救急車騒動(その4終わり)
この時の整形外科医は口をそろえて「上手く縫えたなー」なんて自画自賛していたけれど、
後で抜糸した後を見て気落ちした。
なんと、小学生が家庭科で雑巾を縫ったような針の跡だったのですから。
それでも、「ようやく人並みの顔になれた」なんて軽口は叩いていたのでしたが。
いやもう顔の状態は本当にひどかった。
最初は自力で動くことも出来ず、若い看護婦に「俺って本当は良い男なんだぞ」なんて、
軽口を叩いていたのだったが、自力で動けるようになってトイレに行き、鏡を初めてみて驚いた。
そこには「フランケンシュタイン」のような男が居たのだから。
同級生が見舞いに来たけれど、顔を見て後ずさりさえしたものだった。
そうそう、医療関係の職場で働いている娘も心配して病院に駆けつけたのだったが、
私の顔を見て貧血を起こし、一晩ベッドで寝て帰りましたから。
でも、今でもその時のことを言うと「冗談で済まされないよ、そんな事故で頚損、脊損になり身体が動かなくなったり、
死んでしまった人もいるのだからね」なんて言われてしまう。
娘は作業療法士で事故に遭われた方の復帰訓練のお手伝いをしているのですから真実味十分の言葉です。
こんな風に本当に交通事故や転落事故で頚損、脊損の重傷を負い半身不随などと言う例も少なくはない。
運の一言では言い切れないでしょうが、私はこの事故では幸運だったと言うしかない。
皆さまも事故には十分に気を付けましょう。
なお、私の顔には額部分、鼻の下などに傷跡の痕跡が残っている。
不良成年ではあったけれども、喧嘩出入りでの向こう傷では有りませんからご安心を。
(終わり)