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Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

暴行

2014-04-18 01:00:00 | 雪3年3部(太一への陰謀~甘い記憶)
河村静香は先ほど道行く女学生に教えてもらった、”青田淳の彼女”を追いかけた。

そして先回りして待ち伏せすると、その女が通りがかるその時をじっと待っていたのだった。



自分を待ち伏せている人物が居るなど知る由もない香織は、勝利感に酔いしれたままニヤついていた。

そして静香は彼女が自分の前を横切る瞬間、その長い足をサッと前に出したのだ。



香織は案の定それに引っかかり、思い切り無様にコケてしまった。

ズベッと鈍臭い音が辺りに響く。

「キャッ!」



突然のことで何が起こったのか分からない様子の香織の背後から、静香はわざとらしい大仰なトーンで声を掛ける。

「あらあらあら~!ごめんなさいねぇ!ど~しましょ~?!」



人が居るなんて知らなかったから、と言いながら静香は香織の髪を思い切り掴むと、そのまま上に引き上げた。

「ほら起きて起きて~!あらあらあら!」 「きゃああああああ!」



そのあまりの力の強さに、香織は顔面蒼白で叫び続けた。

静香は掴んだ手を少し後方に下げ、香織の顔が見えるような角度で倒す。



痛みに歪む香織の顔を見て、静香は顔を顰めた。久しぶりに出来たという”淳の彼女”がこの程度だとは‥。

静香は一度手を離すと、今度は彼女のリュックに手を掛けた。

「あら~ごめんね~服を掴もうと思ったら手が滑ってぇ~」



リュックを持った手を引き上げると、その勢いのまま思い切り引き倒した。

「あらぁ~手が~!まーた滑ったわぁ~!!」



ドサッ、と香織は為す術もなく崩れ落ちた。

静香は口では親切な言葉を紡ぎながら、尚も香織の襟首を掴んで引き上げる。

「ごめんなさいねぇ。あら~服に埃が沢山ついてるわよ?あたしが取ってあげる!」



静香はそう言って、香織を前後左右にブンブン揺さぶった。

「あららぁ~?何でこんなに取れないのかしらぁ~?」



まるで振り子のように振り回された香織は、くらりと目眩を起こした。

静香はようやく彼女から手を放すと、心配するフリをしてほくそ笑む。

「あらぁ?目眩かしらぁ~?」



グラグラ揺れる目の前に、香織は思わずえずく。

そしてようやく目眩がおさまると、香織は猛然と抗議を始めた。

「な、なんでこんなこと‥!止めて下さい!」



しかし静香はどこかしらばっくれた様子で小首を傾げる。

そして震える香織に、静香は凄むようにして身を屈めて囁いた。

「助けを求めたいでしょうけど、周りに人っ子一人いないわねぇ?

用が済んだらあたしはバックレるけどね?」




ヒットエンドランよ、と静香は不吉なことを口にする。

香織の顔はみるみる青ざめ、動揺のあまり声を上げた。

「んななな‥何でこんな‥!」



「あらっ?気分が悪くなっちゃったかしら?」青ざめた香織を見て、静香はそう声を掛けた。

そして彼女の首に後ろから手を掛けると、そのまますごい勢いで木に突進する。

「あそこで暫く休むといいわ!」 「ぎゃああああああ!」



このままでは衝突する‥!香織は咄嗟に目を閉じた。

するとぶつかる寸前のところで、静香は香織の首に前から手を掛け、押し止めた。



そしてそのまま香織を木に打ち付け、彼女の顔のすぐ横に静香の手がバンッと置かれる。

香織は恐ろしさのあまり絶叫した。

 

そして静香は話の本題を切り出した。

香織にとってはわけの分からない内容の。

「あんたが淳の彼女だって?」



目を白黒させている香織は、当然何も口に出来ない。

静香は威圧的な体勢のまま話を続けた。

「あんたが淳と付き合って‥」 「ひぃ~!」



香織は泣きながら静香の懐から抜け出すが、恐怖で足が思うように動かない。

案の定香織はすぐに捕まり、再び静香は彼女を責める。

「どこへ行こうっての?今話をしてるんだろうが!聞けよ!あぁ?!」



その迫力に香織は身が竦む思いがしたが、必死に両者の間にある誤解を口にした。

「違うんですって!私は”赤山雪”じゃありません!

私じゃなくてあの子と話して下さい!殴るならあの子を殴って下さいよ!」




静香は、香織が口にした”殴る”に反応し、香織の手首をグッと掴んだ。

「は?誰が殴ったって?人をチンピラ扱いして、何バカなことほざいてんの?」



静香の握力は凄まじいものがあった。香織は自分の手が痺れていくのを感じながら、再び絶叫する。

その叫びも構わずに、あんたは忘れてるかもしれないけど、と静香は低い声で前置きをして話を続けた。

「赤川だろうと赤貝だろうと、あんたがこのまま淳とラブラブしたくても、世の中にタダはないの。

あんたはあたしのことを含めて、払うもんは払ってもらわないとね?」




あんたの”借金”、取り立ててやる。

静香はこう言った。

静香は間接的にせよ自分が落ちぶれた原因となった彼女に、宣戦布告したのだー‥。


「おいっ!」



すると次の瞬間、顔を隠した大男に静香は持ち上げられた。

比較的背の高い静香だが、その男は更に大きい。男は静香に向かって声を荒げた。

「気ぃ狂ったかっ?!」



静香は自分を抱え上げた主を見て顔面蒼白した。ここに居るはずのない弟・河村亮だったのだ。

亮はそのまま静香を肩に担ぎ上げると、猛ダッシュでその場を後にした。



静香は抱えられた姿勢のまま、香織にとあるジェスチャーでメッセージを送った。

あたしはいつでもお前を見ているぞ、と。



とんでもない嵐が来て、そして去って行った‥。

全身の力が抜けた香織は、そのままその場で崩れ落ちる。



人生には予測できないことがある。

それは誰の身にも起こりうることであり、いつだって予測不可能にやってくるものなのだ‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<暴行>でした。

し、静香さん‥。握力相当強そうですね‥前も雪の手首に痣残してましたし‥。

香織も災難でしたね。でもあまり同情できないのは何でだろう‥(苦笑)

しかし淳の彼女だからと突然暴行‥やっぱり静香ぶっ飛んでますよね。

静香が口にする台詞にしても、下のような思考回路なのでしょう。

淳=青田家が自分を支援するのは当然→支援しなくなったのは淳に彼女が出来たからだ→

だから淳の彼女も自分を支援しなくちゃいけない→

「あんたはあたしのことを含めて、払うもんは払ってもらわないとね?」



ということかと‥。ぶっ飛びすぎてる‥^^;


次回は<恨みの矛先>です。


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河村姉弟現る

2014-04-17 01:00:00 | 雪3年3部(太一への陰謀~甘い記憶)
雪と香織が廊下で騒動を繰り広げたほとぼりがまだ冷めぬ頃、その人はA大の構内に居た。

広いキャンパス内をあてもなく歩いていた彼女は、やがて構内を歩く二人の女学生に声を掛ける。

「こんにちは?」



二人の女学生は幾分驚いた。声を掛けてきた女性は背が高くスタイル良く、どう見ても女優かモデルだ。

サングラスをしていてその顔の全貌は分からないが、相当の美人に違いない。

「ちょっと聞きたいことがあるんだけど‥」



そう口にする彼女‥河村静香の言葉に、女学生達は足を止めた。

「ここの大学の経営学科に、青田淳っているでしょ?」



静香からの質問に、女学生二人は頷いた。幸い彼女達は淳を知っているようだ。

そこで静香は、今青田淳はどこにいるのか、と続けて尋ねた。すると彼女達は首を傾げる。

「それが‥四年の先輩達のことはよく分かんなくて‥」 

「インターンかな?」
 「授業かな?」



彼女達は暫く思案していたが、不意に二人の内の一人がとある人物を見つけて指を差した。

「あっあれ!あの人!あそこを歩いてる三年の赤山雪という先輩に聞いてみて下さい!」



誰だって? と静香は尋ねた。すると女学生は、前方を歩く女性をもう一度指差す。

「あの変わったズボンを履いている先輩です」



その子は確かに変わったズボンを履いていた。一度目にしたらその印象を焼き付けてしまうような。

そして女学生は更にその子についての情報を、静香に向かって口にする。

「あの先輩が、青田先輩の彼女さんなんです!」



静香はその思いもよらない情報に幾分驚き、軽くサングラスを下げた。

「彼女‥? へ~ぇ‥」



あの先輩に聞いてみて下さい、と女学生はもう一度口にすると、静香は頷いた。

「ハイハイ、分かったからあんた達はもう行きな」



もう用無しと言わんばかりにシッシッと手を振る静香に、女学生達は呆れながら去って行く。

静香は”淳の彼女”の後ろ姿を見ながら、一人呟いた。

「彼女ねぇ‥。暫く居なかったのに、一体いつの間に‥。

てか淳の野郎‥私がこんなザマでいるってのに、自分はちゃっかり彼女作って遊んでたってこと?」




静香の中に居る癇癪の虫が、そのプライドを刺激されて騒ぎ始める。

静香は去って行く”淳の彼女”を、その長い足で追いかけて行った。




「フフフフ‥」



そして淳の彼女‥ではなく清水香織は、一人笑い声を漏らしながら大学の構内を歩いていた。

香織は両手でリュックの持ち手を掴みながら、満足感や達成感に身を委ねていた。

やっぱり‥私が勝った!横山君の言う通りにしたから‥



そして香織の脳裏に浮かんでくるのは、先日横山翔に呼び止められた時のことだった。

横山は香織が雪の真似をしている事実について、彼なりのアドバイスをしたのだ。

「いや~別に君が間違ってるって言いたいんじゃなくてさぁ、

人は誰でも誰かを参考にして生きてるもんじゃない?皆そうやって成長していくんだと俺は思うけどね~」




そして横山は、万が一そのことで赤山が何か言ってくるようならば、

それは赤山が幼稚なのであり、香織に非があるわけではないと言った。

「君なら十分に言い返せるって。そうだろ?」



そう言って笑顔を浮かべる横山を前にして、香織は自信無さげな表情で俯いた。

「まぁ‥でも服装に特許出したわけじゃないし‥。そ、それに雪ちゃんは弁が立つし、

平井さんとも渡り合うくらい‥。私は‥ノロマだし‥頭の回転も遅くて‥」




そんな弱気な香織に、横山は事も無げにその改善点を口にした。

「そういうとこが変わればいいってことだよね?言葉よりまず行動!だよ」



横山は、言葉が出ないなら行動を起こせばいいと言った。

それがどんな行動かを、横山は笑顔で口にする。

「ああだこうだ言われたって、先に泣いたらそれで終わりなんだから」








そして香織は、先ほどの際それを実行したというわけだ。

ニヤニヤ笑いが止まらない。

今まで私が成し得なかったことを、横山君が解決してくれた‥



脳裏には、号泣する自分を見て虚を突かれた表情を浮かべる雪が思い浮かんだ。

あんないい人を嫌ってる雪ちゃんって変な子‥。

本当‥大したことないじゃない




いつも自分の目標としていた指標が、いつの間にか自分の下に成り下がっていたような、

そんな優越感を香織は感じていた。口元に笑みをたたえながら、彼女は自分自身への自信を一人噛みしめる。

私は、十分雪ちゃんに勝てる‥!



しかしそんな香織の優越感も、そこで佇む彼女と出会うことで終わりを告げることになる。

この先にはとんでもない災難が、香織を待ち受けている‥。






同じ頃、ここはA大音楽学部の校舎。

ピアノ科教授・志村明秀は、授業が終わり学生達に別れの挨拶を告げられているところだった。



携帯を取り出し画面を見る。

気になっている”彼”からの着信は無い。ふぅむ、と志村は息を吐いた。



志村が教員室へ続く廊下を歩いていると、そんな彼を待ち受ける人物の姿があった。

目立たぬよう目深にキャップを被った上にフードまで被せていた彼だが、その異風な出で立ちに皆が視線を留めていく。



志村は彼を認めると、おお、と声を掛けた。

ずっと待っていた相手だった。



志村が目にしたのは、河村亮だった。

亮はポケットから名刺を取り出すと、彼に見えるよう高く掲げた。



志村は亮に近づくと、連絡を待っていたと言って微笑んだ。

亮は少し決まり悪そうに、頭を掻いてここに来た理由を口にをする。

「い、いやただ‥そちらさんが超オレに来て欲しいみてぇだから‥」



亮はそう言うと、腕組みをしてふんぞり返った。

「まぁその、あれだ!一度話を伺いましょう!」



相変わらずの無礼な態度、尊大な振る舞い。

志村は高校時代と変わっていない亮を前にして、一つ息を吐く。



けれど心は踊っていた。

錆びついた宝石は、一体どこまで輝くことが出来るだろう?

志村は密かな胸の高鳴りを感じ、柔らかく微笑んだ‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<河村姉弟現る>でした。

ということで、<太一への陰謀>にしろ<雪への陰謀>にしろ、そこをコントロールしていたのは横山だったのでした。

そして散々読者をイライラさせてきた香織ちゃんは、次回とんでもない目に合うことになります。

本家のコメ欄が「静香マンセー!」になった回、

<暴行>です。



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雪への陰謀(2)

2014-04-16 01:00:00 | 雪3年3部(太一への陰謀~甘い記憶)
はぁ、と雪は深く溜息を吐いた。

ライオン人形について、清水香織が目に見えて嘘を吐いているからだった。



雪は香織が自分のライオン人形を盗んだことを知っていた。

事を荒立てたくはない、けれどどう考えても香織の行動は許されるものではない‥。

雪は憂うように息を吐くと、香織に向かって説くように言葉を続ける。

「服装が似てるってことについては私の気持ちの問題だけど、

私が失くした物をあんたが持ってるってことは、さすがに問題なんじゃない?

あんたが私のあの人形見て、可愛いって言ってたのほんの数日前じゃない」




あの時の香織の反応を、今も雪は覚えている。

どう見ても、ライオン人形を初めて見たリアクションだった‥。

これカワイ~!どこで買ったの?

 

もう真実はハッキリしている。だからこそ雪は感情任せではなく冷静にその事実を香織に確認しているのだが、

そんな雪の気持ちに反して彼女は感情的に尚も文句を言ってくる。

「あ、あんた‥!しょ、証拠でもあんの?!よくも平気な顔してそんな話が出来るよね?!」



しかも声を荒げるものだから、廊下を行き交う人々はチラチラと二人を見てはコソコソと何か噂をして行くのだ。

雪は気になりながらも、しょうがないので遂に切り札を出すことにした。

「それどこで買ったって?」

「あんたが買ったのと同じ、大学の近くのKマートよ!」



叩き返すような香織の反応に、雪は冷静に切り札を突きつける。

「それ、随分前に生産中止になったんだって聞いた。店員さんに直接ね」



突きつけられた真実を前に、香織はあんぐりと口を開けたまま、冷や汗をダラダラと流した。

そんな彼女に「どういうことか」と冷静に聞く雪と、感情のままに詰め寄る聡美。



しかしそれでも尚、香織は何か言い訳しようと「あ‥いや私は‥」と言葉を濁した。

雪はそんな香織に、「それじゃあ明日持って来て見せてもらえる?」と畳み掛ける。



チェックメイトだ。

どう考えてもこれ以上の言い逃れは厳しい。

青くなった香織の顔に、冷や汗が幾粒も窺えた。



雪は真っ直ぐに、香織のことを見つめていた。

切れ長の大きな目が、その真実を見透かすように厳しく光っている。



香織は瞬きもせずに雪の瞳をじっと見ていた。

グラグラと瞳が揺れていた。



雪はその時が来るのをじっと待っていた。彼女に厳しい視線を送りながら。

もう止めて。ここで謝るなら私も‥



今謝ってくれるなら、これ以上は責めるつもりはないと雪は思っていた。

香織の口から謝罪の言葉を聞ける時を、雪は待っているのだ。



沈黙した二人の周りを、皆ヒソヒソと噂をしながら横切っていく。


そして次の瞬間、そこに居る誰もが度肝を抜かれる出来事が起こった。


「う‥うわあああああああーーん!!」



なんと、香織が顔を押さえて号泣し始めたのだ。

当然雪も聡美もわけが分からない。二人はしゃがみ込んだ香織を見て目を剥いた。



そして香織はそのまま大音量で泣き続けた。

雪と聡美はその状況に戸惑ったまま、何も出来ずに立ち尽くす。



先ほどまでは通り過ぎていた周りの人達も、今やギャラリーとなって三人の周りを取り囲んでいた。

そしてそんな騒ぎを聞きつけて、直美がバタバタと走りながらこちらに向かって来た。

「何があったの?どうしたの?!」



直美は香織に手を差し伸べ何があったのかと聞き続けたが、

香織は何も言わずに泣きじゃくったままだ。

雪は呆然としながらその光景を見ていた。何もかもが予想外だ‥。



やがて香織は、何があったのかしゃくり上げながら直美に話し始めた。

「ゆ‥雪ちゃんが‥ひっ‥ひっ‥雪ちゃんが‥。私が服装を真似て‥人形も盗んだって‥。

ひどいよ‥私は何も悪くないのに‥何で泥棒扱いされるのぉ‥ひっ‥ひっ」




香織の言葉に、雪は開いた口が塞がらない。聡美は香織に向かって人差し指を差すと、彼女を罵倒した。

「うっうわ~~!マジで言ってんの?!笑わせんな!」



そんなとんでもない状況に囲まれて、直美は厳しい視線を雪に投げかけると口を開いた。

「それ本当なの?雪ちゃん‥ちょっとひどいんじゃない?同じ学科の同期同士で‥」



泣いている香織の背を擦りながらそう言う直美に、雪は否定の言葉を口に出そうとするが、

その前に聡美が声を上げた。

「違うし!それじゃあ同期同士なら物を盗んでも構わないっての?!」



すると香織は顔を上げ、震える声で聡美に噛み付いた。

「しょしょしょしょ、証拠はあるの?!」



そしてその言葉に、とうとう聡美がキレた。

聡美は香織の手を掴むと、無理やり立たせようとして引っ張った。

「立ちなさいよっ!じゃあ一緒にKマート行こうじゃないの!

行って直接店員に聞いてやる!」




そんな聡美を直美が止めに入り、ギャラリーを含むその場は騒然とした。

直美は何とか香織をなだめて立たせると、彼女と共に雪と聡美から背を向ける。

「とにかく!大したことじゃないんだから、お互い誤解があるなら早く解きなよね」



直美は香織の背を擦りながら、二人の元から去って行った。

未だ状況が把握しきれない雪と聡美は、呆然としたままその場に取り残される。



そしてそんな二人を見ながらの、ギャラリー達のヒソヒソ話が聞こえて来た。

なんか良く分かんないけど、あの子が何か盗んだって? 潔白なら一緒に店に行くだろうけど‥



えっマジでズボンのことで喧嘩したん?超イミフなんだけど あーうるせー。つまんねーことで喧嘩すんなよ

一部始終を見ていたキノコ頭の後輩達は、ニヤニヤと笑いながら雪について噂した。

「てか思ったより赤山先輩ってコワイねー」

「青田先輩と付き合って変わったんじゃないのぉ?喧嘩とかガキくさー」



蔑み、嘲笑、見下し、侮蔑。様々な感情が雪と聡美の周りに蔓延していた。

人々は去って行く香織の後ろ姿にも、様々な噂を口にする。



香織が雪の服装を真似していたことについて、同期達はうすうす感づいていたようだ。

けれどそれが罪になるかと言ったら、特許があるわけでもないそれを問い正すのは難しいんじゃないかという意見が囁かれる。

「てかあの子の目元、ちょっと雪ちゃんぽいよね」

「プッ やめなよー」



女子達は、香織の整形疑惑について口にして笑うと、その場を後にした。

取り残され立ち尽くす雪に、聡美が憤慨の声を上げる。

雪は一人瞳を閉じながら、こんな状況に陥ってしまったことを悔いた。

何でこんな風に状況がふりだしに戻って‥。まさかこんな手に出てくるなんて‥!



雪は予想外の展開にただただ驚き、後悔し、そして苛立っていた。

髪の毛をくしゃくしゃにして、歯を食いしばる。



それはストレスを受けた時の彼女の癖だ。

雪はそのままその場を後にしたが、心の中を覆っていく黒い影からは、逃げられそうにも無かった‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<雪への陰謀(2)>でした。

香織さん‥整形するときに雪っぽくしたんでしょうか‥こ、コワイ‥^^;

さて香織がこんな風な行動をしたのは、とある人物が指導した結果だったのです。

ですので題名も<雪への陰謀>となっています。


次回はそれが誰の陰謀だったかも書きつつの、<河村姉弟現る>です。


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雪への陰謀(1)

2014-04-15 01:00:00 | 雪3年3部(太一への陰謀~甘い記憶)
(*時系列としては、<太一への陰謀>と<雪への陰謀>は同時に起こった出来事となります。

この記事の冒頭部分では、まだ太一と横山の騒動は起こっておりません。あしからず‥)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あのキスから一夜明け、雪は大学の構内を聡美と共に歩いていた。

聡美は最近めっきり連絡の取りづらくなった太一について愚痴をこぼしている。

「ようやくネトゲから脱却したと思ったら、今度はスマホのゲームにハマりやがって‥!」



やはりオタク気質な太一‥。聡美はハマる先が違うだけで状況が変わらないことに腹を立てていた。

いつかしばいたる、と息巻く聡美を見て、雪はクックと可笑しそうに笑う。



すると前から歩いて来た彼女を見て、

雪は自分の目を疑った。



清水香織だった。なんと、あのズボンと同じようなデザインのものを履いていた。

彼女はあの日の雪のスタイルを、完全に真似していたのだ。

 



目を見開いたまま、雪は何も口に出来なかった。

雪の後方で、聡美が大きく声を上げる。

「あっあれ‥!」



当然聡美にも見覚えのあるズボンだ。

他の人達もそうらしく、廊下をすれ違う学生達は皆香織のズボンに目を留めて行く。



香織は、目を剥いている聡美と雪を見てビクッと身を強張らせた。

しかし取り繕うような笑顔でとりあえずの挨拶をすると、そそくさとその場から立ち去ろうとした。



そしてすれ違いざまに、香織は今日雪が着ているカーディガンを盗み見た。

初めて見る服だ‥香織は目に焼き付けるように、それを脳に刻み込む。

そんなことには気付かぬ雪は呟くように、「そのズボン‥」と口にした。



すると香織はヘラッと笑うと、

「ああ、これ?これ流行ってるみたいよ!」と言ってのけた。



最近巷でよく見るありふれたデザインだ、と香織は続けた。

それを聞いた雪の脳裏に、萌奈から送られてきた手紙の文面が蘇る。

”近い内にうちのネットショップでアップされる予定の新しい服なんだけど、

私がデザインしたのよ!”




手紙には確かにそう書いてあった。つまりどう考えても”ありふれたデザイン”ではないのだ。

雪は明らかに嘘を吐いている香織の方を、厳しい視線で真っ直ぐに見つめる。



香織はそのまま雪に背を向けようとしたが、雪は声を上げて彼女を呼び止めた。

「香織ちゃん!」



ビクッと、香織は身を強張らせて恐る恐る振り返った。

視線の先には、厳しい目で自分を見つめる雪の顔がある。

「ちょっと話そ」



雪はそう言いながら香織に真っ直ぐ近付いて行った。

何も誤魔化さず、何も偽らず、正面から彼女と向き合う。



話があるの、ともう一度雪は香織にそう伝えた。

香織はドギマギしながらも、体裁を整えてそれに応じる。

「な、何で?何なの‥?」



しかしここは沢山の人が行き交う廊下だ。雪は周りを見回して、冷静な提案をした。

「‥その前に、ちょっと場所変えよ」



そう言った雪だったが、香織は首を横に振ってそれを拒否する。

「う、ううん!大丈夫よ?!話すならここで話したいわ!」



香織が大きな声でそう提案を返すので、雪は不本意ながらもここで話をすることにした。

ズボンを指差し、早速本題を切り出す。

「あんたのそのズボン‥私と似たようなのを買ったの?」



雪は冷静にそう問うた。すると香織は少し過剰に反応し、攻撃的な姿勢に出る。

「な、何言ってるの?ただ気に入ったから買っただけだけど?!

だって、ありふれたデザインだもの!」




香織は悪びれずにそう返した。

そして雪のことを恨めしそうな眼差しで見つめると、更に攻撃的に言葉を続ける。

「それとも何?私が着ちゃダメだって言うの?気ぃ悪くさせちゃったかしら?」



真似たことを認め謝るどころか、香織はそれを否定し居直った。

更に言葉を重ねようとする香織であったが、雪は冷静に口を開く。

「いや、あんたが前に私のライオン人形見て気に入って買ったみたいだから、

ズボンもそうしたのかと思ったんだけど‥」




雪は以前彼女の口から語られた”事実”を口にした。それが嘘だと分かっていながらも。

き、汚い‥!ケチくさい幼稚な手で‥!



香織は口を噤みながら、雪の用意周到な誘導尋問に対して憤っていた。

しかし雪もなりふり構ってはいられない。

毒には毒を‥



こういった方法は多少不本意だが、少し頭を使わなければ自分だけがバカをみることになると、雪は悟っていた。

自分で「私の真似をしてる?」と聞くなんて、一つ間違えば厚かましいことこの上ないではないか。



そして案の定、香織は噛み付いてきた。

あんたの真似をしたんじゃない、真似るならモデルや女優など綺麗な人達を真似る、と失礼なことを言う。



雪は俯きながら、ズボンについてはこれ以上追及しても無駄だと判断した。

実のところ、服を真似る真似ないは大した問題じゃない。一番の問題は‥

「ところで、あのライオン人形のことだけど」



雪が本題を口にした途端、香織はビクリと身を強張らせた。

雪は構わず、冷静に言葉を続ける。

「あの人形‥新しく買ったにしてはちょっと急すぎるんじゃない?

やっぱりどこかで拾ったんじゃないの?」




そう冷静に問う雪に、香織は叩き返すようなリアクションで答えた。

私も買ったって言ってるでしょ、と。

「それじゃあちょっと見せてくれる?

私が失くした物と似たとこがあるか確認したい‥」




雪が言葉を続けようとすると、香織はそれを大声で遮った。

「い、今持ってないの‥!」



香織はそう言ったきり、ブルブルと震えながら俯いた。

息は荒く、顔色は悪く、見るからに嘘をついている体だった。



雪はあんぐりと口を開けながら、目の前で震える彼女を見ていた。

なんともやりきれない気持ちで、雪は溜息を吐く‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<雪への陰謀(1)>でした。

香織さん‥強気に出てきましたね‥。そしてどこで見つけたんだ‥あの萌奈ズボン!

その執着を違う方面に生かしてほしいですね‥。


次回<雪への陰謀(2)>へ続きます。


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太一への陰謀(2)

2014-04-14 01:00:00 | 雪3年3部(太一への陰謀~甘い記憶)
「お前、一体何であんなことしたんだ?」



先輩達からそう問われても、福井太一は依然として口を噤んだままだった。

先ほど太一が横山を殴ったことについて、彼らはその理由を太一から聞き出そうとしているのだった。



彼らはどうにかして太一の口を割らせようとするが、なかなか彼は話さなかった。

そしてその態度に溜息を吐く彼らの後ろから、頬を腫らした横山が顔を出す。

「違うっす‥赤山のことにしても伊吹のことにしても、

全部俺が去年やらかしたせいっすから‥。福井が誤解したとしても、それはしょうがないことっすから‥」




横山は痛々しい顔面を擦りながら、しおらしくそう口にした。先輩達の同情の目が横山に向けられる。

しかし太一は騙されない。顔を背けて尚も沈黙する。



先輩の一人は溜息を吐きながら、もう一度太一に向かって質問した。

「なぁ、何であんなことしたんだよ?」



太一の脳裏に、ブチ切れる契機になった横山の台詞が蘇る。

前こっそり撮った聡美の写真があんだよ。

無闇に他人に見せられないようなのもあんだぜ?




ニタニタと嗤う横山の顔を思い出しながら、やはり太一は口を噤んだ。

そんな内容を彼らの前で話せない。太一は尚も俯く。



そんな太一に、先輩達はだんだんと苛立って来た。まさか伊吹聡美が原因か、と言って溜息を吐く。

去年に引き続き、再び女絡みの問題で揉めている二人に先輩達は呆れていた。

彼らは特に太一に対し厳しく、彼らの内の一人は太一に向かって言い捨てた。

「付き合うことも出来ないくせに」



そう言った男に、今まで下を向いていた太一の視線が刺さった。

背の高い太一が送るその視線に、男は幾分ビクつく。



そして後輩である太一から睨まれたことで、男はすっかり憤慨していた。

皮肉を込めて「純情男のお出ましだ」と言われたが、やはり太一は沈黙したままそっぽを向いた。



やがて彼らの内の一人が、太一に対して横山への謝罪を求めてきた。

一人がそう言い出すとその場に居た全員が同意し、皆が「謝れ」と太一を責め出した。



そんな彼らの後ろで、横山は腫れた頬を撫でながら太一の方を眺めていた。

そして先輩達が自分の方を見ていないことをいいことに、横山は携帯を取り出して小さく振って見せる。



アピールだった。

この中にお前の愛しい伊吹聡美のあぶないショットがあるよ、と。



そんな横山からのメッセージを、太一は全て感じ取って歯を食いしばった。

再び心の中に憎しみが沸き起こるが、もう殴るわけにはいかなかった。

太一は顔を上げると、聞き取れないほどの声で口を開く。

「‥スンマセン」



「はぁ?”すいませんでした”だろ?」「ふざけんな。頭下げろコラ」

突っ立ったままの太一に、先輩達から怒号が飛んだ。

太一は心を決めると、一つ深呼吸をしてから頭を深く下げる。

「すいませんでした」



頭を下げた先には、横山が居た。

周囲は暫し静まり緊張の糸が張られた空気の中、横山に視線が注がれる。



そして横山はニタッとした笑みを浮かべると、軽い調子で口を開いた。

「あ~いいっていいって。大丈夫大丈夫~」



それを聞いて彼らは幾らか緊張が取れ、太一に向かって「これからは気をつけろよ」という言葉が飛んだ。

横山は彼らに守られるようにその後方で、ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべている。

「翔!」



すると教室のドアが開き、血相を変えた直美が駆け込んできた。

直美は横山の方へと駆け寄ると、その痛々しい彼の顔に触れる。

「か、顔が‥!何でこんなことに‥?!」



横山は痛そうにしながらも、憂いを帯びた表情で直美に向き合った。

「俺は‥大丈夫だよ。直美さん‥」



そして横山は目を拭った。

「あれ?何で涙が‥」と言いながら。



それを見た直美は、キッと太一に向き直ると彼を罵倒した。

「マジでひどすぎるよ!もう早く行こ!」



そう言って腕を組み教室を後にしようとした直美だが、

横山は去り際に太一に声を掛けた。

実は写真なんてありませーん



小さな声でそう囁いて、横山は太一に背を向けた。

他の学生達も一様に教室を出て行く。



太一の背中越しに聞こえてくるのは、どれも彼を悪く言う声ばかりだった。

もしくは横山を心配する声ばかり。



太一の心は憎しみで燃えた。

先ほど溢れ出した澱がその炎で熱され、グツグツと煮えくり返るようだった。



太一はその感情を潰すように、ギュッと力を入れて拳を握った。

ギリッと歯を食いしばる彼の耳からは、癖のある笑い声がいつまでも聞こえていた‥。


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<太一への陰謀(2)>でした。

あぁ‥イライラした‥(@@)


次回は<雪への陰謀(1)>です。


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