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鹿の王(上・下) 上橋菜穂子
著者の本は、「守り人」シリーズ、「獣の奏者」とずっと楽しみにしていた。今度はどのような世界観を見せてくれるのか、大いに期待して読んだ。読んだ感想は、これまでの作品とは「かなり違うなぁ」ということだ。こうしたファンタジーの世界を描く小説では、現実と非現実の対比が大きな鍵になる。読んでいて、全く現実と比べられないところもあれば、「これは現実で言うとあれだな」と思い当たることもある。この対比がどの程度できるかがこうした小説を特徴づける。本書の場合は、ほとんど全ての要素が現実との対比が可能な気がする。そのあたりは好みもあるし、良し悪しではないのだが、あまり現実との対比が整い過ぎていると、何のためにファンタジー小説として新しい世界観を作りだしているのかが判らなくなってしまう気がする。医学的なテーマを扱っているために、正確性を重視しすぎたのだろうか、これまでの作品に比べて発想の自由さが少ない、読んでいて少し窮屈な感じがした。作家自身にはそうした自覚はあまりないのかも知れないが、読み手としては、そこのところを敏感に感じてしまう。(「鹿の王(上・下)」 上橋菜穂子、角川書店)
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