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人体 NHKスペシャル取材班

映像技術の進歩とそれによって触発された人体に関する生化学の進歩を分かりやすく教えてくれる解説書。読んでいて新しい知見に驚きの連続だった。本書は、エピジェネティックス、バイオイメージングという2つの言葉に要約されるだろう。エピジェネティックスとは、生物が環境によって遺伝子で決定されたものとは違うものに変化していくという細胞レベルでの柔軟性のことで、最近そうした発見が相次いでいるという。いわば「獲得形質は遺伝しない」というこれまでの常識のアンチテーゼだ。もう1つのバイオイメージングとは、映像技術の進歩によって生物を細胞レベル分・レベルで観察・記録できるようになったこと、すなわち細胞社会の可視化だ。これにより、直接新しい発見があったと同時に、研究者達に対して目標の可視化を通じたモチベーション向上をもたらしたという。この2つにより、生物というものを細胞レベルで見た場合、これまでの常識とは全く次元の違う柔軟性を持って絶えず自分自身を変化させていることが明らかになってきているらしい。TV番組の製作者らしい視点・矜持だが、それが科学の進歩に大きな貢献をもたらしているであろうことが読者に伝わり、感銘を覚える。本書には図版が一枚もないので、とにかくその番組を見たくなる一冊だ。(「人体」 NHKスペシャル取材班、角川文庫)

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