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Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

ディナーショーの開幕

2014-11-21 01:00:00 | 雪3年3部(ディナーショー第三幕)
四階へと上がるエレベーターの中で、二人は揃って階数表示を見上げていた。

淳は両手に紙袋を持っているので、淳の鞄は雪が持ってあげている。



淳は幾分心配そうな表情で、隣の雪に話し掛けた。雪は笑顔でそれに応える。

「来ても良かったかなぁ。家に連絡はした?」 「はい。さっき車の中でしましたよ」



手土産の中身を覗き込みながら、「こんなんで良かったかな」と淳が呟く。

雪は笑って頷きながら、「うちのお母さん料理上手ですから」と言って彼を安心させる。

ふふふ‥ ふふふ‥



二人が互いの顔を見て笑い合うと同時に、エレベーターはチン!とベルを鳴らして四階に着いた。

チャイムを鳴らすと、ゆっくりと赤山家のドアが開く。



するとなんともエレガンスな雪の母親が、二人を迎えたのだった。

「あらあら、いらっしゃいまし‥」



しずしず、という足音が聞こえて来そうなほど静かに、雪の母親は二人を出迎えた。

淳はニッコリと微笑みながら、行儀良く挨拶する。

「こんばんは、お母様」



雪の母はゆったりと微笑むと、優雅に挨拶を返した。そんな母を見ながら、雪は目を白黒させている。

「おほほ‥遠くからご苦労様。どうぞお入りになって」「あ、こんばんはー!」



三人の後ろから、蓮がひょっこりと顔を出して淳に挨拶した。

温かく自分を迎えてくれる赤山家に対して、淳は完璧な笑顔を浮かべてその空気の中に入り込む。



そして淳は、持っていた紙袋を雪の母に向かって差し出した。蓮がそれを見て陽気にはしゃぐ。

「これ、つまらないものですが‥」「あらあら‥気を遣わなくても良いのに~」

「おおっ!これ何すか?!食いもん?!」



四人はワイワイしながら、家の中へと歩を進めた。

リビングに続く廊下を歩きながら、雪の母が淳に向かって本日の説明をする。

「それにしてもよく来てくれたわね~。最近雪の身体の調子が良くないから、

滋養のある料理をこしらえたのよ。ついでなら家族みんなで食べようと思って、沢山準備したの。

人は多ければ多いほどいいわ。さ、こちらへどうぞ」




「ありがとうございます」と言うどこか聞き覚えのある声を、リビングにて食事の準備を手伝う亮は聞いた。

すると顰め面の雪の父がキッチンから出て来たので、声のする方を指差して聞いてみる。

「なんすか?誰か来たんすか?」

「雪が彼氏を連れて来たから、アイツめ声色まで変えおって‥それよりなんでわしがこれを運んどるんだ‥



雪の彼氏‥。

その言葉に思わず亮は血相を変え、大きな声で叫んだ。

「?!えぇっ?!」



声のする方を向くと同時に、二人の目が合った。淳と亮は同じように、キョトンとした顔を見合わせる。

「お父さんはキッチンよー」



亮はいきなり現れた淳を見つめながら、徐々に顔を顰めて行った。

心に積み重なった悪感情が、無意識下でその表情に表れて行く。



同じく淳も亮のことを見つめていた。

しかし彼はその感情を表情の上に乗せることなく、ただ目を見開いて凝視している。



すると次の瞬間、雪の父がキッチンから顔を出した。淳はくるりとそちらへ向き直り、低く頭を下げて挨拶する。

「おお、来たのか」 「こんばんは」 「あぁ。こっち座りなさい」



一方雪は、顔面蒼白の上に口をあんぐりと開けて今の状況に困惑していた。こちらは感情が駄々漏れである。

しかし彼女の心中とは裏腹に、場は着々と整って行く。

「あ、こちらはアルバイトの亮君だ。二人は知り合いだったかな?」



そう亮のことを紹介する雪の父に対し、淳は完璧とも言える笑顔を崩さず言葉を返した。

「賑やかになって良いですね」



雪は動揺しながら、思わず亮の方へ顔を向けた。

亮は青筋を立てながら、雪の方をじっと見る。



すると亮は両手をホールドアップし、雪からプイと顔を背けた。

今の状況にはお手上げだ、と。

同じ空間に居るからって、常にコミュニケーションが取れるわけじゃない。



顔を突き合わせた時の方が、かえってもっと‥



雪もまた亮から目を背けながら、ズクズクと心臓が大きく鳴るのを聞いていた。

まるで予想もしなかった今の状況に、未だ頭がついていかない。



ドスドスと大きな足音を立ててキッチンに消えて行く亮の手元を、淳はじっと凝視していた。

まるで家族のように食器を並べる亮の姿は、彼の心情を暗く陰らせる。

「さ、こちらへ。おほほ‥」「はい」 



やがて淳は雪の母に促され、ディナーの席へと就いた。

雪は白目になって、心の中で大きく叫ぶ。

ど‥どういうことーーーー?!?!



運命は意志と関係なく、物事と状況を整理し始める。

そしてそうしなければいけないことに雪もまた、実は気がついているのだ。

だからこそー‥。

もっと向き合って、話をしなきゃいけない。




役者が揃い、場は整った。

波乱に満ちたディナーショー第三幕が今、開幕する。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<ディナーショーの開幕>でした。

今週から休載かと思われましたが、掲載されましたね!!

いよいよ雪+淳+亮揃い踏み!いざディナーショーという大舞台!

‥というところで、二ヶ月強の休載だそうです^^;

作者さんのご挨拶では、「2015年2月に会いましょう」とのことです。

体調の方が芳しくないようですので、心配ですね。。

ゆっくり静養されてからのカムバックを、楽しみに待ちましょう~!!


本筋の後の「休載特別編」は、またゆっくりと翻訳していくつもりです。

休載明けに合わせて、来年2月までには‥^^;(ゆっくりだな!)


ということで皆様、またお会いしましょう~♪


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一年半の月日

2014-11-16 01:00:00 | 雪3年3部(ディナーショー第三幕)
青田淳は言った。大きく目を見開きながら。

「え?」



そして彼と向かい合いながら、赤山雪も言った。

同じく目をまん丸くしながら。

「え?」



雪はぽかんと口を開けながら、彼のことを見下ろしていた。

今何が起きたのか、彼女自身も理解出来ていない。

 

ふと、足元に視線を落とす。

「‥‥‥‥」



そこには書類が落ちていた。

‥そして自分は、先ほどそれを蹴ったのだ。

「ええええええええええ?!」



誰よりも、この場面で一番驚いたのは雪自身だった。

大きな声を上げながら、雪は自分のしでかしたことを思って顔面蒼白する。

先ほどまでキョトンとしていた淳は、そんな雪のリアクションを見ながら徐々に顔を顰め始めた。

それもそのはず。彼女の為に書類を取り出そうとしたのに、それを彼女自身に蹴られたのだから。



淳は立ち上がるやいなや、雪に向かって詰め寄った。

「何すんの?!?!」

「いやいやいやいや!!」



雪は手の平と首をブンブンと横に振りながら、正直に自分の気持ちを口にする。

「わ、私にも分かんない‥」



雪は半ばパニックに陥りながら、目の前の書類を見て考えた。

なぜに?!なぜにあんなことしたの私!悪意無かったし!!なんか見てたら‥反射的に蹴りたくなって‥



雪は無意識が引き起こした自分の行動を省みて、一人グルグルと思考にふけった。

すると笑顔ながら顔に青筋を立てた淳が、雪の口の端をつねりながら怒りをぶつける。

「何が”私にも分かんない”だよ!去年俺がしたことをやり返したんだろ?!えぇ?!」

 

淳のその言葉に、雪はイラッと来た。口の端の痛みも手伝って、雪もまた怒りを露わにする。

「どっちが先にやったと思ってんですか!」



バッと淳の手を振り払うと、雪と淳は笑顔に青筋を浮かべて相対した。

「書類を見れば蹴りたくなる私の気持ちを先輩が理解出来るかどうかは分かりませんけどねぇ?!」

「久しぶりのデートなのに、ちょっとやり過ぎなんじゃないのかなぁ?!」



雪は彼と向かい合いながら、ふっと軽く息を吐いた。

心の奥底、記憶の彼方に沈めてあったその気持ちを口に出す。

「ハッキリ言って‥」



「今現在私から好かれてるからって、このことを全部私のせいにしちゃ駄目でしょ」

「うぅ‥



雪は去年のことを思い出しながら、幾分意地悪な気持ちで話を続けた。淳はタジタジだ。

「てか教えて下さいよ。会社で先輩に言い寄って来る女の子はいませんか?

ん?もしかして思い当たるフシがあるのかな?そんでもってその女の子の背後から近付いてー‥」




記憶の中に、あの時の場面が蘇る。

ワックスの効いた廊下で滑った雪の肩を掴み、耳元で囁かれたあの台詞ー‥。




「”これからは気をつけ‥”」



しかしすべて言い切る前に、ほっぺたをムギュ、とされて雪は黙る。

「もう止めようね



笑顔で怒る淳。しかし雪はタコ口のまま全力で抵抗する。

「フン!もうひをつへないもんねっ!!」

 

プリプリ怒る雪の剣幕に、淳は気圧され息を飲んだ。

その後もわめき続ける雪に遂に淳は降参し、「分かった、俺が悪かった!」と平謝りするしか無かったのだった‥。








その後なんとか雪をなだめ、車へと移動した二人はもうヘトヘトだった。

ゼーゼーハーハー言いながら、二人は各々力尽きる。



雪は白目になりながら、この滑稽なやり取りを振り返って一人思った。

なんかもう‥笑っちゃうな‥。完璧忘れたと思ってたのに‥

 

座席に凭れる雪に対し、淳はハンドルに凭れながら「もう運転できない。雪ちゃんやって」と項垂れる。

雪は脳裏にあの時の場面を思い浮かべながら、当時味わった感情をふと反芻した。

あの時かなりショック受けたからかな‥自分でもビックリだわ‥



書類を蹴られたあの時。

生まれて初めて自分に向けられた”疎ましい”という感情に、顔が赤くなり、全身が震えた‥。




その記憶の痕跡が残っていたことは、雪にとっても意外だった。

まだ乱れている息を落ち着けながら、雪は隣に座る淳へと視線を流す。



淳は大きく息を吐きながら、突っ伏していたハンドルから顔を上げた。

そしてやがてゆっくりと、彼は彼女の方を向く。



二人はあの時の記憶を思い出しながら、ただ静かに見つめ合った。

出会ってから一年半。良いことも悪いことも、色々なことを乗り越えてここまで来たー‥。



やがて二人はどちらからともなく、ははは、と小さく笑い出した。

込み上げてくる若干自虐的な可笑しみを分かち合いながら。



一度笑い出すと、なかなか止まらなかった。

ハンドルに凭れていた淳も途中から座席に背中をつけて、二人は同じ体勢で笑い合う。



暫しお腹を押さえながら笑っていた雪だが、不意に胃が痛んで笑いが止んだ。

引き攣るような痛みがお腹に走る。



そんな雪を見て、淳が心配そうに眉を寄せた。

「どうした?どっか痛い?」「いえ‥ただの疲れだと思いますけど胃が痛くて‥。もう大丈夫‥」



「疲れが溜まってるんじゃない」と言う淳に雪は、

「期末が近付いてるからこうなるのかも。大丈夫ですよ」と言って彼を安心させる。



淳は笑顔を浮かべると、そんな雪に向かって提案した。

「それじゃ夕飯食べに行こっか。身体に良いものご馳走するよ」



彼の提案に雪は頷こうとしたが、あることを思い出して顔を青くする。

はっ‥!



雪はオロオロしながら、彼に事情を説明した。

「そうだ‥!今日は早く家に帰らないと‥。お母さんからそう言われてて‥」



お母さんが凄いディナーを用意して待ってるかもしれない、と呟きながら、雪は携帯を取り出す。

「うぅ‥せっかく久しぶりのデートなのに‥やっぱり帰れないって言って‥」

「いやいや、それはよくないよ。せっかく夕飯用意してくれてるのに」



迷いながらも雪がそう言うと、淳は首を横に振って家に帰るよう諭した。

「残念だけど、とりあえず家に‥」

「あっ!」



淳が言葉を続けようとすると、雪はとある良案を思いついて声を上げた。

そして彼の方に向き直り、笑顔でこう提案する。

「それじゃ先輩も家で一緒に夕食、どうですか?」



こうして二人は雪の家に向かうことになった。

ディナーショー第三幕へ向かって、車は走って行く‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<一年半の月日>でした。

あれだけショッキングだった書類キック事件も、「これからは気をつけろよ」の台詞も、

もう笑い合えるようになったんだな‥と思うと、感慨深いですね‥(T T)

そして次回はいよいよディナーショー第三幕開幕です!

次回<ディナーショーの開幕>へ!


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拭えない記憶

2014-11-15 01:00:00 | 雪3年3部(ディナーショー第三幕)
おい元気だったか、久しぶりだなぁと、久々に淳と会った柳楓と同期の男子学生は言った。

彼らが顔を合わすのは、中間試験の時以来だ。



男子学生と柳は、幾分憂鬱そうな表情をしてこう漏らす。

「インターン行ってる奴ら皆いねーから、四年は寂しいよ」

「あーうらやましいぜー」



インターンに行くこと無く大学に来ている四年はそういない。(後ろに見えるのは健太だろうか?)

一流企業Z社にほぼ内定間違い無し(と皆から思われている)淳は彼らの言葉に返答することなく、ただうっすらと微笑んだ。



皆それぞれの思いを抱えて生きている。

そして淳と雪は、柳らと別れて二人で歩いて行く。

先輩と一緒の授業、嬉しかった♪

え?ずっと寝てたじゃない ‥‥‥。





二人は、大学を出て街のカフェへと向かった。

雪は一枚のクーポンを取り出して、それを誇らしげに彼に見せる。

「先輩、これ見て!私ここのカフェのクーポン全部集めたんです!

だからここは奢っちゃいますよー!」
「おーやるなぁ。惚れちゃう~ウフフ



二人はキャッキャとはしゃぎながら、幾分混雑している店内へと歩を進めた。

すると雪は、その狭い通路で不意に男性とぶつかる。

「あ、すいません」



雪はその力で少しよろめいた。

するとそんな雪の後ろから淳がさっと手を伸ばし、彼女の肩を引き寄せる。

「大丈夫?」



大きな手が雪の肩の上に置かれ、彼女を守る。

するとその手は、次の瞬間するりと彼女の首筋を撫でた。

滑らかな肌の表面を、彼の熱い指が密かに辿る。



しかし次の瞬間その手は雪の背中に移り、

「あそこ空いてるよ」



と言って彼は遠方の席へと歩いて行った。

雪は一瞬もたらされたその感触に、なんだか顔が赤くなる‥。



俺も最近クーポン持ってるんだ。会社の前のカフェの

えっ先輩が?!






二人はクーポンでお得なコーヒーを頼むと、席に就いてお喋りを始めた。

「それで健太先輩が蓮に‥」「へぇ‥」

「あの人年イッてる癖に本当に子供ですよねー」

「俺最近あの人に会ってないけど、やっぱり全然変わってないね」「でしょー」



先日健太が蓮の足を踏み付けたことを淳にチクリつつ(?)、二人はお喋りに花を咲かせる。

「それでインターンが一緒の友達がさ‥」

「何が友達ですか!なんなのそいつ!」



しかし淳が話すインターン先の話に、幾分雪は憤慨した。カフェを出てからも、雪の文句は止まらない。

「あのインターンがそんなことするんですか?その人、先輩の手柄を引ったくるつもりじゃないです?!」

「それはそうかもね」「出たちゃっかり男ー!」



彼の語る”インターンが一緒の友達”の本性を、雪は見抜いて彼にそう言う。

有能な彼に取り入ろうとする人物の存在を、嫌というほど目にしてきたからだ。



しかし彼は涼しい顔をして、微かに微笑みながらこう言った。

「ま、しょうがないよ」



静かにそう口にする彼に、雪は笑って返す。

「えぇー先輩が‥」



淳はニッコリと笑いながら、雪の言葉にハテナマークを浮かべている。

「?」



そんな彼の笑顔を前にして、雪は言葉が続けられなくなった。

「い、いえ‥」と言って首を横に振りつつ、心の中で本音を漏らす。

この人が黙ってやられるワケないか‥ 「あ、そうだ!」



仄かに感じる彼の本性に目を瞑る雪の隣で、淳はあることに気がついて声を上げた。

持っていた鞄を開けると、そこに手を入れて何かを探し出す。

「ちょっとこれを見て欲しいんだ。会社出る前に貰ったんだけど‥。あれ、どこ行ったかな‥」

 

淳はそう言いながら、鞄を横に倒したまま少しその口を広げた。

すると中に入っていた書類がその重みで一斉に落ち、地面にバラバラと散らばる。



淳はすぐさましゃがみ、それらを拾おうとした。

「あ、」



「全部落としちゃった。ちょっと雪ちゃんに見せようと思ってた資料が‥」

 

散らばった書類。

しゃがみこんだ彼。

雪は目を見開きながら、何も考えずにその光景を目に映す。



そして無意識の中で、雪はそれに足を伸ばした。

スニーカーの裏で、書類の一枚を軽く蹴る。



「!」



その雪の行動に、今度は淳が目を見開いた。

キョトンとした顔をしながら、しゃがみ込んだまま彼女を見上げる。



しかし彼を見下ろす雪もまた、キョトンとした表情をしていた。

心の中に残った拭えない記憶が、無意識に彼女を操作し、彼を見下ろす‥。





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<拭えない記憶>でした。

まさかここであの書類キック事件が出てくるとは‥!

長い伏線、逆の構図‥。チートラの醍醐味ですね~^^


そしてカフェにて二人が頼んだ飲み物‥。





位置的に言って、そして次のコマの雪のカップを見ても、ブラックぽいのが雪で、カフェモカ(カプチーノ?)っぽいのが先輩‥。

結構甘党なのかな‥先輩‥。


次回は<一年半の月日>です。


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乗り越えたもの

2014-11-14 01:00:00 | 雪3年3部(ディナーショー第三幕)


彼の横顔を見つめていると、自然と笑顔になっていた。

雪は今、彼と共に授業を受けていることに喜びを感じている。

同じ授業っていえば‥



思い出すのは、半年前の春の一コマ。

俺一人かと思ってたんだ。一緒に頑張ろうな!



彼に対して、まだ猜疑心ばかりを抱いていた今年の春。

今までのことなど無かったかのように笑顔を浮かべ隣に座る彼に、雪はタジタジだった。

あの時は超テンパったけど‥



それももう、今は笑える思い出だ。そしてふと、雪は思う。

てか、私が居ること知った上で授業申請したんじゃないよね‥?こ‥怖‥



雪は若干身震いしながらも、脳裏に浮かぶ記憶をゆっくりと辿る。

好きな食べ物はなんですか?



彼との距離が、少しずつ縮まって行った初夏。

付き合い始めてからの、別々の班になってしまったグループワーク。



彼が普段使わない涙の絵文字を送って来た時のこと。

色々なことを愚痴りながら、一緒に教室まで歩いた秋の廊下‥。

とにかく‥今思い出してみると、色々楽しかったな‥。



しかし記憶は、そうでなかった時の思い出も数々引っ張り出してくる。

例えばまだ雪が二年の頃、図らずも彼と同じ班になったグループワーク‥。

君が持つB企業の資料の中で、グローバルマーケティング事例を種類別に選定出来ないかな?

そうしてくれると時間も短縮出来て助かるんだけど




その彼の一言で、あのグルワでの雪の担当箇所は広範囲に及んだのだ。

そして雪が出した文化祭案を、皆の前で却下された苦い場面も思い出す。



今改めて振り返ってみると、彼との関係が険悪だった去年の方が、今より授業が被っていたような気がする。

彼と顔を合わすことが嫌で仕方なかった、そんな記憶ばかりが浮かんで来る‥。



雪は今まであったことを一つ一つ思い出しながら、その数々の思い出になんだか胸がじんとした。

全部乗り越えて今に至るのね‥



よくやった自分、と雪は自分を労いながら、懐かしい思い出の数々に浸った。

こうしていられるのも、きっとあともう少し‥。



今隣に彼の存在を感じながら、雪は思った。

一学期、もっと一緒にいたら良かったのになぁ‥残念‥



そう思いながら彼の方へチラと視線を流すと、彼もこちらを見ていた。

なんだか困ったような笑みを浮かべながら。



ひっ、と雪が小さく息を飲むと、淳は小さな声でこう言った。

「集中、集中。勉強しような?」



彼の鉄壁の笑顔の前に、雪は再びペンを持ってノートを写し始める。

いつだってこうやって、彼の隣で雪は勉強を続けて来た‥。








暫くして淳の目に入って来たのは、ふわふわと揺れる雪の髪の毛だった。

改めて彼女の方を向くと、頭を大きく振りながら雪は眠りに入っている。

「あの子サムルノリしちゃってるw」



大きく頭を動かす伝統芸能サムルノリのように、雪は不思議な動きでコックリコックリしていた。

その姿に淳は暫し口をあんぐりと開けていたが、彼女の頭が前に大きく下がった拍子に、手の平で雪の頭を受け止める。

 

そのまま突っ伏して眠り始めた雪に、淳は自分が着ていたコートをブランケット代わりに掛けてやった。

雪はスゥスゥと健やかな寝息を立て始める。



淳は彼女の前にあるノートに手を伸ばした。



ビッシリと文字が並ぶノートは、徐々にミミズ文字になって途中で途切れていた。

淳はノートの横に転がっているシャープペンシルを手に取ると、そのミミズ文字の続きから板書を取り始める。








淳は寝ている雪の代わりに、黙々と授業を聞いてノートを写して行った。

サラサラ、と滑るようにペンは紙の上を走って行く。

 

隣で響く雪の寝息と、教授の声、そしてペンが文字を紡ぐ音を聞きながら、淳の意識は徐々に内に潜って行った。

記憶は先程の場面を、瞼の裏に映写させる。



あのどこか胡散臭い中年は、連れの男にこう言った。

彼氏って‥亮じゃねーのか?!



二人の男は、河村亮を探していた。

まず”亮の彼女”だという、赤山雪を探しながら。



淳の心が、ドス黒い靄で徐々に曇って行く。

その厳しい視線の先に、自分の世界を掻き回すあの幼馴染の姿が映る‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<乗り越えたもの>でした。

雪ちゃんが大きく頭を振りながら眠る場面に出てきた、サムルノリ‥。



もしや雪ちゃんは潜在的なサムルノリ奏者‥?!恐ろしい子‥!(久々)

そういえばこの時もこんな感じでしたね。笑



先輩が手の平で雪の頭を受け止めるこの場面は、



一部の映画の回を思い出しました~。本当に雪ちゃんはよく居眠りしてますね‥。






そして11月に入って2週連続アップされたチートラですが、

来週から休載に入るらしいです‥(T T)一ヶ月ですかね‥。

ゆっくりと休養されて、またパワーアップして帰って来ていただきたいですね^^

ブログは明日明後日と続きます~。


次回<拭えない記憶>です。


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共に授業を

2014-11-09 01:00:00 | 雪3年3部(ディナーショー第三幕)
「あーマジで遅れる!」



聡美を教室まで連れて行った後、雪は猛ダッシュで次の授業へと向かっていた。

しかし構内を走る途中、ふと通り掛かった建物が目に留まる。

 

思わずギクッと身体が強張った。すぐそこに音大があるのだ。

もしかしたら彼に出くわすかもしれない‥。

しかし雪は首を横に振りながら、彼がそこに居ないであろうことを思い出してホッとする。

そ、そうじゃん‥今日は店で仕事してるはず‥



雪は安心しながらも、だんだんと頭の中がこんがらがっていくような気がした。秋の構内で一人、頭を抱えて苦悶する。

もうどうすれば‥?!知らないよ!もしかしたら私の勘違い‥?じゃないんだって!!



何度打ち消しても、心に残った痕跡は消えない。

昨日彼を前にして感じたあの確信が、雪の心を騒がせる‥。







教室に向かって走る雪は、ふと建物の前に佇む男性の姿に目を留めた。

トレンチコートに身を包んだその男は、誰かのことを待っているらしく見える。



そして彼は、走ってくる彼女に気がついた。

淳はニッコリと微笑むと、雪に向かって声を掛ける。

「雪ちゃん!」



ジャーン、と効果音を口にする彼を見て、雪は目を丸くした。

へっ、と息を飲んだまま、その場で固まる。



始め雪は彼の姿が自分の錯覚かとも思ったが、じっと見ていても先輩の幻影は消えない。

彼はニコニコと笑顔を浮かべながら、自分に向かって手を振っていた。



雪は彼に駆け寄ると、それが実体なのかどうなのか確かめたくて彼に抱きついた。

すると彼の身体はしっかりとそこにあり、楽しそうに大きな声で笑っている。

「先輩?!!」



しかし雪はまだ彼がそこに居ることが信じられず、思わず何度も声を上げた。

「うわわわ!どうしたんですか?!えっ?!お化け?!」「違うよ~」



その大騒ぎに、道行く学生は皆二人に目を留め、そして今やレアキャラとなった淳を見て驚いた。

しかしそんな人目を気にすること無く、淳はニコニコしながら彼女を優しく抱き締める。



雪は暫し目を丸くしていたが、突然ハッと気づいて顔を上げ彼に問うた。淳は雪の頭を撫でながら穏やかに答える。

「どうしたんですか?!大学来て大丈夫なんですか?!」「うん、今日は取引先から直帰でいいって」



本当に?と尚も問う雪に、淳はニコニコしながら頷く。二人は会話を続けた。

「だから来ちゃった。嬉しい?」「そりゃもう!」「正社員は会社戻ったけどね」



彼の顔を見上げながら、雪は心が踊るのを感じた。思わずニへッと笑いながら、彼の服を掴んで軽く揺さぶる。

「うわ~どうしよ~!今日何しよっか?今日何しよっか?」

 

突然のデートに雪の心はわくわくと弾んだが、次の瞬間雪は顔を青くした。

ハッ!



雪は彼の袖を掴みながら、思わずオロオロする。

「あ‥!私今から授業行かなきゃだった‥!どうしよ‥」「ん?」



動揺する雪。二人のデートもこれまでかと思われた。

しかしそれを聞いた淳はニコニコしながら、動揺すること無く彼女と共に建物の中に入って行く。

そして教室に入った二人は、肩を並べて座ったのだった。

「俺だって学生なんだから、何の問題も無いよ~」「ははは‥」



そ、そっか‥と雪は内心思いつつ、幾分ドギマギしながらも彼と共に授業を受けることに決めた。

まぁ、何だっていっか。二人一緒なら。

ははははは ははははは







急遽授業デートへとそのプランの舵を切った二人であったが、そこは流石首席と次席。

二人はじっと教授の話に耳を傾けた。



雪は真面目にノートを取り、隣に座る先輩もそれを邪魔することなく静かに授業を聞いている。



しかし教室内は、ささやかなざわめきがところどころで起こっていた。

皆久しぶりに目にする青田淳の姿に驚き、通路を挟んだ席に座る後輩女子達は、彼を見てはヒソヒソと何か話している。



「わ、青田先輩だ‥」という彼女たちの声は、雪の耳にも届いていた。

雪はノートから顔を上げ、ふと隣に座る彼の横顔に視線を流す。



雪より彼女達に近い席に座る先輩が、その声に気づいていないわけがない。

しかし彼は彼女達の方を見ること無く、ただじっと前を向いていた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<共に授業を>でした。

二人ってば、構内なのに抱き合っちゃって‥!

しかしこの回だけ見るとすごく微笑ましいのですが、この少し前に淳は亮を探す社長と話したのに、

それを微塵も感じさせないですよね‥。何か不穏な成り行きを感じます‥どうなるディナーショー!!


次回は<乗り越えたもの>です。


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