2020/04/28
生物学者の福岡伸一さんのウィルスについての話が興味深い。
朝日DIGITALで書いています。引用させていただきます。
https://www.asahi.com/articles/ASN433CSLN3VUCVL033.html
ウィルスは生物と無生物の間の存在。
生命を「自己複製を唯一無二の目的とするシステムである」と利己的遺伝子論的に定義すれば、自らのコピーを増やし続けるウイルスは、とりもなおさず生命体と呼べるだろう。
しかし、代謝も呼吸も自己破壊もないウイルスは生物とは呼べないことになる。
ウイルスの振る舞いをよく見ると、ウイルスは自己複製だけしている利己的な存在ではない。むしろウイルスは利他的な存在である。
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え、人に迷惑ばかりかけているウィルスが利他的な存在?
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ウイルス表面のたんぱく質が、細胞側にある血圧の調整に関わるたんぱく質と強力に結合する。これは偶然にも思えるが、ウイルスたんぱく質と宿主たんぱく質とにはもともと友だち関係があったとも解釈できる。
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ウィルスと友だち関係?
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さらに細胞膜に存在する宿主のたんぱく質分解酵素が、ウイルスたんぱく質に近づいてきて、これを特別な位置で切断する。するとその断端が指先のようにするすると伸びて、ウイルスの殻と宿主の細胞膜とを巧みにたぐりよせて融合させ、ウイルスの内部の遺伝物質を細胞内に注入する。
かくしてウイルスは宿主の細胞内に感染するわけだが、それは宿主側が極めて積極的に、ウイルスを招き入れているとさえいえる挙動をした結果である。
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宿主側…つまり人間が積極的に、ウイルスを招き入れている?
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進化の結果、高等生物が登場したあと、はじめてウイルスは現れた。高等生物の遺伝子の一部が、外部に飛び出したものとして。つまり、ウイルスはもともと私たちのものだった。
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ウィルスはもともと私たちのものだった。
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家出し、また、どこかから流れてきた家出人を宿主は優しく迎え入れているのだ。なぜそんなことをするのか。
それはおそらくウイルスこそが進化を加速してくれるからだ。
親から子に遺伝する情報は垂直方向にしか伝わらない。しかしウイルスのような存在があれば、情報は水平方向に、場合によっては種を超えてさえ伝達しうる。
それゆえにウイルスという存在が進化のプロセスで温存されたのだ。
遺伝情報の水平移動は生命系全体の利他的なツールとして、情報の交換と包摂に役立っていった。
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つまり親から子に遺伝でしか伝わらない情報をウィルスは水平方向、別の誰かに伝達していた。
でも、だからといって、ウィルスをお友だちとして受け入れようという気には全くならない。危険すぎるもの。
ウィルスと折り合いをつけながら、人類はこれからも生きていくということになるのかな。