ひまわりの種

毎日の診療や暮しの中で感じたことを、思いつくまま書いていきます。
不定期更新、ご容赦下さい。

宿題がひとつ、終わった

2012年02月21日 | 日々のつぶやき
ある小児科関連の雑誌に投稿依頼の原稿があったのだけど、先日、やっとできた。
4月発行で、震災の特集なのだそうだ。
そして、わたしに依頼されたのは、福島県での被ばくの影響に関すること、だった。
放射線医学の専門家ではないわたしに書けることって、なんだろう?
どう書けばいい?
学会誌ではないから気楽に思うことを書けばいい、と思いつつも、ずっと逡巡していた。
だって、その特集号のわたしの記事のひとつ前には、あの方の文章も掲載予定なのだ。
単身ロシアに渡り、多くの甲状腺がんのお子さんの手術を手がけ、現地の医師を指導してきた、
あの首長さんだ。
その方の論文と、わたしの駄文が、並んで掲載される。
どうしよう・・・、と思った。
引き受けてから、やっぱり原稿依頼を断ろうか、とも思った。
でも、やっぱり、断ってはいけない、と思い直した。
原稿用紙20枚以内。
その雑誌を手にするであろう全国の小児科の先生方に、
福島県の小児科医としてお伝えしたいことは、ただひとつ。
「福島県の子どもたちに放射線被ばくによる健康被害の可能性は極めて低い」
ということ。
でも、そのことを説明するための根拠や、
わたしたち地元の小児科医が毎日接するお子さんや親御さんが、
これまでの11ヶ月余り、どのような思いで過ごしてきたのか、
困ったことは何か、ありがたかったことは何か、これからどうすべきか、
記しておきたいことは、山ほどあった。
焦点をしぼって、20枚以内にまとめるのが大変だった。

その首長さんの論文の内容は、押して知るべし。
その地の広報でも、御著書でも、講演会でも、おっしゃっていることだ。
「福島県の中通り地域もチェルノブイリの避難指定と同等の汚染があるのだから、
 子どもの将来のためには一時的に避難・疎開が必要であり、行政はそれを支援すべき」
という内容だと想像する。説得力もあるだろう。
わたしの書いた内容は、それとは正反対のものだ。
(いや、行政の支援は必要と思ってます。)
できあがった原稿は、やっぱり舌足らずの感がある。
経歴ひとつとっても、わたしの書いたものが信用されるかは、怪しい。
たくさん、批判されるかも知れない。

でも、いいんだ。
地元で暮らす者が、地元の方々の状況を正直に伝えて、何が悪い。


3月にも、頼まれている講演がある。
いずれそれも、文章にしなくちゃならないらしい。

あぁぁ・・・。
若い頃に、もっと論文の書き方、勉強しとくんだったな・・・。
論文などではない原稿ひとつに、四苦八苦してるんだもんなぁ・・・。

今日届いたばかりの地元の医大小児科の同門会誌に、
「恩師のこと」のエントリーの先生のエッセイが載っていた。
そのエッセイの最後のほうで、「若い先生方へ」というのがあって、
学会などで口演したものは速やかに文章にすることを忘れてはなりません、
それは共同研究者にも失礼にあたるものです、という内容の文章があった。
そこには書かれていなかったけれど、かつて教授はこうもおっしゃっておられた。
症例報告をしたのなら、それを文章にして残さなければ、その患者さんにも失礼なのです、と。
わたしはもはや「若い先生」ではないのだけれど、
今更ながら、その意味を身にしみて感じる。

あぁぁ・・・。
医局時代に、ちゃんと教えを守ってりゃよかったな・・・。


 _____________________________________

 ところで、ちょっと、誤解を招くといけないかな、って後で思ったので・・・。
 前のエントリーのわたしのコメントの、みいさんへの返信で、
 大学受験の物理がからきしできなくて、生物で受験したと書きました。
 あくまでもわたしのアタマの問題でして、まして大学受験レベルのことです。
 一般的に物理学と生物学とを比較してどうの、という意味ではありませんので、
 読んだ方々は誤解のないようお願いいたします。m(_ _)m

 その物理・・・。
 ここ数年、ほとんど見なくなってたのに、つい先日、物理の模試で0点取った夢を見た。
 たぶん、放射線とは? なんてことばっかり毎日考えてるからだ・・。