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事務補助のバイトの無い週末、雪は高校時代の旧友達とカフェでお茶していた。
萌菜を含む雪達4人は、高校時代の仲良しグループだ。
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久しぶりのガールズトークは途切れること無く続いた。
中でも高校の時クラスメートだった子が、今度結婚するという話題は皆の関心を強く引いた。
「結婚とか遠い話だと思ってたのにね」
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こうして集まればすぐに高校時代に戻ったかのように思える。
あの教室の雰囲気も、昨日のことのように思い出せる。
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しかし確実に年月は過ぎ、彼女らも22歳になった。
結婚する人が出て来てもおかしくはない。
友人達の恋愛模様も様々だ。
高校時代から早熟だった彼女の彼はサラリーマンで、付き合って4ヶ月になるが、仕事が多忙でなかなか会えないと言った。
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付き合って4ヶ月なんて一番ラブラブな時で、夜もお盛んだろうとからかう友人に、萌菜は笑った。
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彼女の隣りに座る友人は、反対にとても保守的だった。
付き合って3年になる彼氏が居るが、まだベッドを共にしたことがなく、結婚するまではする気が無いと言った。
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このメンバーが集まればこういった話になることに、雪は多少閉口していた。
萌菜のようにからかう役回りも担えず、いつも気まずさに口を噤む。
「で、雪はどうなの? 彼氏出来た?」 「え?私はまだ‥」
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毎年同じ質問をされ、毎年同じ答えを答える。
その代わり映えしない返事に、友人達は顔を顰めた。
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「勉強で忙しくて」と言う雪のお決まりのセリフに、バッサリとメスを入れる。
「あんたねぇ、勉強が全てだと思ったら大間違いよ~!今が恋愛真っ盛りの歳じゃないの!」
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たじろぐ雪に、友人は「なにげにあんたは子供みたいなところがある」と指摘した。
「大学三年にもなったんだから、そろそろ危機を感じなさいよね? 勉強と恋愛を両立してる子なんていっぱいいるんだよ?」
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そんな意見にも、雪は賛成しかねた。確かにそういう人も居るだろうけど、人は人、自分は自分だ。
特に雪は状況的にも、恋愛にうつつを抜かしている余裕は無いのだ‥。
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それを受けて、友人は少し話題を変えた。それじゃあ合コンにでも行ってみたら、と。
一度も行ったことがないであろう雪に、恋愛の初歩としての提案をした。
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雪は正直に、この間合コンに行ったことを話した。「相手の男が最悪で‥」と言った途端、
又とないホットガイの顔が思い浮かんだ‥。
そんな雪の答えに、友人は反論した。
「そんな一度や二度で上手くいったら、誰も苦労しないわよ!何回か経験しないと、人を見定めることも出来ないしね。
あたしなんて何十回目でやっとよ!」 「そうよそうよ~」
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囃し立てる友人達の意見に、雪はどうしても同意出来ずにいた。
どう考えても、自分には合わない気がするのだ。
「合コンとかそういう場所で一、二回会っただけで告って付き合うとか‥。
ましてや全く知らない人となんて私には無理‥。ある程度お互いを知って、
その上で情が芽生えてこそ付き合えるような気がする」
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雪は自分の素直な気持ちを述べた。自分なりの恋愛観を。
しかし友人はそれに反論した。雪の考えは、恋愛を始めるまでのハードルが高すぎると。
「付き合いながら情を深めて行くのよ。
付き合った後でだんだんと情が深まって行って、気づいたらもうそれは恋愛になってるの」
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友人はまず「付き合うこと」が大事だと言った。結果は後から付いてくると。
「付き合ってみて合わない部分があれば補うし、それが無理なら別れるの。
互いにうまが合って、愛憎相半ばする気持ちが芽生えれば結婚だって出来るんだし」
友人の理論は、彼女なりの筋が通っていた。
反論出来ない雪を前に、彼女は様々なダメ出しを始めた。
「それに化粧だってちょっとはしなさいよ。髪型にも気遣って、スカートも履いてー」
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雪は余生なお世話だとブチブチ言った。それにコンプレックスの髪型の話は聞きたくない‥。
友人は型の古い雪の携帯電話に目を留め、それを手に取った。
世間には可愛い携帯がわんさとあるというのに、あまりにもそれは古く女子力もゼロだった。
「いい加減携帯も変えなよ。いつの頃のガラクタよ~」
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友人はそのまま画像フォルダを見始めた。
画素の荒い画像に文句を言いつつ、A大学が写っている写真の数々を見ていた時だった。
「ん?」
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ふいに友人の、スクロールする指が止まった。画面には、一つの写真が表示されていた。
それを見た友人達は、目を丸くした。
「誰これ?芸能人?」 「大学で撮影でもあったの?」
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最初雪は彼女らが何を言っているのか分からなかったが、脳裏に一枚の写メが浮かんできた。
あの春の日に青田先輩と撮った、一枚の写真。
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雪は慌てて説明した。「が、学科の先輩だよ、先輩!」
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友人達は青田先輩のイケメンぶりに感嘆している。
卒業写真の撮影の際バッタリ会ったんだという雪の説明に、誰も耳を貸さなかった。
「ただの先輩後輩には見えないよね?」 「雪あんた騙したわね!何も隠すことないじゃない!」
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そう言いながら友人は、萌菜にも写メを見せた。
先輩と雪が仲睦まじく写ったそれを見て、萌菜は意味ありげに「へぇ‥」と言った。
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雪は、萌菜が青田先輩に対して良い感情を持っていないことを思い出した。
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先日電話で青田先輩と仲直りしたと告げた時も、萌菜はなんだかんだ良い反応をしなかったのだ。
「仲直りしたと思ったら、一緒に写真まで撮る仲になったワケ?」
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やはり面白くはないようだ。
雪は言い訳するように苦笑した。春先の卒業写真の撮影の日に、たまたま撮っただけだと言って。
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それに対して萌菜は、説教はしなかった。
ただ、「どのみちあんたの自由だけどさ」と、一歩引いた発言をした。
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「‥‥‥‥」
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雪は手元に戻って来た携帯画面を見た。
あの春の日に撮った一枚の写真は、どんな意義を持ってこれからの運命を揺り動かすのかと。
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<旧友達の集い>でした。
友人二人に名前がついてなくて困りましたー(T T)
そこそこ何度か出てくるのに‥。
この仲良しグループは皆個性的というか、タイプがバラバラというか‥。面白いですね。
そして又斗内がもう一度出てきて私は満足です(笑)
次回は<バンカライズム>です。
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