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恋文の技術 森見登美彦

「有頂天家族」のハチャメチャさも「夜は短し…」の超ご都合主義もないが、何ともいえない傑作小説だ。読んでいて吹き出すほど面白い上にほのぼのと温かい。描かれているのは「夜は短し…」と同じ世界、すなわち「阿呆な男子」と「賢い女子」の世界の住人達だ。日本においていつ定着したのか知らないが、男子が何となく「男らしさ」「日本男子」という言葉の持つ雰囲気に縛られてきた社会と対極にある世界。というか初めから全然負けてるという感じの世界。ちゃんと考えれば、大昔から今に至るまで世界はこうだったと確信させられる。これまでのそうでない世界の話など皆どこかで無駄な強がりをしていただけなだと思えてくる。先日読んだ「できそこないの男たち」を読むまでもなくそういうことだったのだ。どう考えたって女性のほうがしっかりしているし賢いし強いのは、周りをみれば火を見るよりも明らかだし、そういう心境に共感する私としては本書にも共感せざるを得ない。本書のこうした部分は本書の核心ではなく当たり前の大前提となっている。そこにも共感してしまう。桜庭一樹のファンに中年男性が多いというのも同じ流れではないか。なお、本書のカバーのデザインは素晴らしい。本の内容を知った上で改めて眺めてみると、その素晴らしさが心に響く。(「恋文の技術」森見登美彦、ポプラ社)
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