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ミャンマー現代短編集1 南田みどり訳

先日のベトナムに続いてミャンマーの短編集を読んでみた。ミャンマーの小説を読むのは初めてだ。巻末に、ミャンマー独特の単語等に対する(注)が15ページ、さらにミャンマーの文学シーンの解説が30ページと充実していて、大変有り難い。解説では、ミャンマーで短編小説が盛んに書かれている理由などが書かれていて、興味深かった。言論の自由が完全とはいえないミャンマーでは、長編小説を一生懸命書いても発刊禁止になるリスクがあるので、作家が、公表できなくても痛手の小さい短編を好んで書くようになったということらしい。しかも長編小説の場合、どうしても社会主義革命を賛美するような内容を求められるので、そうしたことに嫌気がさしてしまったという事情もあるそうだ。そのような作家たちが短編に込めた思いを知ったうえで本書を読むと、少し悲しくなる。また、ベトナムの短編にはからっとしたどちらかというと明るい作品が多かったように感じたが、それと比較すると、ミャンマーの方は、一人称に徹した作品が多いせいか、やや難解な作品、ペシミスティックな作品が多く、作品の視点をしっかり把握するまでに時間がかかり、読んだ短編のうち何篇かは、十分にそれを把握できないまま作品が終わってしまった。ミャンマーの場合、政治や社会についてなかなか触れられないことが、自分の身の回りのことや自分の感情を執拗に表現する内省的な作品を多く生むことに繋がっているのだと思われる。但し、この短編集の作品も巻末の解説も15年以上前のものなので、今現在がどうなっているのか、少しは改善しているのか、そのあたりはよく判らない(「ミャンマー現代短編集(1)」 南田みどり訳、大同生命国際文化基金)

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