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ミツバチはなぜ大量死したのか ローワン・ジェイコブセン

最近いろいろ耳にするようになった「ミツバチの減少」について知る上で、現時点での必読書ということで読んでみた。数年前から進化したダニによる「ミツバチの大量死」という困難に見舞われていた養蜂産業が、さらに最近、別の要因と思われる謎の大量死に直面しているという。この「別の要因とは何か?」という大きな自然界のミステリーには、実に多くの容疑者が登場する。「ウイルス」「地球温暖化」「携帯電話が発する電磁波」「遺伝子組み換えの作物」などなどだ。そして最後に登場するもっとも疑わしい容疑者の「イミダクロプリド」という農薬。容疑者を1人1人分析していく過程は、多くの事例を積み上げていくスタイルで進むため、文系の人間にも容易について行ける。本書の途中で「ミツバチ」の集団としての生活様式がミツバチの目線で記述されている箇所がある。この部分の記述が、後の方の犯人の特定を行う段階で、非常に重要な知識であったことに気づく。そのあたりの構成は実に見事である。さらに多くの事例をあげながらの論功の結果行き着く驚くような結末。おそらく、この本が書かれてからさらにそのあたりの研究は日進月歩で進んでいるのだろうが、問題の所在を知るためという意味では、これからも読まれていく決定版のような本だろうと思われる。本書では、半分くらいのところで、犯人らしきものが判るのだが、そこからがまた考えさせられる。犯人が判っても、それをどうするかという対策がないからだ。今後の人間と自然の関わり方を深く考えさせられる。(「ミツバチはなぜ大量死したのか」ローワン・ジェイコブセン、文芸春秋社)
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