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月夜の島渡り 恒川光太郎

純粋なホラー小説を読むのは久し振りだなぁと思いながら読んだ。論理的な結論よりも展開の面白さを重視するようなホラー的なミステリーとか、主として心理的な恐怖を呼び起こすサスペンスなどと違って、純粋なホラーというのは、不思議な世界を描写する文章の力が他のジャンルよりも大切なのだということが本書を読むと良く判る。奇を衒わない何気ない静かな文章から立ちのぼる不思議な恐怖、ぞわぞわするような感覚は、まさに一級品の風格だ。本書に収められた短編は全て沖縄を舞台にしているが、私自身、何故か沖縄に漠然とした憧れや郷愁のようなものを感じてしまうところがあり、どうしても沖縄に関する話を読むと、自分の世界に引き入れすぎてしまうことが多い。その点は、良くも悪くくも作者の意図以上に思い入れを持って読んでしまった気がする。(「月夜の島渡り」 恒川光太郎、角川ホラー文庫)

このブログを始めてから最長のブランクとなりましたが、再開します。老人ホームで療養中だった実父が、1月下旬に入院・急変・死去し、その後も通夜・葬式と続き、その間全く本を読みませんでした。自分ではどんな時でも少しの時間を見つけて読書するような習慣がついていると思っていましたが、どうしても本を読めない心境の時もあるのだと思い知りました。まだ気持ち的には少しバタバタしていますが、徐々に日常を取り戻していこうと思います。

 

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