Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

世渡り下手の反撃

2013-09-18 01:00:00 | 雪3年2部(遠藤に反撃~小さなデート)


家に帰ってからも、雪はぼんやりとしていた。

勉強しようと机に広げたノートにも、なにやら分からないミミズ文字が踊る。



雪はハッと我に返ると、英語塾の復習と単語の勉強をしていたことを思い出した。

再び机に向かうもちっとも進まず、量も多い為やってもやってもキリがない。

加えてまだやるべき勉強が、机の端に山積みにされている。

来学期の勉強も前もってやっとかなきゃなのに‥。

計画が全く思い通りに進まないなぁ




夏休み前は、事務補助のバイトは神バイトだと雪も思っていた。

しかし今の状況を見るとそれはとんだカン違いで、結局毎日課題やなんだと追い詰められ、

心置きなく休む暇もない。

それもこれも、実は原因は一つだけなのだが‥。



雪はその原因がキーキーとヒステリーに「働け!」とムチを振り回している姿を想像してしまった。

けれど考えてもしょうがないと、すぐに再びノートに向き合って、遅くまで勉強を続けた。







翌朝事務室に向かう道中、母親から電話が掛かって来た。

憂鬱そうな口調で切り出した母親の言葉に、雪は度肝を抜かれた。

「お父さん、また出て行ったわ」  「?!」



どういうことかと雪は母親に聞き質した。また、と言われても、そんなことは初めて耳にしたことだった。

すると母親は「取引先が潰れて、もうこれ以上他をあたったって無駄だって言ってるのに

、外回りしてくるって聞かなくて」
と続けた。



雪はてっきり夫婦の危機だと思っていたので、ビックリさせないでよと言いつつ胸を撫で下ろした。

それでも電話先の母親は、憂鬱そうに溜息ばかり吐いていた。

「本当にあんたの父さんは‥頑張り屋さんなんだけどねぇ。

仕事ってのはツイてる時もあれば、そうじゃない時もあるじゃない。」




「時には諦めも肝心だってことが分かんないみたい。もどかしいわ、本当に‥」

雪は唇を噛み締めた。

それは何かを抑えるときの、彼女の癖だった。



父親のことを言っているようで、どこか自分のことを言われているように感じて、

雪の胸中は複雑だった‥。







事務室に着いてからも、心の中は沈んだままだった。

すると遠藤が向こうの席から、「おい」と声を掛けてきた。



雪の机の上には書類が山積していて、それが見えるかと皮肉っぽく尋ねて来た。

雪が肯定すると、遠藤はさらりと酷い事を言った。

「その書類、今日中に全部まとめとけ。急ぎだ」



雪は耳を疑った。

「あの‥でもこれ量的に一日じゃ済まない気が‥」と言う雪の言葉を遮って、

遠藤は苛つきながら言葉を続けた。

「やれと言ったらやるんだよ。エクセルに打ち込めばいいだけだろ?

そんなことも出来ないのか?」




雪は言われたことの理不尽さに顔を顰めた。

しかし言い返すのを諦めて、溜息を吐いて机に向かった。



静かな室内に、雪が叩くキーボードの音が断続的に響く。

やればやるほど、遠藤が言ったことの不合理さを思い知らされる。

これをどう一日で終わらせろって言うの‥



やってもやっても終わらない。

ということは、家に持ち帰って深夜まで作業して、明日持ってくるしか方法は無い。



雪の脳裏に、河村亮の言葉が浮かんで来た。

これからどう生きて行くかは、お前次第だ



マウスを握る手が止まる。

耳の奥で、亮の声がする。

お前、そんな生き方じゃ一生苦労して損ばっか見て生きることになるぞ



普段ならそのまま進む道を、亮の言葉がそれにストップをかけた。

雪は踵を返した。その先に、遠藤が居た。





雪は遠藤の名を呼び、彼の前に立ちはだかった。

眉をひそめながらそれを窺う遠藤に向かって、雪は堂々と口を開いた。

「申し訳ありませんが、一日で終わらせるのは到底無理です」



遠藤はやにわに切り出された雪の反論にたじろいだ。しかし雪はそれに構わず言葉を続けた。

「他の方から頼まれた仕事もまだ残ってますし、

それにあの書類の量はどう考えても今日中に終わらせるのは不可能です」




それを聞いて、遠藤は逆上した。

「お前俺に盾突こうってのか?急ぎだって言ったろ?口が過ぎるぞ!」



遠藤は声を荒らげたが、雪はそれに怯まなかった。

本当に急ぎならば、業務分担する方法もあると論理的に言い返す。



そんな冷静な雪に、遠藤はついにキレた。「てめぇ!」と大声を出した遠藤の元に、事務員さんの一人、品川さんが駆け寄った。

「どうしたっていうの~? 何があったの?ケンカはよくないよ~~」



雪はエクセルファイルの件でちょっと、と弁解した。

すると品川さんは遠藤を前に、「それって来週締め切りの書類のこと?」と屈託なく言った。

遠藤の顔が歪む。



ニコニコとそれがどうかしたのかと品川さんが聞くと、遠藤はモゴモゴと口を開いた。

「‥確かに締め切りは来週かもしれないけど‥は、早ければ早いほど良いに越したことはないからな‥」



遠藤は品川さんに、そろそろ席に着いてはどうかと着席を促した。

しかし彼女は「そうそう!」と思いついたように言うと、雪に向かってこう言った。

「その書類、7,8,9番のファイルはやらなくていいからね~?」



以前保存しておいたものがあるから、と品川さんは言った。

良かったらファイルを送ろうかと提案する彼女に、雪はニコニコとお礼を言う。



遠藤は品川さんに対して、コソコソと黙れというテレパスを送ったが、彼女がそれに気づくことは無かった。

代わりにそれを見ていた雪が、仁王立ちしながら無言の圧力を送った。



去り際に、雪は遠藤に向かって口を開いた。出来るだけ早く終わらせれるように努力します、と。

しかし皮肉も忘れなかった。

「今日中には無理ですけどね」



そのままスタスタと席に戻る雪に、遠藤は声にならない叫びを上げながら地団駄を踏んだ。



雪はそんな遠藤を見ながら、遂に明らかに嫌がらせをして来た彼を訝しく思った。

明らかにわざとだ、あれ。‥なんなの一体‥?



そんな中、一通のメールが届いた。

開封してみると、河村亮からのメールだった。

今日塾の日だろ?ちょっくら早めに来て、幼稚部の501号室まで来るように。河村亮



突然の言いつけに困惑する雪だったが、その日は普段より早い時間に、塾の入り口をくぐったのだった。


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<世渡り下手の反撃>でした。

雪の、なぜか損する星回りはお父さんからの遺伝もあるのでしょうか‥。

そういう状況を打破するキッカケを河村さんが作ってくれる、という構図がいいですね。

多少方法は荒いですが、問題に真正面から向き合う彼の生き方は、雪には目からウロコかもしれないですね。

次回は<ちらつく過去>です。

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