先月、大宮ソニックの井上陽水コンサートを観に行った。
何年ぶりだろう。御歳(おんとし)67歳になれた師匠はますますお元気で、声はのびるし身体の動きもキレキレだ。少し前に吉田拓郎ライブを観に行った同僚が、パワー不足気味だったのを(あたりまえなんだけど)嘆いていたけど、陽水師は、会場にいた二千数百人のなかで一番元気だったのではないか。お客さんの平均年齢もあがる一方で、アンコールのあと「みなさん、お元気で」としみじみと呼びかけていたのが印象的だった。
二千数百人とは別次元の若い子がステージ上にいた。
コーラスの澤田かおりさんだ。うすく入ってくるだけでも伝わってくる響きのある歌声、音楽にあわせる身体の動きの美しさ。
楽器のうまい人、たとえばクラリネットのプレーヤーさんだと、曲間にスワブを通す動きを見ただけで「うわ、この人まじウマい」と感じることがあるけど、それと同じで、ステージ上にいるだけで音楽が全身から発せられている。
メンバー紹介のとき、「かおりちゃ~ん」と叫んでいる人がいたので、きっとピンでも名の知れた人なのだろうと思って帰ってから調べ、長くシンガーソングライターとして生きているお嬢さんであることをネットで知り、そして待ちに待っていたメジャーデビューアルバム「Songwriter」を入手した。
つまりここまでが前置きです。
すばらしい作品だ。
やはり声そのものがいい。声質の使い分けがすばらしい。テクニック的にはむしろ老獪とさえ感じる。
ボーカルの勉強するのに、何かいいCDないですかねと誰かに尋ねられたなら、即座にこれを薦める。
ソングライターと言うとおり、すべての楽曲を作詞作曲し、いくつかはアレンジもしている。
才能とよんでしまえばそれまでだが、こんな人もいるんだなあと感慨深い。
カラオケで96点出たぐらいでよろこんでるおっさんとは種レベルでちがうかもしれない。おれもオリジナルの曲をつくって、男祭りで歌ってもらえないかななどと妄想してしまった。
~ 私は君でできてる
私は君を生きてる (君がくれたもの)~
~ 「うまくいかないことばかりだ」
散らばった夢のカケラ見つめて
つぶやいたその声は
風にさらわれて ふっと消えた (幸せの種) ~
~ ミルクとコーヒー解け合って
花びらが水面揺らして
そんな風に 二人は
いつも近くにいた
へたくそな落書き見せ合って
お揃いの夢を描いて
別れることなんて
想像してなかった (バイバイ、マイラブ)
もちろん、他のアーティストさんが到達できないほどの境地にある作品、たとえば中島みゆきさんとか、陽水さんとかのそれほどにすごい楽曲というわけではない。
でも、彼女の声で歌われると、どれもが名作に聞こえてくる。
サウンドがしっかりしていれば、どんな曲も名曲に聞こえるという吹奏楽の原則は、ポップスでも言えるのかもしれない。