Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

水面下の人々

2013-09-09 01:00:00 | 雪3年2部(グルワ発表~知れば知るほど)
「あと二科目。そんな難しい科目じゃないし、良い点数取れると思う」  

「けどそれでもDもらったんなら、奨学金は厳しいんじゃないの?」

  

雪は家に帰ってから、実家の母親と今回の期末考査について電話で話していた。

グループワークD評価の話は避ける事が出来ず、雪は正直に話した。全額奨学金は、来季は無理かもしれないと。



電話の後ろで、父親の気配がする。新聞でも読んでいるのだろうか。

母親は、様子を見て一人暮らしもやめてもらわないと、と言った。

しかし思っていたよりもその口調は柔らかく、家賃や生活費の一部を、その分学費に足してくれるとまで言ってくれた。

そして学費の残りは、雪が夏休みにアルバイトをして工面するということで話は落ち着いた。



電話の向こう側で、父親が立ち上がる気配がした。

「ったく、上手くやれってんだ!」



雪の脳裏に、顔を顰めた父親の姿が浮かんだ。

音を立てて歩く父の足音が、だんだんと小さくなっていくのが分かった。



結局、部屋を引き払うのは夏休み終了前までという約束で話は落ち着いた。

まだ3ヶ月も先の話だ。雪は電話を切った後、安堵の溜息を漏らした。

言ってみるもんだな‥。とにかくどうにかなりそうだ‥。



雪は部屋を見回してみた。



いつもは何となしに暮らしている部屋であるが、あと数カ月後に引き払うと思うと、なんとなく寂しい感じがした‥。






その頃赤山家では、雪の両親が先ほどのことで言い争っていた。

一番辛い思いをしているのは雪なのに、なぜあんなことを言うのかと母親が詰め寄る。

「状況が苦しいのは事実だろう!ったく使えないヤツだ!」



その言葉を受けて、妻は夫の甲斐性を責め始めた。

自ら事業を興した夫だが、近年の仕事は上手く行っておらず、事務所を借りたりなんだりと借金が積み重なって行く。

認めたくはないが、的を得た妻からの小言に彼は顔を顰めた。



「やっぱり私の言った通りにしましょうよ。一緒に店でも一軒‥」  「またその話か!」



妻から何度となく打診されたその話は、飲食店で長年働いた妻が自分の店を持ちたいというものだった。

雪の父親は店一軒建てたところでどうにかなるわけがない、と取り合わなかった。

ふてぶてしくテレビの前に座ると、そのままニュースを見始めた。



雪の母親はその背中を黙って見つめていた。目にはありありと不満の色が、色濃く映し出されていた。












同じ頃、河村亮の下宿では彼が持って帰ってきた食料を、皆に配っているところだった。

また女に買わせたのかと訝しがる小太り君に、亮は「いや今日は社長からの餞別なんだよ」とまた職を変えたことを明らかにした。



恩に着ろよと偉そうな亮に、下宿の男たちは皆苦い顔をしたが、思い思いに食料を取った。

亮はそんな彼らを見ながら、当分こういった差し入れをすることは無いと言った。



今まで就いてきたスーパーやレストランの仕事とは、一風変わった職を見つけたのだ。

それを受けて、下宿の皆は亮にダメ出しをし始めた。

「ちょっとフラフラしすぎじゃね?」 「そろそろどっか落ち着いたら?」 「年も年なんだしさぁ」



グサグサと刺さる真っ当なアドバイスに、亮はタジタジしながら「うっせ!」と言った。

そんな中、小太り君が「そもそもなんで上京して来たんだん?」と聞いてきた。



亮はあっけらかんと、その眉をひそめながら答える。

「同じ所にどうしたら1年以上居られるってんだよ!ここだって飽きたら出てくつもりだっつーの」



亮は元々どこにも定着しない気なんだと言った。ここへだって、淳と静香の消息を確かめるために寄っただけなのだ。

「オレがここを離れる前に、お前らも魔の生活から抜け出せよな~」



上から目線の亮の言葉に、小太り君は青筋を立てた。

その後下宿では亮を交えて、皆で食料を囲みながら賑やかに夜は更けていった。














全体の試験日程も後半戦に突入し、雪は最後のテストが終わったところだった。

終了のチャイムが鳴り、試験用紙が後ろから集められる。



出来栄えは上々だった。これで厳しかった期末考査も終わり‥。

雪は安堵の溜息を吐いた。




やっと終わった‥と独りごちる雪の横を、学生達がウワサ話をしながら通り過ぎていく。



少し聞こえたのは、最近遠藤助手のヒステリーが酷いというものだった。学生の一人は先ほど目をつけられたと言って顔を顰めていた。

雪は特に気に留めず廊下を歩いていると、隣の教室からも人が大勢出て来た。テストが終わったらしい。



青田先輩が昨日、雪の隣の教室でテストを受けるという話をしていたので、なんとなく足を止めて人の流れを見ていた。

すると人々の中から青田先輩と目が合ったので、雪は会釈を返した。

「テストどうだった?」



教室から出て来た先輩がそう聞いて来たので、雪は「お陰様で良い点数が取れそうです」とお礼を言った。

ひょっとして間違ったことを教えたんじゃないかと心配していたと言う先輩に、雪は何度もかぶりを振った。

「テストは全部終わりました?」 「いや、一つだけ残ってる」 「あ、そうなんですね」



二人は並んで歩いた。小さく笑う雪に、先輩は優しく微笑んだ。

  




ふいに先輩が、雪に夏休みは忙しいのかと聞いて来た。



予想外の質問に雪は最初目を丸くしたが、学費やアルバイトのことを思い出して下を向いた。

すると先輩は、雪にある話を持ちかけた。

「雪ちゃん、アルバイトする気ない?」 「はい?!」



頭の中を読まれたかのようなタイミングに、雪は目を見開いた。

先輩の話とはこうである。



経営学科の事務所で、今年の夏休みに事務補助員のアルバイトの募集をかけるらしく、

先輩は知り合いで出来そうな人がいたら紹介してくれと言われていると言う。

そう言われてまず雪の顔が浮かんだという先輩は、この話を一番初めに雪にしたんだと言った。

「遠藤さんもいるし仕事量的にはそんな苦じゃないと思うよ。暇々に勉強も出来るだろうし、

5時には終わるから塾にも支障が無いだろうし」




先輩は「やってみる?」と雪に聞いた。

雪は即答した。



意欲に燃える雪に先輩は微笑むと、

「事前に俺が話しておくから、明日でも事務所に行ってみるといいよ」と言った。



そしてそのまま、テストがあるからと言って行ってしまった。

雪は慌ててお礼を言おうとしたが、



その後姿は既に数人の学生達に囲まれていた。






雪は改めて、先輩から持ちかけられた話の条件の良さに感動していた。

い、いい話をもらったぞ? バイト探しに時間ロスしなくて済んで良かったぁ!

肉体労働よりは断然マシだろうし、塾もすぐそこだし!




雪のイメージでは、青田先輩の撒くおこぼれをちょうだいするイメージだった。

それでも、こんな条件の良いバイトはなかなか無い。雪は素直に喜んだ。


すると携帯が鳴り、開いてみると太一からメールが届いていた。

テスト終了記念パーティーをします。僕のおごりで高いとこ行くんで、来なくちゃ損損


雪はそのメールを見て正直驚いた。太一がおごってくれるなんて、雪でも降るんじゃないかという珍しさだ。



しかし直後に、聡美のことが頭を掠めて雪は微妙な気分になった。

気まずいままの関係も、このままにしておくわけにはいかない‥。



雪はどうなるのか予測もつかないまま、指定されたレストランへと足を運んだ。

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<水面下の人々>でした。

先輩の情報通っぷりにビックリですね。アルバイトなんてしたことないだろうに‥。

個人的にはおこぼれを撒く先輩のカットがすごく好きです‥。

ほ~れ ほ~れ



次回は<友情の仲介>です。


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