水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

伝われ(2)

2022年02月14日 | 学年だよりなど
1学年だより「伝われ(2)」


 予定されていた初の武道館ライブは延期となったが、二度の手術を乗り越えて、活動を再開する。 翌2014年、武道館で復活ライブを行った。ナースに抱えられて登場し、そのスカートの中をこっそり覗きこもうとする姿に、場内は爆笑に包まれたという。
 年末には横浜アリーナでの2Daysを開催する。作曲を始めたころの自分と、これからの自分をつなげるライブにしたいと考え、初日は弾き語りになった。


~ あの頃、6畳一間の中のさらに狭い、2畳ほどのサイズまでしか聞こえない小さな小さな音で作った曲を、広大な横浜アリーナで歌う。ピンスポットが自分を照らすと、周りは真っ暗で何も見えなくなった。その瞬間、1万2000人の観客は消え、ひとりぼっちになった。
 あの頃、夜中、寝静まり、音もしない街で何の未来もない自分の無能さに押しつぶされそうになり、眠れず、意味もなく片眼から涙を流し、息苦しくなって掛け布団をゆっくりとはぎ取り身を起こし、傍らにあったギターで真っ暗な中歌を作った、あの瞬間。それが今、歌っているこの瞬間と繋がった。こんなことがあるのかと思った。
 あのとき「誰かに伝われ」と心から飛ばした電波は、幻想でも、ナルシスティックな妄想でもなかった。何年もかけてゆっくりゆっくり飛んでいき、ここにいる大勢の人たちの元に届き、受信されていたのだ。無駄なものだと思っていたあの想いは、ここにちゃんと繋がっていたのだ。 ~


 「ひらめき」という曲を歌いながら、自分が六畳間にいるような感覚に包まれていく。
 自分の歌を聴いてくれる人は、すぐそばにいた。


~「大きいステージでやるライブは本物の音楽ではない」
 「狭いライブハウスでやるものが正義だ」
 自分も昔そう思っていた。だが、それは間違いである。
 音楽、そしてライブにおいての広さや距離というものは、会場のサイズで測られるものではなく、演奏している音楽家と、聴いているお客さんの心の距離の近さによって測られるのだ。
 とても幸福な時間だった。どれだけ会場が大きかろうが、あの2日間、横浜アリーナは最高に狭かった。      (星野源『いのちの車窓から』角川文庫)~


 2015年、4枚目のアルバム『YELLOW DANCER』でCDショップ大賞を受賞、2016年に『星野源のオールナイトニッポン』も始まった。2017年、『逃げると恥だが役に立つ』の主演と主題歌「恋」は社会現象とよばれるほどのヒットとなる。
 幼いころ、一人マイケル・ジャクソンを見つめていた少年が、夢にも見ない未来だ。学校に行けなかった日々、自分は一人だと感じていた高校時代も予想できなかった未来。
 今のみなさんが、10年後、20年後にどうなっているかは、誰にもわからない。
 誰でもない「自分」になれるとしたら、好きなことから逃げないことではないだろうか。
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