彼を見て心の中でひとりごちた。
つーか亮のヤツ結構な額持ち出しちゃったから、
社長も引くに引けないんだろうなぁ‥。アイツ電話番号も変えちゃったから、連絡も出来ないし‥。
どうする~?どうするよ~?もう俺も知らないよ~?
ここで亮を探すこと数ヶ月、今まで一人も亮のその後を知る人間は居なかった。
男は「この人知ら‥ないでしょ?どうせ」と通行人に言いながら、やる気無く社長に付き合っていた。
「あ、あ、知ってます」
するとそんな矢先、予想だにしない言葉が耳に入って来た。思わず男は声のする方を振り返る。
「知ってるって?」
「はい、はい。前にある英語塾の講師だった‥」
その通行人の言葉に、思わず社長は苛立った。そこまでなら、今まで何人かが口にしたのだ。
「だーから今はその塾にはいねぇだろうがっ!」
「い、今は辞めたっす‥」
通行人のその男は、フードを目深に被った小柄の男だった。
終始オドオドしている彼は、目だけをキョロキョロと動かしている。
「‥‥‥‥」
横山翔は、今のこの状況をじっと窺っていた。
目の前の柄の悪い中年は、どうやらチラシのあの男に、赤山雪の傍に居たあの男に、何かしらの恨みがありそうだ‥。
「この人、A大にちょくちょく出没するんで、そこを探してみたらいいかもっす」
「A大?」 「俺そこでこの人見ました」
社長は横山の口にした情報に顔を顰め、声を荒げた。横山はビクビクと返答する。
「たったそれだけの情報でどうやって探すってんだよ!」
「ひぃっ‥!も、勿論それだけじゃ見つけられません‥」
横山翔は、やつれた顔でニヤリと笑った。
あのヤンキー男に一矢報いることが、今ここから再び出来るかもしれない‥。
「A大に、その男と親しい仲の赤山雪という女が居るんです。
そいつに聞いてみればいいですよ。経営学科です」
横山はそれだけ言うと、「それじゃ」と早口で口にして彼らに背を向けた。
キャップのつばを目深に被りながら、小走りでその場から走り去る。
社長は重々しく頷きながら、元同期の男に声を掛けた。
「ほぉ‥こんな情報が‥。A大だとよ。まさかホラじゃねぇだろうが‥」
元同期の男は、遂に亮のその後を口にする人間が現れ、動揺していた。
そんな男の心情などお構いなしに、社長は彼に向き直り、こう問う。
「あ、その女の名前‥なんといったっけ?」
悪縁を紡ぐ運命の歯車が、カラカラと回り出していた。
今は呑気に船を漕ぐ雪の方へ、その影はゆっくりと近づいて来る‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<探し人>でした。
8話ぶりに出て来た横山‥すっかりやつれちゃって‥。
‥横山久しぶりだなと思いきや、時系列で言うとこの日(イタチ陥落)の翌日なんですよね、これ‥。
もうパラレルワールドです、私‥。
そして社長‥すごい執念ですね。仕事はほったらかしで良いのか??
さてどういう風に物語が動いて行くのでしょうか。来週分がアップされたらきっと来月は休載だし‥。
気になる木‥。
次回は<サングラス越しの瞳>です。
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そう言いながら男はチラシを通行人に見せたが、誰しもが首を横に振って行く。
「あーくそっ!誰も見ちゃいねぇ!」
その男ー河村亮が以前地方にて働いていた時の社長ーは、そう言って地団駄を踏んだ。
そんな社長を後ろで見つめるのは、亮と仲の良かった元同期の男である。男はオドオドと社長に声を掛けた。
「しゃ‥社長‥もうやめましょうよ~探せないですって‥」
「俺の勝手だろ!!」
社長は通行人もビックリする程の声を上げながら、依然として亮探しを諦めない。
もう数ヶ月もこんな感じなのだ。さすがに元同期の男もゲンナリ顔である。
男は社長に近寄ると、彼の説得を試みた。しかし社長は首を縦に振らない。
「社長‥どうしてこんなに亮に執着するんです‥。もう忘れたかと思ったのに‥」
「俺ぁとびきりアイツを可愛がってたんだよっ!」
社長の剣幕に、男はスゴスゴと引き下がった。心の内にその不満を押し込みながら。
それなら金をピン撥ねしなきゃ良かったのに‥
社長はプンスカ怒りながらも、手当たり次第に通行人に声を掛けて行く。
元同期の男は溜息をつきながら、そんな彼を見て心の中でひとりごちた。
つーか亮のヤツ結構な額持ち出しちゃったから、
社長も引くに引けないんだろうなぁ‥。アイツ電話番号も変えちゃったから、連絡も出来ないし‥。
どうする~?どうするよ~?もう俺も知らないよ~?
ここで亮を探すこと数ヶ月、今まで一人も亮のその後を知る人間は居なかった。
男は「この人知ら‥ないでしょ?どうせ」と通行人に言いながら、やる気無く社長に付き合っていた。
「あ、あ、知ってます」
するとそんな矢先、予想だにしない言葉が耳に入って来た。思わず男は声のする方を振り返る。
「知ってるって?」
「はい、はい。前にある英語塾の講師だった‥」
その通行人の言葉に、思わず社長は苛立った。そこまでなら、今まで何人かが口にしたのだ。
「だーから今はその塾にはいねぇだろうがっ!」
「い、今は辞めたっす‥」
通行人のその男は、フードを目深に被った小柄の男だった。
終始オドオドしている彼は、目だけをキョロキョロと動かしている。
「‥‥‥‥」
横山翔は、今のこの状況をじっと窺っていた。
目の前の柄の悪い中年は、どうやらチラシのあの男に、赤山雪の傍に居たあの男に、何かしらの恨みがありそうだ‥。
「この人、A大にちょくちょく出没するんで、そこを探してみたらいいかもっす」
「A大?」 「俺そこでこの人見ました」
社長は横山の口にした情報に顔を顰め、声を荒げた。横山はビクビクと返答する。
「たったそれだけの情報でどうやって探すってんだよ!」
「ひぃっ‥!も、勿論それだけじゃ見つけられません‥」
横山翔は、やつれた顔でニヤリと笑った。
あのヤンキー男に一矢報いることが、今ここから再び出来るかもしれない‥。
「A大に、その男と親しい仲の赤山雪という女が居るんです。
そいつに聞いてみればいいですよ。経営学科です」
横山はそれだけ言うと、「それじゃ」と早口で口にして彼らに背を向けた。
キャップのつばを目深に被りながら、小走りでその場から走り去る。
社長は重々しく頷きながら、元同期の男に声を掛けた。
「ほぉ‥こんな情報が‥。A大だとよ。まさかホラじゃねぇだろうが‥」
元同期の男は、遂に亮のその後を口にする人間が現れ、動揺していた。
そんな男の心情などお構いなしに、社長は彼に向き直り、こう問う。
「あ、その女の名前‥なんといったっけ?」
悪縁を紡ぐ運命の歯車が、カラカラと回り出していた。
今は呑気に船を漕ぐ雪の方へ、その影はゆっくりと近づいて来る‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<探し人>でした。
8話ぶりに出て来た横山‥すっかりやつれちゃって‥。
‥横山久しぶりだなと思いきや、時系列で言うとこの日(イタチ陥落)の翌日なんですよね、これ‥。
もうパラレルワールドです、私‥。
そして社長‥すごい執念ですね。仕事はほったらかしで良いのか??
さてどういう風に物語が動いて行くのでしょうか。来週分がアップされたらきっと来月は休載だし‥。
気になる木‥。
次回は<サングラス越しの瞳>です。
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横山ーーーー!!!!
ほんと出てくると余計なことしかしない!!
いつも翻訳お疲れ様です(^^)
休載あるならまだ先は長そうですね!
来月もやもやして過ごさなきゃです。。
もう1周間は余裕で過ぎてると思ってました…笑
先輩と雪ちゃん、亮さんと雪ちゃん、静香と佐藤先輩…今だ萌菜嬢出てこず。
しかも来月は休載なのですね…ちーん
スンキさん、焦らし上手ですね…
横山、しぶといですよね‥。街を徘徊して何をやっているんだか‥。まだまだ先は長そうですねぇ‥。
>ぽこ田さん
ですよね!?あのやつれ具合、私もまさか翌日とは‥^^;
横山、昨晩一睡も出来なかったってことなんでしょうね‥。
>小春さん
この執念が怖いですよね‥。雪ちゃん刺されるんじゃないかと思って本当心配してます。
>ゆっけ丼さん
社長の攻撃がどのように及ぶのか‥亮を守るために淳を含め皆が協力したなら素敵ですが‥う~ん‥。。
焦らされてますね‥^^;
社長あなた仕事放ってまでしつこ過ぎます
なんかチートラ粘着気質多過ぎません?