「その結果どうなる」9月10日
『国、小中「未了者」把握へ 夜間中学設置指標に』という見出しの記事が掲載されました。『今年、開始から100年の節目を迎える「国勢調査」で、小中学校を卒業していない「義務教育未修了者」が調査対象となる』ことに関して報じる記事です。
中学校夜間学級、いわゆる夜間中学は、あくまでも義務教育の中学校なのですから、中学校を卒業していない者、つまり義務教育を修了していない者が入学の対象者となります。この条件に該当する者がどのくらいいるのか、実態を把握することなしに設置計画を立てることはできないはずです。しかし、今までそうした調査が全国的に行われてこなかったため、本来夜間中学に通う資格があるにもかかわらず、夜間中学が地域に設置されておらず、学ぶ機会を奪われている人が相当数いるのではないか、と問題になっていたのです。
今回の国勢調査の改善により、そうした事態が解消されることになるため、関係者はこの措置を歓迎しているとのことです。私もその一人です。ただ、今回の措置により生じるもう一つの現象にも留意する必要があります。
私は教委勤務時代に、夜間中学の担当をしていたことがあります。そのときに直面したのが、入学資格の問題でした。記事にも『中国在留邦人の家族や日系南米人ら「ニューカマー(新渡日)」が増えたこと』とあるように、海外から日本にやってきて日本語の読み書きがほとんど出来ない人たちが、授業料のかからない日本語学校として、夜間中学への入学を希望して教委を訪れるのです。
彼らがそれまでの居住国で、中学校相当の学校を卒業している場合、我が国における義務教育を修了しているとみなされ、夜間中学への入学は認められません。そのことを知っている者の多くは夜間中学への入学を諦めますが、一部の強かな者は、私は小学校しか出ていない、中学校に進んだが家が貧しく中退したという趣旨の「虚偽」の申し立てをするのです。そのことを証明する公的文書の提出を求めても、出来ない、難しい、とても時間がかかるなどと言い立て提出を拒みます。教育という現場なので性善説にたち、入学を認めても、彼らにとって中学校の学習など退屈(大学を卒業している者もいる)で、まともに受けようという気持ちはありません。ただ、日本語の勉強だけにやってくるのです。
まだ、日本国内に確固たる生活基盤が確立されていない者にとっては、月に数万円の日本語教室の授業料は大きな負担です。一方で、公立の夜間中学はほとんどただなのですから、生きるために何とかして夜間中学に入ろうとする心情は理解できますが、それは違法行為なのです。
私はそうした現状から、このブログで夜間中学には問題が多いと指摘してきました。冒頭に述べたとおり、今回の措置が、夜間中学には義務教育未修了者のみが通うという本来の中学校の姿に戻る一歩になるのであれば歓迎ですが、それは同時に、今まで見て見ぬふりをしてきた高学歴のニューカマーの入学を阻止することも意味するはずです(そうでなければ調査の意義が半減)。
高学歴(中卒以上)のニューカマーの日本語教育をどの機関が担っていくのか、その点を明確にしていく必要性を忘れてはなりません。教育の場に違法状態が継続することは相応しくありません。