これは由紀子が一年生になったのをきっかけに
お世話になった方たちに郵送していた新聞です。
それを日記風にアップしました。
もともとの新聞としてPDFで見ることもできます。
2003年8月16日発行
ゆきちゃん通信No19
☆ 新しい学校☆
ゆきこが転校したのは長崎の西町小学校です。
住宅街の中にある静かな学校です。
担任の先生は5組(特殊学級)がK村先生、3組がS木先生、
共に男の先生です。
新しい環境で不安定な由紀子をどう受け入れたら
安定できるか二人の先生がたくさん話し合いを重ねて
工夫をしてくださいました。
突然パニックを起こす由紀子に戸惑う事も多かったと思いますが、
その度にどうしてパニックを起こしたのかを私に確認をとりながら
一つ一つ対応を考えてくださいました。
そんな先生方の姿は子ども達にもどんどん反映して、
初めの頃は由紀子の独特の世界に戸惑っていた子ども達も
いつの間にか接し方を学習して
由紀子を包み込んでしまいました。
由紀子の方も初めの頃は爪から血が出るほど噛んで
不安を紛らわせていましたが、
1学期が終る頃には学校の中にしっかり居場所を見つけて
以前のように笑顔で過ごせるようになりました。
ある日S木先生が
「みんなは由紀ちゃんをかわいいと言うけれど、
それは妹のような感覚でかわいいのか?」
と言う質問をクラスの子ども達にすると、
みんなは当たり前のように
「友達としてかわいい」
と、答えたと言います。
「バリアフリー」・・・その本当の意味を子ども達
に教えてもらったような気がして、
転校先にこの学校を選んで本当によかったと心から思いました。
教材を変えてもらって家庭科の授業にも参加しています。
☆ 性教育☆
早いもので由紀子も10歳になりました。
障害のせいで行動が幼い為
ついつい小さな子どものような扱いをしてしまいがちですが、
最近、思春期特有の不安定さが目立つようになりました。
身体の変化も近いかもしれません。
由紀子にその変化をどのように教えたらいいのか・・・
それが、この1年ほど私の最大の悩みでした。
いろいろな講習会に参加をしたり、
相談をしたり、私なりに努力をしてきましたが、
なかなか糸口がつかめずにいました。
でも、転勤を期に由紀子の主治医の先生が
性教育をしてくださる先生を紹介してくださいました。
現在は月に1度のペースでゆっくりと性について勉強をしています。
今はプライベートゾーンについて・・
人の身体には他人に見せてはいけない部分があるという事を
繰り返し、繰り返し教えてもらっています。
普通なら5年生になれば
自然と着替えの時に他人に裸を見られないように工夫するのですが、
由紀子のような障害を持つ子は回りに人が教えなければ
羞恥心はなかなか育たないようです。
学習を始めて2ヶ月おかげさまでお風呂上りは
脱衣所でパジャマを着なければ居間に出てこなくなりました。
たまに私がのぞきに行くと胸を隠して
「見ないで!だめよ!」
と独特のアクセントで言います。
まだぺっちゃんこの胸ですが、大切な場所です。O(*^▽^*)o
まだ、本当の意味が解った訳ではないでしょうが、
ゆっくりと自分の身体を大切にする事を
解ってほしいとねがっています。
写真は医学自習用の赤ちゃんのお人形を抱かせてもらって
愛しそうな由紀子です。
自 傷 行 為
4年生になった頃からでしょうか、
由紀子の生活の様子がだんだん変わってきました。
音に対する過敏さがひどくなったり、
内面から沸き上がって来るようなイライラで急に泣き出したり、
自分で感情のコントロールをするのが難しくなって来たようです。
そして、5年生になった今
ストレスを感じると自分の拳で頭をガンガン叩くようになりました。
自傷行為の始まりでした。
自閉症の人には自傷行為をする人が多い事は知識としてありました。
でも、まさか由紀子が
そうなるとは思っていなかったのでショックでした。
由紀子本人が一番辛い事は解っていますが、
そばで見ている家族もその光景を見るのは
とても辛くて悲しいものです。
腕をつかんで止めさせても抱きしめてやっても
その場しのぎで根本的な解決方法ではありませんでした。
そこで、主治医の先生に相談をして
生活そのものから見直す事になりました。
写真を使って1日のスケジュール表を作って
生活のパターン化を図ったり、
必要以上にテレビをつけないようにしたり、
寝入りばなに一人でいると不安定になりやすい事が解ると
添い寝をして気持ちを安定させるようにしました。
添い寝については正直、
せっかく自立させたのに・・・という思いもありましたが、
先生の
「今は自立よりも自傷を起こさない事の方が大事。
後退したものはまた取り戻せるから・・・」
という言葉で今は自傷と向き合っていこうと気持ちを決めました。
その家族の協力と努力のおかげで
外因性のストレスからの自傷はずいぶん少なくなりました。
でも、まだ内面から起こるイライラからの自傷は続いています。
これは由紀子が成長をして自分でコントロールできるように
ならなければ治まらないのかもしれません。
だんだん変わっていく由紀子の自閉症を前にして、
由紀子が抱えている障害はこんなにも
辛くて生活しにくいものだったのかと
今さらながら思い知らされたような気がしている母です。
編集後記
転勤をして長崎に来てから
懐かしい人たちにたくさん会う事ができました。
療育センターでお世話になった先生方、
一緒に療育をがんばったお母さんたち、
そして、毎年キャンプでお世話になっているボランティアの皆さん・・・
もう何年も会っていない方もたくさんいたのに
皆さん時間を感じる事なく声をかけてくださいました。
それは間違いなくこの通信のおかげでした。
いろいろな所でお世話になった皆さんに
いつまでも由紀子の事を覚えていてほしいと思って
発行を続けてきたこの通信でした。
そんな私の思いが皆さんに伝わっていた事に
感激しています。
今度は福江でお世話になった皆さんに向けても
この通信を発行して行かなければ・・・
そう思っています。
でも、そのわりには発行が遅いではないか・・
と、お叱りを受けそうですが、
これからもがんばって発行をしたいと思っておりますので
どうぞお許しを・・・(笑)
tomi
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