映画
『スイミング・プール』を観ました。2003年のフランス映画。監督は『8人の女』のフランソワ・オゾン。この映画は公開当時にとても評判を呼んだので、いつか観よう観ようと思っていました。
一応、ミステリーです。ただ、恥ずかしいことに、私はこの監督が用意したラストを理解できなかった。つまり、種明かしの意味が分からなかったということ。観た人の多くは理解できなかったのかな。
私にとって印象的だったのは、映画全編に漂う嫉妬・不機嫌といった微妙なイライラ感です。
主役の作家の女性は、ロンドンから旅行で南フランスの避暑地に来ます。この南仏に来た当初の開放感がいい。ロンドンの喧騒から陽射しのきつい黄色の風景をもつ南仏に来ると、観客も一緒にゆったりしてきます。気位は高いけど心に不満を持つ作家が一時的に解放されているのも手に取るように分かります。
しかし、その静けさが別の厄介ごとに破られるであろうことも、観ていて容易に予想がつきます。
避暑地の別荘で執筆を再開する作家の所に、その別荘の持ち主である男の娘がやって来ます。彼女の母親と父親はだいぶ前に別れたみたい。
その娘はしょっちゅう男を連れ込んではお酒とセックスを貪り、静寂に心を落ち着かせていた作家はイライラします。
ただそのイライラは、単に静けさが破られたというだけではなく、女性である作家の、その若い娘への嫉妬も含んでいることを、観客は否応なく感じさせられます。
娘役のリュディヴィーヌ・サニエは、撮影当時20歳前後だったのですが、男から見てだけではなく、おそらく女から見ても、理想のプロポーションをヌードという形でみせます。そのスタイルの良さは、最初本当にビックリします。
監督は、意図的にリュディヴィーヌ・サニエの肌を直接的に描写し、その若い女性の肌にイライラと戸惑いを見せる中年の女性の感情も描写します。
作家は娘に対して嫉妬すると同時に、どこかで惹かれるものを感じます。嫉妬とは、そのうらやましいという感情を素直に出せないがゆえの感情であって、何かのきっかけで相手への好意が出ることがあります。
この映画で監督は一番描きたかったことが何かはよくわかりませんが、この作家と若い娘との感情の距離・駆け引きはとても印象に残りました。