はちみつと青い花 No.2

飛び去っていく毎日の記録。

『小説8050』林真理子著

2021年05月27日 | 

2021/05/27

 

『小説8050』は林真理子さんの、ひきこもりがテーマの小説。

週刊新潮に連載中から反響が大きかったそうです。

8050とは、引きこもりの長期高齢化によって80代の親が50代になった子どもを支えること。

 
  

この小説では、8050とあるけれど、50代の親が20代の息子と対峙する設定にしてあります。実際にあった農水省事務次官の事件を基にしている部分が多いようです。

再生の物語ではあるけれど、前半の重苦しさが尾を引いてしまいました。

読みながら、どうしてひきこもりになるのだろう、なぜ親はこういう対応をするのか、という疑問がずっと渦巻いていました。

小説の最初のほうに、専門家の言葉として、ひきこもりは「親の過剰な期待と会話のなさ」が原因だと書いてあります。この小説では中学時代のいじめにより、主人公の翔太は引きこもりになります。

いじめで子どもがひきこもりになることがあるだろうけれど、ならない家もある。その違いはどこに?と思うのです。

ひきこもりについて書かれた文章、これは私の覚書として記録しておいたもので、出典が何であったか記録してないのですが、ここに引用させていただきます。

・・・・・

「ひきこもる人たちに共通するのは、まじめで優しく遠慮深いタイプの人が多く、社会でハラスメントやいじめ、暴力などに遭って傷つけられ、安心できる居場所である自宅などに退避せざるを得なくなっている点だ。ひきこもらざるを得なかった人の多くは、社会が安心できず、外の人間関係に恐怖を感じている。

「8050問題」というのは、80代の親が収入のない50代の子の生活を支えて行き詰まりながら、それでも助けを求めようとしない問題だ。親はひきこもる子の存在を世間体を気にして隠し、子の側も親から隠される存在であることを感じて、動けなくなるのが特徴だ。だから、地域で親子の姿が見えなくなり、家族全体が孤立している。

まず周囲の家族が意識を変えて、自分の人生を楽しんで幸せそうになると、子も「自分のせいで、親の期待に応えられずに申し訳ない」と思っていた呪縛から解放され、ホッとできる。

・・・・・

ひきこもる子どもには精神疾患がある場合もあり、一口でいえるほど簡単なことではなさそうです。親と子が軽口をたたけるようになる、冗談を言い合えるようになる、ということが、親子関係の修復の目安となるというのを、精神科医・斎藤環氏の本で読んだことがあります。

親の気持ちが外に向かって開かれている、明るい気持ちを持っている、ということが子どもにとっては救いになるのでしょうね。

林真理子さんは「ルンルンを買っておうちに帰ろう」の頃から好きでよく読んでいました。軽いエッセイや、若い女性の恋愛や仕事の物語が好きでした。『白蓮れんれん』の頃から、この人は書ける人なんだなあと感じたのです。

『下流の宴』を読んで以来、久しぶりの林真理子さんですが、熟練した職人芸のような感じを受けました。深遠な思想とか、そういうものではないけれど、話や人物像を組み立てるのが上手で、会話がうまく、どんどん読めてしまいました。

 

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