河村静香は先ほど道行く女学生に教えてもらった、”青田淳の彼女”を追いかけた。
そして先回りして待ち伏せすると、その女が通りがかるその時をじっと待っていたのだった。

自分を待ち伏せている人物が居るなど知る由もない香織は、勝利感に酔いしれたままニヤついていた。
そして静香は彼女が自分の前を横切る瞬間、その長い足をサッと前に出したのだ。

香織は案の定それに引っかかり、思い切り無様にコケてしまった。
ズベッと鈍臭い音が辺りに響く。
「キャッ!」

突然のことで何が起こったのか分からない様子の香織の背後から、静香はわざとらしい大仰なトーンで声を掛ける。
「あらあらあら~!ごめんなさいねぇ!ど~しましょ~?!」

人が居るなんて知らなかったから、と言いながら静香は香織の髪を思い切り掴むと、そのまま上に引き上げた。
「ほら起きて起きて~!あらあらあら!」 「きゃああああああ!」

そのあまりの力の強さに、香織は顔面蒼白で叫び続けた。
静香は掴んだ手を少し後方に下げ、香織の顔が見えるような角度で倒す。

痛みに歪む香織の顔を見て、静香は顔を顰めた。久しぶりに出来たという”淳の彼女”がこの程度だとは‥。
静香は一度手を離すと、今度は彼女のリュックに手を掛けた。
「あら~ごめんね~服を掴もうと思ったら手が滑ってぇ~」

リュックを持った手を引き上げると、その勢いのまま思い切り引き倒した。
「あらぁ~手が~!まーた滑ったわぁ~!!」

ドサッ、と香織は為す術もなく崩れ落ちた。
静香は口では親切な言葉を紡ぎながら、尚も香織の襟首を掴んで引き上げる。
「ごめんなさいねぇ。あら~服に埃が沢山ついてるわよ?あたしが取ってあげる!」

静香はそう言って、香織を前後左右にブンブン揺さぶった。
「あららぁ~?何でこんなに取れないのかしらぁ~?」

まるで振り子のように振り回された香織は、くらりと目眩を起こした。
静香はようやく彼女から手を放すと、心配するフリをしてほくそ笑む。
「あらぁ?目眩かしらぁ~?」

グラグラ揺れる目の前に、香織は思わずえずく。
そしてようやく目眩がおさまると、香織は猛然と抗議を始めた。
「な、なんでこんなこと‥!止めて下さい!」

しかし静香はどこかしらばっくれた様子で小首を傾げる。
そして震える香織に、静香は凄むようにして身を屈めて囁いた。
「助けを求めたいでしょうけど、周りに人っ子一人いないわねぇ?
用が済んだらあたしはバックレるけどね?」

ヒットエンドランよ、と静香は不吉なことを口にする。
香織の顔はみるみる青ざめ、動揺のあまり声を上げた。
「んななな‥何でこんな‥!」

「あらっ?気分が悪くなっちゃったかしら?」青ざめた香織を見て、静香はそう声を掛けた。
そして彼女の首に後ろから手を掛けると、そのまますごい勢いで木に突進する。
「あそこで暫く休むといいわ!」 「ぎゃああああああ!」

このままでは衝突する‥!香織は咄嗟に目を閉じた。
するとぶつかる寸前のところで、静香は香織の首に前から手を掛け、押し止めた。

そしてそのまま香織を木に打ち付け、彼女の顔のすぐ横に静香の手がバンッと置かれる。
香織は恐ろしさのあまり絶叫した。

そして静香は話の本題を切り出した。
香織にとってはわけの分からない内容の。
「あんたが淳の彼女だって?」

目を白黒させている香織は、当然何も口に出来ない。
静香は威圧的な体勢のまま話を続けた。
「あんたが淳と付き合って‥」 「ひぃ~!」

香織は泣きながら静香の懐から抜け出すが、恐怖で足が思うように動かない。
案の定香織はすぐに捕まり、再び静香は彼女を責める。
「どこへ行こうっての?今話をしてるんだろうが!聞けよ!あぁ?!」

その迫力に香織は身が竦む思いがしたが、必死に両者の間にある誤解を口にした。
「違うんですって!私は”赤山雪”じゃありません!
私じゃなくてあの子と話して下さい!殴るならあの子を殴って下さいよ!」

静香は、香織が口にした”殴る”に反応し、香織の手首をグッと掴んだ。
「は?誰が殴ったって?人をチンピラ扱いして、何バカなことほざいてんの?」

静香の握力は凄まじいものがあった。香織は自分の手が痺れていくのを感じながら、再び絶叫する。
その叫びも構わずに、あんたは忘れてるかもしれないけど、と静香は低い声で前置きをして話を続けた。
「赤川だろうと赤貝だろうと、あんたがこのまま淳とラブラブしたくても、世の中にタダはないの。
あんたはあたしのことを含めて、払うもんは払ってもらわないとね?」

あんたの”借金”、取り立ててやる。
静香はこう言った。
静香は間接的にせよ自分が落ちぶれた原因となった彼女に、宣戦布告したのだー‥。
「おいっ!」

すると次の瞬間、顔を隠した大男に静香は持ち上げられた。
比較的背の高い静香だが、その男は更に大きい。男は静香に向かって声を荒げた。
「気ぃ狂ったかっ?!」

静香は自分を抱え上げた主を見て顔面蒼白した。ここに居るはずのない弟・河村亮だったのだ。
亮はそのまま静香を肩に担ぎ上げると、猛ダッシュでその場を後にした。

静香は抱えられた姿勢のまま、香織にとあるジェスチャーでメッセージを送った。
あたしはいつでもお前を見ているぞ、と。

とんでもない嵐が来て、そして去って行った‥。
全身の力が抜けた香織は、そのままその場で崩れ落ちる。

人生には予測できないことがある。
それは誰の身にも起こりうることであり、いつだって予測不可能にやってくるものなのだ‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<暴行>でした。
し、静香さん‥。握力相当強そうですね‥前も雪の手首に痣残してましたし‥。
香織も災難でしたね。でもあまり同情できないのは何でだろう‥(苦笑)
しかし淳の彼女だからと突然暴行‥やっぱり静香ぶっ飛んでますよね。
静香が口にする台詞にしても、下のような思考回路なのでしょう。
淳=青田家が自分を支援するのは当然→支援しなくなったのは淳に彼女が出来たからだ→
だから淳の彼女も自分を支援しなくちゃいけない→
「あんたはあたしのことを含めて、払うもんは払ってもらわないとね?」

ということかと‥。ぶっ飛びすぎてる‥^^;
次回は<恨みの矛先>です。
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そして先回りして待ち伏せすると、その女が通りがかるその時をじっと待っていたのだった。

自分を待ち伏せている人物が居るなど知る由もない香織は、勝利感に酔いしれたままニヤついていた。
そして静香は彼女が自分の前を横切る瞬間、その長い足をサッと前に出したのだ。

香織は案の定それに引っかかり、思い切り無様にコケてしまった。
ズベッと鈍臭い音が辺りに響く。
「キャッ!」

突然のことで何が起こったのか分からない様子の香織の背後から、静香はわざとらしい大仰なトーンで声を掛ける。
「あらあらあら~!ごめんなさいねぇ!ど~しましょ~?!」

人が居るなんて知らなかったから、と言いながら静香は香織の髪を思い切り掴むと、そのまま上に引き上げた。
「ほら起きて起きて~!あらあらあら!」 「きゃああああああ!」

そのあまりの力の強さに、香織は顔面蒼白で叫び続けた。
静香は掴んだ手を少し後方に下げ、香織の顔が見えるような角度で倒す。

痛みに歪む香織の顔を見て、静香は顔を顰めた。久しぶりに出来たという”淳の彼女”がこの程度だとは‥。
静香は一度手を離すと、今度は彼女のリュックに手を掛けた。
「あら~ごめんね~服を掴もうと思ったら手が滑ってぇ~」

リュックを持った手を引き上げると、その勢いのまま思い切り引き倒した。
「あらぁ~手が~!まーた滑ったわぁ~!!」

ドサッ、と香織は為す術もなく崩れ落ちた。
静香は口では親切な言葉を紡ぎながら、尚も香織の襟首を掴んで引き上げる。
「ごめんなさいねぇ。あら~服に埃が沢山ついてるわよ?あたしが取ってあげる!」

静香はそう言って、香織を前後左右にブンブン揺さぶった。
「あららぁ~?何でこんなに取れないのかしらぁ~?」

まるで振り子のように振り回された香織は、くらりと目眩を起こした。
静香はようやく彼女から手を放すと、心配するフリをしてほくそ笑む。
「あらぁ?目眩かしらぁ~?」

グラグラ揺れる目の前に、香織は思わずえずく。
そしてようやく目眩がおさまると、香織は猛然と抗議を始めた。
「な、なんでこんなこと‥!止めて下さい!」

しかし静香はどこかしらばっくれた様子で小首を傾げる。
そして震える香織に、静香は凄むようにして身を屈めて囁いた。
「助けを求めたいでしょうけど、周りに人っ子一人いないわねぇ?
用が済んだらあたしはバックレるけどね?」

ヒットエンドランよ、と静香は不吉なことを口にする。
香織の顔はみるみる青ざめ、動揺のあまり声を上げた。
「んななな‥何でこんな‥!」

「あらっ?気分が悪くなっちゃったかしら?」青ざめた香織を見て、静香はそう声を掛けた。
そして彼女の首に後ろから手を掛けると、そのまますごい勢いで木に突進する。
「あそこで暫く休むといいわ!」 「ぎゃああああああ!」

このままでは衝突する‥!香織は咄嗟に目を閉じた。
するとぶつかる寸前のところで、静香は香織の首に前から手を掛け、押し止めた。

そしてそのまま香織を木に打ち付け、彼女の顔のすぐ横に静香の手がバンッと置かれる。
香織は恐ろしさのあまり絶叫した。


そして静香は話の本題を切り出した。
香織にとってはわけの分からない内容の。
「あんたが淳の彼女だって?」

目を白黒させている香織は、当然何も口に出来ない。
静香は威圧的な体勢のまま話を続けた。
「あんたが淳と付き合って‥」 「ひぃ~!」

香織は泣きながら静香の懐から抜け出すが、恐怖で足が思うように動かない。
案の定香織はすぐに捕まり、再び静香は彼女を責める。
「どこへ行こうっての?今話をしてるんだろうが!聞けよ!あぁ?!」

その迫力に香織は身が竦む思いがしたが、必死に両者の間にある誤解を口にした。
「違うんですって!私は”赤山雪”じゃありません!
私じゃなくてあの子と話して下さい!殴るならあの子を殴って下さいよ!」

静香は、香織が口にした”殴る”に反応し、香織の手首をグッと掴んだ。
「は?誰が殴ったって?人をチンピラ扱いして、何バカなことほざいてんの?」

静香の握力は凄まじいものがあった。香織は自分の手が痺れていくのを感じながら、再び絶叫する。
その叫びも構わずに、あんたは忘れてるかもしれないけど、と静香は低い声で前置きをして話を続けた。
「赤川だろうと赤貝だろうと、あんたがこのまま淳とラブラブしたくても、世の中にタダはないの。
あんたはあたしのことを含めて、払うもんは払ってもらわないとね?」

あんたの”借金”、取り立ててやる。
静香はこう言った。
静香は間接的にせよ自分が落ちぶれた原因となった彼女に、宣戦布告したのだー‥。
「おいっ!」

すると次の瞬間、顔を隠した大男に静香は持ち上げられた。
比較的背の高い静香だが、その男は更に大きい。男は静香に向かって声を荒げた。
「気ぃ狂ったかっ?!」

静香は自分を抱え上げた主を見て顔面蒼白した。ここに居るはずのない弟・河村亮だったのだ。
亮はそのまま静香を肩に担ぎ上げると、猛ダッシュでその場を後にした。

静香は抱えられた姿勢のまま、香織にとあるジェスチャーでメッセージを送った。
あたしはいつでもお前を見ているぞ、と。

とんでもない嵐が来て、そして去って行った‥。
全身の力が抜けた香織は、そのままその場で崩れ落ちる。

人生には予測できないことがある。
それは誰の身にも起こりうることであり、いつだって予測不可能にやってくるものなのだ‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<暴行>でした。
し、静香さん‥。握力相当強そうですね‥前も雪の手首に痣残してましたし‥。
香織も災難でしたね。でもあまり同情できないのは何でだろう‥(苦笑)
しかし淳の彼女だからと突然暴行‥やっぱり静香ぶっ飛んでますよね。
静香が口にする台詞にしても、下のような思考回路なのでしょう。
淳=青田家が自分を支援するのは当然→支援しなくなったのは淳に彼女が出来たからだ→
だから淳の彼女も自分を支援しなくちゃいけない→
「あんたはあたしのことを含めて、払うもんは払ってもらわないとね?」

ということかと‥。ぶっ飛びすぎてる‥^^;
次回は<恨みの矛先>です。
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