四階へと上がるエレベーターの中で、二人は揃って階数表示を見上げていた。
淳は両手に紙袋を持っているので、淳の鞄は雪が持ってあげている。

淳は幾分心配そうな表情で、隣の雪に話し掛けた。雪は笑顔でそれに応える。
「来ても良かったかなぁ。家に連絡はした?」 「はい。さっき車の中でしましたよ」

手土産の中身を覗き込みながら、「こんなんで良かったかな」と淳が呟く。
雪は笑って頷きながら、「うちのお母さん料理上手ですから」と言って彼を安心させる。
ふふふ‥ ふふふ‥

二人が互いの顔を見て笑い合うと同時に、エレベーターはチン!とベルを鳴らして四階に着いた。
チャイムを鳴らすと、ゆっくりと赤山家のドアが開く。

するとなんともエレガンスな雪の母親が、二人を迎えたのだった。
「あらあら、いらっしゃいまし‥」

しずしず、という足音が聞こえて来そうなほど静かに、雪の母親は二人を出迎えた。
淳はニッコリと微笑みながら、行儀良く挨拶する。
「こんばんは、お母様」

雪の母はゆったりと微笑むと、優雅に挨拶を返した。そんな母を見ながら、雪は目を白黒させている。
「おほほ‥遠くからご苦労様。どうぞお入りになって」「あ、こんばんはー!」

三人の後ろから、蓮がひょっこりと顔を出して淳に挨拶した。
温かく自分を迎えてくれる赤山家に対して、淳は完璧な笑顔を浮かべてその空気の中に入り込む。

そして淳は、持っていた紙袋を雪の母に向かって差し出した。蓮がそれを見て陽気にはしゃぐ。
「これ、つまらないものですが‥」「あらあら‥気を遣わなくても良いのに~」
「おおっ!これ何すか?!食いもん?!」

四人はワイワイしながら、家の中へと歩を進めた。
リビングに続く廊下を歩きながら、雪の母が淳に向かって本日の説明をする。
「それにしてもよく来てくれたわね~。最近雪の身体の調子が良くないから、
滋養のある料理をこしらえたのよ。ついでなら家族みんなで食べようと思って、沢山準備したの。
人は多ければ多いほどいいわ。さ、こちらへどうぞ」

「ありがとうございます」と言うどこか聞き覚えのある声を、リビングにて食事の準備を手伝う亮は聞いた。
すると顰め面の雪の父がキッチンから出て来たので、声のする方を指差して聞いてみる。
「なんすか?誰か来たんすか?」
「雪が彼氏を連れて来たから、アイツめ声色まで変えおって‥それよりなんでわしがこれを運んどるんだ‥」

雪の彼氏‥。
その言葉に思わず亮は血相を変え、大きな声で叫んだ。
「?!えぇっ?!」

声のする方を向くと同時に、二人の目が合った。淳と亮は同じように、キョトンとした顔を見合わせる。
「お父さんはキッチンよー」

亮はいきなり現れた淳を見つめながら、徐々に顔を顰めて行った。
心に積み重なった悪感情が、無意識下でその表情に表れて行く。

同じく淳も亮のことを見つめていた。
しかし彼はその感情を表情の上に乗せることなく、ただ目を見開いて凝視している。

すると次の瞬間、雪の父がキッチンから顔を出した。淳はくるりとそちらへ向き直り、低く頭を下げて挨拶する。
「おお、来たのか」 「こんばんは」 「あぁ。こっち座りなさい」

一方雪は、顔面蒼白の上に口をあんぐりと開けて今の状況に困惑していた。こちらは感情が駄々漏れである。
しかし彼女の心中とは裏腹に、場は着々と整って行く。
「あ、こちらはアルバイトの亮君だ。二人は知り合いだったかな?」

そう亮のことを紹介する雪の父に対し、淳は完璧とも言える笑顔を崩さず言葉を返した。
「賑やかになって良いですね」

雪は動揺しながら、思わず亮の方へ顔を向けた。
亮は青筋を立てながら、雪の方をじっと見る。

すると亮は両手をホールドアップし、雪からプイと顔を背けた。
今の状況にはお手上げだ、と。
同じ空間に居るからって、常にコミュニケーションが取れるわけじゃない。

顔を突き合わせた時の方が、かえってもっと‥

雪もまた亮から目を背けながら、ズクズクと心臓が大きく鳴るのを聞いていた。
まるで予想もしなかった今の状況に、未だ頭がついていかない。

ドスドスと大きな足音を立ててキッチンに消えて行く亮の手元を、淳はじっと凝視していた。
まるで家族のように食器を並べる亮の姿は、彼の心情を暗く陰らせる。
「さ、こちらへ。おほほ‥」「はい」

やがて淳は雪の母に促され、ディナーの席へと就いた。
雪は白目になって、心の中で大きく叫ぶ。
ど‥どういうことーーーー?!?!

運命は意志と関係なく、物事と状況を整理し始める。
そしてそうしなければいけないことに雪もまた、実は気がついているのだ。
だからこそー‥。
もっと向き合って、話をしなきゃいけない。

役者が揃い、場は整った。
波乱に満ちたディナーショー第三幕が今、開幕する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<ディナーショーの開幕>でした。
今週から休載かと思われましたが、掲載されましたね!!
いよいよ雪+淳+亮揃い踏み!いざディナーショーという大舞台!
‥というところで、二ヶ月強の休載だそうです^^;
作者さんのご挨拶では、「2015年2月に会いましょう」とのことです。
体調の方が芳しくないようですので、心配ですね。。
ゆっくり静養されてからのカムバックを、楽しみに待ちましょう~!!
本筋の後の「休載特別編」は、またゆっくりと翻訳していくつもりです。
休載明けに合わせて、来年2月までには‥^^;(ゆっくりだな!)
ということで皆様、またお会いしましょう~♪
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淳は両手に紙袋を持っているので、淳の鞄は雪が持ってあげている。

淳は幾分心配そうな表情で、隣の雪に話し掛けた。雪は笑顔でそれに応える。
「来ても良かったかなぁ。家に連絡はした?」 「はい。さっき車の中でしましたよ」

手土産の中身を覗き込みながら、「こんなんで良かったかな」と淳が呟く。
雪は笑って頷きながら、「うちのお母さん料理上手ですから」と言って彼を安心させる。
ふふふ‥ ふふふ‥

二人が互いの顔を見て笑い合うと同時に、エレベーターはチン!とベルを鳴らして四階に着いた。
チャイムを鳴らすと、ゆっくりと赤山家のドアが開く。

するとなんともエレガンスな雪の母親が、二人を迎えたのだった。
「あらあら、いらっしゃいまし‥」

しずしず、という足音が聞こえて来そうなほど静かに、雪の母親は二人を出迎えた。
淳はニッコリと微笑みながら、行儀良く挨拶する。
「こんばんは、お母様」

雪の母はゆったりと微笑むと、優雅に挨拶を返した。そんな母を見ながら、雪は目を白黒させている。
「おほほ‥遠くからご苦労様。どうぞお入りになって」「あ、こんばんはー!」

三人の後ろから、蓮がひょっこりと顔を出して淳に挨拶した。
温かく自分を迎えてくれる赤山家に対して、淳は完璧な笑顔を浮かべてその空気の中に入り込む。

そして淳は、持っていた紙袋を雪の母に向かって差し出した。蓮がそれを見て陽気にはしゃぐ。
「これ、つまらないものですが‥」「あらあら‥気を遣わなくても良いのに~」
「おおっ!これ何すか?!食いもん?!」

四人はワイワイしながら、家の中へと歩を進めた。
リビングに続く廊下を歩きながら、雪の母が淳に向かって本日の説明をする。
「それにしてもよく来てくれたわね~。最近雪の身体の調子が良くないから、
滋養のある料理をこしらえたのよ。ついでなら家族みんなで食べようと思って、沢山準備したの。
人は多ければ多いほどいいわ。さ、こちらへどうぞ」

「ありがとうございます」と言うどこか聞き覚えのある声を、リビングにて食事の準備を手伝う亮は聞いた。
すると顰め面の雪の父がキッチンから出て来たので、声のする方を指差して聞いてみる。
「なんすか?誰か来たんすか?」
「雪が彼氏を連れて来たから、アイツめ声色まで変えおって‥それよりなんでわしがこれを運んどるんだ‥」

雪の彼氏‥。
その言葉に思わず亮は血相を変え、大きな声で叫んだ。
「?!えぇっ?!」

声のする方を向くと同時に、二人の目が合った。淳と亮は同じように、キョトンとした顔を見合わせる。
「お父さんはキッチンよー」

亮はいきなり現れた淳を見つめながら、徐々に顔を顰めて行った。
心に積み重なった悪感情が、無意識下でその表情に表れて行く。

同じく淳も亮のことを見つめていた。
しかし彼はその感情を表情の上に乗せることなく、ただ目を見開いて凝視している。

すると次の瞬間、雪の父がキッチンから顔を出した。淳はくるりとそちらへ向き直り、低く頭を下げて挨拶する。
「おお、来たのか」 「こんばんは」 「あぁ。こっち座りなさい」

一方雪は、顔面蒼白の上に口をあんぐりと開けて今の状況に困惑していた。こちらは感情が駄々漏れである。
しかし彼女の心中とは裏腹に、場は着々と整って行く。
「あ、こちらはアルバイトの亮君だ。二人は知り合いだったかな?」

そう亮のことを紹介する雪の父に対し、淳は完璧とも言える笑顔を崩さず言葉を返した。
「賑やかになって良いですね」

雪は動揺しながら、思わず亮の方へ顔を向けた。
亮は青筋を立てながら、雪の方をじっと見る。

すると亮は両手をホールドアップし、雪からプイと顔を背けた。
今の状況にはお手上げだ、と。
同じ空間に居るからって、常にコミュニケーションが取れるわけじゃない。

顔を突き合わせた時の方が、かえってもっと‥

雪もまた亮から目を背けながら、ズクズクと心臓が大きく鳴るのを聞いていた。
まるで予想もしなかった今の状況に、未だ頭がついていかない。

ドスドスと大きな足音を立ててキッチンに消えて行く亮の手元を、淳はじっと凝視していた。
まるで家族のように食器を並べる亮の姿は、彼の心情を暗く陰らせる。
「さ、こちらへ。おほほ‥」「はい」

やがて淳は雪の母に促され、ディナーの席へと就いた。
雪は白目になって、心の中で大きく叫ぶ。
ど‥どういうことーーーー?!?!

運命は意志と関係なく、物事と状況を整理し始める。
そしてそうしなければいけないことに雪もまた、実は気がついているのだ。
だからこそー‥。
もっと向き合って、話をしなきゃいけない。

役者が揃い、場は整った。
波乱に満ちたディナーショー第三幕が今、開幕する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<ディナーショーの開幕>でした。
今週から休載かと思われましたが、掲載されましたね!!
いよいよ雪+淳+亮揃い踏み!いざディナーショーという大舞台!
‥というところで、二ヶ月強の休載だそうです^^;
作者さんのご挨拶では、「2015年2月に会いましょう」とのことです。
体調の方が芳しくないようですので、心配ですね。。
ゆっくり静養されてからのカムバックを、楽しみに待ちましょう~!!
本筋の後の「休載特別編」は、またゆっくりと翻訳していくつもりです。
休載明けに合わせて、来年2月までには‥^^;(ゆっくりだな!)
ということで皆様、またお会いしましょう~♪
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