建築・環境計画研究室
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学生のみなさんは,そろそろ期末レポートラッシュの時期でしょうか。
読書感想文にもレポートにも,小論文にも共通するコツですが,書き始める前にネタ(書きたい項目)と文章の「設計図」をわっと展開することをおすすめします。
本人だけがわかる,その時だけわかるメモでOK。
ネタを書き出し、ネタの相互関係をつないでストーリーをつくる。
例えばこれ,先日書いた原稿の設計図です。
んー,3週間ほど前のメモなのですが,もうすでに,読み方を自分でも忘れかけてます‥
でもその程度でOK,そのことを考えているときに,ネタ出しをして,思考の密度を上げて,それからネタ同士の関係を整理して順番をつける=ストーリーをつくることが目的のメモです。
羅列ではなく,論旨構成(論の展開)がしっかりした,説得力のある文章にしたいときにはやっぱり設計図が大事です。(設計図がちゃんとしてないと現場で施工する時に困るんですよね)
通常のレポート(小論文)は,「背景,目的,方法,結果,考察,提言」が骨格ですが,そういうガイドのないレポートや原稿の場合はぜひどうぞ。
最初のうち,関連づけとか発展がイメージしにくかったら。
1.付箋にネタ(書きたいコンテンツ)を書いて、連想ゲームでキーワードを増やす。セルフ・ブレインストーミング。
2.キーワードを出したあとで,その付箋を並べ替えてネタを相互に関係づけつつ,かたまりをつくる
3.かたまりをどの順番で並べたら,説明しやすいかな? を考えて順番をふる=ストーリーにしていく
のがやりやすいかと。
ちなみにレポート,原稿などの文章を作るだけではなくて,ディスカッションでも設計図をつくっています。自分が司会をするときには。
ぶっつけの方もいらっしゃるのでしょうけども,自分は「設計図」を書きます,展開のイメージメモです。
パネリストを立てての公開研究会のときには,「話すこと」はパネラーのプレゼンパートで済んでいるので,ディスカッションパートでは,前半のプレゼンを踏まえて「意見の噛み合い」「重ね合い」「ぶつかって新しい見解が生まれること」をエンハンスしたいところです。そういうので設計図をつくるのはやらせじゃないの〜? という向きもあるかもしれないのですが。
例えばこれ,研究シンポジウムのディスカッションパートの設計図です(2018年の日本建築学会大会建築計画研究懇談会のやつ)。
(読んでもほぼ分からないと思います,テンポラリな自分用メモなので。自分でももう読めない‥)
パネリスト(や資料集への寄稿)のプレゼン(や原稿)に,共通していて議論をかみ合わせたいところ,違いを明確にしたいところ,重ねたり並べたりするとメタな知見が出そうなところ,を抽出して,どういう順番でそれらを展開すると一連の議論としてまとまりを持てるか,ディスカッションの成果の落としどころのイメージをなんとなく骨格づくる感じです。
また,ディスカッションしながらその場で展開が追加されたり変わったりするのをメモして,新しい組み込み方をその場でつくっていったりしています。
実際には落としどころのイメージに肉付けしていくのでかなり違う見え方をしますし,骨格も‥人の骨格と思って並べてたら尻尾の骨出てきた〜ありゃ牙‥えー恐竜だなこれは〜みたいな展開もあったりします(種がかなり違ってしまっても二足歩行脊椎動物というセンは守ります)。
敢えて数字にすると3割が事前の骨格,7割がその場の議論。でも骨格の3割がやっぱり全体のプロポーションと方向性をある程度決めていて,それがないと成り立たない。という感じです。
原稿でも,骨格に具体的な文章を肉付けして始めてひとさまに見せられる,伝えるためのツールとしての姿になるのですが,骨格がちゃんとしてないとスライムか軟体生物なので,とらえどころがないですね。文章の「設計図」,おすすめします。
さ,おたがいがんばりましょう。私も原稿書きます!
余談‥書きながら思いましたが,これは論文でたくさんの既往研究を並べながら,自分の研究の必要性や方法の妥当性の説明に持っていくためのストーリーづくりをするのともちらっと関連しますね。
「要素でストーリーをつくる」の経験と技術って,大事なんだなあ。
日本建築学会 地域施設計画研究シンポジウム。通称地域シンポ。終わりました〜
1月あたまのアブストラクト投稿,採択されたら3月の本論提出とその後査読対応というスケジュールで,卒論をこの時期までにまとめて出そう! という目標で研究をすすめていくため,うちではM1の発表が比較的多いです。
(テーマによっては,人間・環境学会やEDRA,建築学会学術講演大会,都市計画学会など分散するので全員ではなく)
今年は8題。集合住宅のDIY改修,高齢者施設のエンドオブライフケア,戸建て住宅の子育て要素,介護医療院,教育機能を起点とする共生コミュニティ,既存建物の活用による地方創生事業の地域拠点,ICUでの看護負担感。
お披露目できたのは一部分ではありますが,それでも日々の研究活動を反映して,医療・福祉・教育・居住,地方創生に共生ケアにと幅広い分野での発表題目の展開になりました。
幅広く展開して,毎年(卒論のレベルで)まとまった論文にまで仕上げるのはすごいねと,学生たちの成果が委員の先生方にお褒めいただいて嬉しかったです。(そう,うちの学生さんたちはすごいんですよ。みんな努力家です)
建築計画,特に施設計画では良くも悪くも制度の枠組みと完全に離れては語れず,制度は社会状況の変化や理念の進化に伴って変容していくものなので,必然,「建築計画」はその枠組み自体が日々更新されていきます。
(多くの分野もそのように自己刷新をしていると思います)
研究室のゼミは対象もフィールドも手法もそれぞれで,一人ひとり個別の課題に取り組む状況が報告され,相互の気づきや知見の援用を重ねて進んでいきます。ともすれば「とっちらかっている」ですが,そのように研究フィールドを幅広く構えて多様性・個別性・複層性のなかで研究を展開することが,新しい計画の枠組み,自己刷新の仕組みにつながっていると感じます。
いろいろな興味関心を持っている人々が集う環境に,個々の学生さんたちそれぞれに,改めて敬意を。
そろそろ前期も終わりです。今日もまた小さな一歩ずつです。