携帯に夢中になっている福井太一の横で、伊吹聡美は彼にジットリとした視線を送っていた。
しかし太一は彼女の視線に一向に気がつかない。

聡美は何を見ているのかと太一に声を掛けたが、太一は聡美に見えないようにサッと携帯を隠した。
「どうして人の携帯見るんデスか」と言って。

聡美はそれが少々気に障り「何なの
」と言ってイラついたが、
太一は「俺センシティブですから止めて下サイ」と飄々と言ってのける。

雪はそんな二人のことを気にしながら見ていたが、不意に携帯が震えたのでそちらに目を落とした。
蓮からメールが届いている。
母さんが、今日は絶対早く帰って来て家で夕飯食べろって~

雪が携帯を見ている隣で、聡美は太一に向かってこう言った。
「え~何よ、見てもいいじゃん、あたしらの関係ならさぁ。
てかいつも見てんじゃん、何よ今更」と。

暫し太一はジッと聡美のことを見つめていたが、やがてポツリとこう言った。
「心して聞いて下サイ。携帯でも何でも、彼女以外には見せませんから。
人のプライバシーを侵害しないで下サイ。分かりました?」

いつになくそっけない太一。雪は目を丸くしながら彼の言葉を聞いていた。
聡美はというと、始めは口をあんぐりと開けていたが、次第に腹が立ち眉をひそめる。

焦れた聡美は、太一に向かってタックルをしながら彼に掴み掛かった。
「何言ってんのよ!思春期じゃあるまいし!」「人は変わる日が来るものデス」「笑わせんな!このっ!見せろっ!」

ドタバタと騒ぐ二人を見て、雪は一体この先どうなるのかと気になってソワソワした。
そろそろ次の授業に行かなければならない時刻なのだが‥。
すると太一は二人の方を向き、聡美と雪にこう尋ねる。
「あ、それはそうと二人はいつ俺の家遊びに来ます?
今日の夕飯はどうデスか?」

その太一の問いに、雪は申し訳なさそうに「あ、私今日は早く帰んなきゃ」と答えた。
太一は頷いてから、聡美の方を向く。
「じゃあ‥」

太一と目が合った聡美は、ビクッと小さく身体を強張らせた。
彼から目を逸らしながら、小さな声でこう答える。
「あ‥あたしは雪と一緒に‥」
「俺もそう言おうとしましたカラ。誰も一人で来いなんて言ってまセン」

姉ちゃん三人が気がかりな聡美がそう答えると、太一は聡美の方を見もしないでそう返した。
冷たい態度の太一に対し、聡美の額に青筋が浮かぶ。

聡美はプンプンと怒りながら、「分かったわよ、あたしが悪かったわよ」と謝るが、
太一はそっけなく「何がデスか」と答えるだけだ。
そんな二人の間で、雪は少々気まずそうに状況を見ている。

携帯から目を離さない太一に向かって、聡美は少し心配そうに声を掛ける。しかし太一は淡々とそれに答えるだけだ。
「てかアンタまたバイトすんの?」「はぁ。まぁ‥」
「ねぇ、どうしてバイトすんのよ。お小遣い貰ってんでしょ?ご両親は単位全部取れって言ってたんじゃ‥」
「それでもバイトはしなくちゃデス。学費全部親に背負わせるのは、ちょっと違うでショ」

太一のその言葉に、聡美はギクッとした表情で聞き返す。
「え‥?」

太一は思わず「ヤベ」と呟いた。
なぜなら聡美は、学費のみならず将来アパレル系の店舗まで父親から贈られる予定であって、バイトなど全くしていないのだ。
「まぁ‥そうだけど‥」「あ~‥まぁ、人それぞれですからネ!」

そう言葉を濁す太一と聡美の仲は、明らかにギクシャクした。
しかしこれに関しては雪も立場的に間に入るには気まずく、三人の間にはなんとも言えない空気が漂う。
「それじゃこれで」「えっどこ行くの?!」「バイトの面接デス」

そう言って太一は一人、教室のドアを出て行った。後ろ手に手を振りながら。
「履歴書書いてないけど大丈夫カナ~。それじゃバーイ!」

慌ただしく去って行く太一の背中を見ながら、二人は暫し呆然とその場に佇んだ。
雪はポカンとし、聡美は少々不満げだ。

いつまでも睨み続ける聡美に向かって、雪が恐る恐る声を掛ける。
「アンタ達どうなってんの‥」

聡美は「知らない」とそっけなく言い放った後、下を向いてこう言った。
「あれ以来、太一も特に何も言わなかったから、変わらず接してたけど‥。
あたしも‥まぁ、そんな感じで‥」

そう言ったきり、聡美は言葉を切って口を結んだ。宙ぶらりんな二人の関係に、徐々に変化が表れているのだ。
不満気な彼女の横顔に、そこはかとない寂しさが見え隠れする‥。

雪は彼女の心の奥底にあるそんな寂しさを思い、「教室まで一緒に行ってあげよっか?」と声を掛けた。
聡美は嬉しそうに雪に飛びつくと、「やっぱりあたしにはアンタだけよ~」と口にして笑う。

次の授業開始時刻が迫っているのは分かっていたが、雪はそのまま聡美と共に廊下を歩いた。
太一が居ない二人だけの空間は、やはりどこか寂しい感じがする‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<二人のギクシャク>でした。
福井家の夕食会は、水に流れたわけじゃ無かったんですね~!
聡美と太一がどうなっていくのか、二人の関係が気になります^^
最後の方の太一の台詞、直訳だと
「保険証ないけど大丈夫カナ~」

みたいです。韓国ではアルバイトをする際に健康保険証とは別に、保健所にて証明証がいるとか。
ここらは日本とは違うところですね~。
次回は<共に授業を>です。
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しかし太一は彼女の視線に一向に気がつかない。

聡美は何を見ているのかと太一に声を掛けたが、太一は聡美に見えないようにサッと携帯を隠した。
「どうして人の携帯見るんデスか」と言って。

聡美はそれが少々気に障り「何なの

太一は「俺センシティブですから止めて下サイ」と飄々と言ってのける。

雪はそんな二人のことを気にしながら見ていたが、不意に携帯が震えたのでそちらに目を落とした。
蓮からメールが届いている。
母さんが、今日は絶対早く帰って来て家で夕飯食べろって~

雪が携帯を見ている隣で、聡美は太一に向かってこう言った。
「え~何よ、見てもいいじゃん、あたしらの関係ならさぁ。
てかいつも見てんじゃん、何よ今更」と。

暫し太一はジッと聡美のことを見つめていたが、やがてポツリとこう言った。
「心して聞いて下サイ。携帯でも何でも、彼女以外には見せませんから。
人のプライバシーを侵害しないで下サイ。分かりました?」


いつになくそっけない太一。雪は目を丸くしながら彼の言葉を聞いていた。
聡美はというと、始めは口をあんぐりと開けていたが、次第に腹が立ち眉をひそめる。

焦れた聡美は、太一に向かってタックルをしながら彼に掴み掛かった。
「何言ってんのよ!思春期じゃあるまいし!」「人は変わる日が来るものデス」「笑わせんな!このっ!見せろっ!」

ドタバタと騒ぐ二人を見て、雪は一体この先どうなるのかと気になってソワソワした。
そろそろ次の授業に行かなければならない時刻なのだが‥。
すると太一は二人の方を向き、聡美と雪にこう尋ねる。
「あ、それはそうと二人はいつ俺の家遊びに来ます?
今日の夕飯はどうデスか?」

その太一の問いに、雪は申し訳なさそうに「あ、私今日は早く帰んなきゃ」と答えた。
太一は頷いてから、聡美の方を向く。
「じゃあ‥」

太一と目が合った聡美は、ビクッと小さく身体を強張らせた。
彼から目を逸らしながら、小さな声でこう答える。
「あ‥あたしは雪と一緒に‥」
「俺もそう言おうとしましたカラ。誰も一人で来いなんて言ってまセン」

姉ちゃん三人が気がかりな聡美がそう答えると、太一は聡美の方を見もしないでそう返した。
冷たい態度の太一に対し、聡美の額に青筋が浮かぶ。

聡美はプンプンと怒りながら、「分かったわよ、あたしが悪かったわよ」と謝るが、
太一はそっけなく「何がデスか」と答えるだけだ。
そんな二人の間で、雪は少々気まずそうに状況を見ている。

携帯から目を離さない太一に向かって、聡美は少し心配そうに声を掛ける。しかし太一は淡々とそれに答えるだけだ。
「てかアンタまたバイトすんの?」「はぁ。まぁ‥」
「ねぇ、どうしてバイトすんのよ。お小遣い貰ってんでしょ?ご両親は単位全部取れって言ってたんじゃ‥」
「それでもバイトはしなくちゃデス。学費全部親に背負わせるのは、ちょっと違うでショ」

太一のその言葉に、聡美はギクッとした表情で聞き返す。
「え‥?」


太一は思わず「ヤベ」と呟いた。
なぜなら聡美は、学費のみならず将来アパレル系の店舗まで父親から贈られる予定であって、バイトなど全くしていないのだ。
「まぁ‥そうだけど‥」「あ~‥まぁ、人それぞれですからネ!」

そう言葉を濁す太一と聡美の仲は、明らかにギクシャクした。
しかしこれに関しては雪も立場的に間に入るには気まずく、三人の間にはなんとも言えない空気が漂う。
「それじゃこれで」「えっどこ行くの?!」「バイトの面接デス」

そう言って太一は一人、教室のドアを出て行った。後ろ手に手を振りながら。
「履歴書書いてないけど大丈夫カナ~。それじゃバーイ!」

慌ただしく去って行く太一の背中を見ながら、二人は暫し呆然とその場に佇んだ。
雪はポカンとし、聡美は少々不満げだ。


いつまでも睨み続ける聡美に向かって、雪が恐る恐る声を掛ける。
「アンタ達どうなってんの‥」

聡美は「知らない」とそっけなく言い放った後、下を向いてこう言った。
「あれ以来、太一も特に何も言わなかったから、変わらず接してたけど‥。
あたしも‥まぁ、そんな感じで‥」

そう言ったきり、聡美は言葉を切って口を結んだ。宙ぶらりんな二人の関係に、徐々に変化が表れているのだ。
不満気な彼女の横顔に、そこはかとない寂しさが見え隠れする‥。

雪は彼女の心の奥底にあるそんな寂しさを思い、「教室まで一緒に行ってあげよっか?」と声を掛けた。
聡美は嬉しそうに雪に飛びつくと、「やっぱりあたしにはアンタだけよ~」と口にして笑う。

次の授業開始時刻が迫っているのは分かっていたが、雪はそのまま聡美と共に廊下を歩いた。
太一が居ない二人だけの空間は、やはりどこか寂しい感じがする‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<二人のギクシャク>でした。
福井家の夕食会は、水に流れたわけじゃ無かったんですね~!
聡美と太一がどうなっていくのか、二人の関係が気になります^^
最後の方の太一の台詞、直訳だと
「保険証ないけど大丈夫カナ~」

みたいです。韓国ではアルバイトをする際に健康保険証とは別に、保健所にて証明証がいるとか。
ここらは日本とは違うところですね~。
次回は<共に授業を>です。
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