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水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

私をくいとめて

2020年12月25日 | 演奏会・映画など
~ 芥川賞作家・綿矢りさの小説を原作に、アラサー独身女性と年下男性が織り成す不器用な恋模様を描くラブストーリー。脳内にいるもう一人の自分を相談役にシングルライフを満喫するヒロインが、思いも寄らず恋心を抱く…… ~

 のん(能年玲奈)さんが演じる主人公みつ子は、おひとりさまアラサー女子だ。
 何年も恋人なし。たった一人の親友はイタリアに行ってしまい、ふだん話相手になるのは、職場の先輩で同じく独身のノゾミさん(臼田あさ美)ぐらいだ。会社を離れれば、基本的に脳内の自分と会話するしかない。
 みつ子は、脳内自分のことを「A」と自覚し、「ねぇ、Aはどう思う?」と尋ねたりする。
 「こうではないでしょうか」とかえってくると、「そんなことはわかってるよ!」と言い返したりするが、その声が外にもれてしまうことがある。
 のんとA(声は中村倫也)との会話を推進力にして話がすすんでいくのだが、書いてて気づいた。これは、ふつうだ。
 もちろん、脳内の声がこの作品の能年玲奈さんほどはっきり外に出ることはめったにないけど(人によってはけっこう出てるけどね)、みんな同じではないか。
 出入りの業者さんで少し年下の林遣都くんと知り合って、お互いに心惹かれているのに、もどかしいほど進展しないのも、実にふつうだ。
 Aとのやりとりや、その結果として表現されるのんさんのけっこうはげしい感情表現も、その感情を風船とばしたりアニメにしたりして具象化する表現も、実に映画的だ。
 美男美女が登場し、めくるめく恋愛模様を繰り広げてくれる作品は、たしかに楽しい。ユメは見れるけど、現実とのあまりにちがいにがっかりする時はある。
 のんさんがなかなかアラサーに見えないという点を除けば、この作品の「ふつうさ」は現代を生きる私たちの自意識をこれでもかと描き出し、身につまされ、救いも与えてくれる。
 「年末年始に遊びにおいで」と親友の皐月から手紙をもらい、苦手な飛行機に乗りイタリアに行く。「久しぶり!」と自宅に迎え入れ、「いろいろあったね」と語り合う、のんと橋本愛。なぜか、映画の筋に関係なく泣けてしまったシーンだった。いい映画だった。
 ということで、今年の主演女優賞はのんさんに決定しました。

 2020年 主演女優賞  のん 「星屑の町」「私をくいとめて」
     助演女優賞  恒松祐里 「酔うと化け物になる父がつらい」「スパイの妻」
     新人賞    蒔田彩珠 「朝が来る」「星の子」
     すごい気になったで賞 阿部純子 「Daughters」「罪の声」「461個のお弁当」
コメント
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