音楽の話についてなど。
最近、プリンスの “One Nite Alone…Live!”というアルバムを聴いています。
プリンスはわたしが高校生時代にもっとも聴いていたアーティストです。あれからもう何年もたつけど、彼は今でもこうして現役でやっています。今年の3月には「ロックの殿堂」に入ったとかで、話題にもなったそうです。
90年代には一時迷走していたようなプリンスだけど、最近は自分の足場をしっかり確かめたみたいで、その音楽も迷いのない肯定性が感じられます。
音楽ということで最近興味深かった言葉が、七田眞さんの近著の中にありました。七田さんによれば、わたしたちの脳は年をとるにつれて退化するらしく、それが原因で速いテンポの音楽についていけなくなるそうです。若い人がロックやヒップ・ホップなどを好むのに対し、年輩の人がゆっくりした音楽を好むのは、脳の退化に原因があるということです(でも、ちゃんと脳を活性化させる訓練をすれば、若い脳を保てるそうです。その方法を七田さんは著書で紹介しています)。
これはとても興味深い指摘でした。僕自身は一時クラシックや環境音楽を聴いていた時期がありました。ちょうど精神的に穏やかなものを求めていた時期でもあったので、そういうものを聴いたのですが、僕自身はそのことを、趣味が成熟してきたこととらえていました。ポップ・ミュージックしか興味のなかった自分の中で感受性の変化が起こり、落ち着いた静かなものの中にある微細な興奮を感じ取れるようになったのだと思いました。
でも七田さんの指摘に従えば、ただたんに僕自身の脳が退化しただけだったのです(笑)。まあそれだけで説明しきれることではないでしょうけど。
ただ七田さんの言葉を真面目に受け取ると、よく年輩の人が若い人の音楽を「うるさいだけ」と言うのは、ただ単に脳の回転が速いテンポに追いつけなくなっただけなのです。
話をプリンスに戻します。プリンスの全盛期だった80年代後半では、彼の音楽はただひたすらとんがっていました。とくに
“Around the World in A Day” 、“Parade”、“Sign of The Times”、などの作品はプリンスの名声を決定づけ、彼の存在をミュージシャンの間で神格化させました。
それが90年代前後を境に、それまでの革新性が薄れ、今までの自分の方法論を再生産したようなアルバムが作られていきました。90年代の彼の作品は、クオリティは高いけど、少し退屈なものでした。
80年代の革新性は、プリンス自身の精神的な攻撃性とともに、年齢的に彼の音楽的感覚の鋭さがもっとも発展していたのかもしれません。
それ以降のプリンスは、もはやかつての革新性を取り戻せない中で、しかし単なる再生産ではない音楽をどうやって作るのかに悩んできたのかもしれません。 その中でも"Emancipation"という3枚組み(!)の傑作もありましたが、、90年代のその他のアルバムは、個人的には物足りない感じがしました。
音楽的感覚の変化は、年齢とともにどのミュージシャンにも訪れるものなのでしょう。今のプリンスの音にはかつてのような攻撃性や鋭さはありません。
しかし、2001年に発表された"The Rainbow Children" は、単なる音楽の革新性ではない、しかしただかつての自分の方法論を再生産するだけでもない、新しいプリンスの音楽がありました。多少趣味的なジャズ・ファンクで閉鎖的な雰囲気もありますが、それまでの経験を踏まえながら、時の流れに自然に身を任せその瞬間に出てくる音を奏でるようなプリンスがそこにいました。
“One Nite Alon...Live!”はその"The Rainbow Children"の楽曲を中心に構成された、プリンスの実に楽しそうなライヴ演奏が収められたアルバムです。The Rainbow Childrenの閉鎖性も、ライヴという雰囲気の中で解放された楽しさへと変化しています。興味のある方は聴いてみて下さいね。
こうした過程を経て、プリンスはことしの5月に"Musicology"というとても生き生きしたアルバムを発表しました。
最近、プリンスの “One Nite Alone…Live!”というアルバムを聴いています。
プリンスはわたしが高校生時代にもっとも聴いていたアーティストです。あれからもう何年もたつけど、彼は今でもこうして現役でやっています。今年の3月には「ロックの殿堂」に入ったとかで、話題にもなったそうです。
90年代には一時迷走していたようなプリンスだけど、最近は自分の足場をしっかり確かめたみたいで、その音楽も迷いのない肯定性が感じられます。
音楽ということで最近興味深かった言葉が、七田眞さんの近著の中にありました。七田さんによれば、わたしたちの脳は年をとるにつれて退化するらしく、それが原因で速いテンポの音楽についていけなくなるそうです。若い人がロックやヒップ・ホップなどを好むのに対し、年輩の人がゆっくりした音楽を好むのは、脳の退化に原因があるということです(でも、ちゃんと脳を活性化させる訓練をすれば、若い脳を保てるそうです。その方法を七田さんは著書で紹介しています)。
これはとても興味深い指摘でした。僕自身は一時クラシックや環境音楽を聴いていた時期がありました。ちょうど精神的に穏やかなものを求めていた時期でもあったので、そういうものを聴いたのですが、僕自身はそのことを、趣味が成熟してきたこととらえていました。ポップ・ミュージックしか興味のなかった自分の中で感受性の変化が起こり、落ち着いた静かなものの中にある微細な興奮を感じ取れるようになったのだと思いました。
でも七田さんの指摘に従えば、ただたんに僕自身の脳が退化しただけだったのです(笑)。まあそれだけで説明しきれることではないでしょうけど。
ただ七田さんの言葉を真面目に受け取ると、よく年輩の人が若い人の音楽を「うるさいだけ」と言うのは、ただ単に脳の回転が速いテンポに追いつけなくなっただけなのです。
話をプリンスに戻します。プリンスの全盛期だった80年代後半では、彼の音楽はただひたすらとんがっていました。とくに
“Around the World in A Day” 、“Parade”、“Sign of The Times”、などの作品はプリンスの名声を決定づけ、彼の存在をミュージシャンの間で神格化させました。
それが90年代前後を境に、それまでの革新性が薄れ、今までの自分の方法論を再生産したようなアルバムが作られていきました。90年代の彼の作品は、クオリティは高いけど、少し退屈なものでした。
80年代の革新性は、プリンス自身の精神的な攻撃性とともに、年齢的に彼の音楽的感覚の鋭さがもっとも発展していたのかもしれません。
それ以降のプリンスは、もはやかつての革新性を取り戻せない中で、しかし単なる再生産ではない音楽をどうやって作るのかに悩んできたのかもしれません。 その中でも"Emancipation"という3枚組み(!)の傑作もありましたが、、90年代のその他のアルバムは、個人的には物足りない感じがしました。
音楽的感覚の変化は、年齢とともにどのミュージシャンにも訪れるものなのでしょう。今のプリンスの音にはかつてのような攻撃性や鋭さはありません。
しかし、2001年に発表された"The Rainbow Children" は、単なる音楽の革新性ではない、しかしただかつての自分の方法論を再生産するだけでもない、新しいプリンスの音楽がありました。多少趣味的なジャズ・ファンクで閉鎖的な雰囲気もありますが、それまでの経験を踏まえながら、時の流れに自然に身を任せその瞬間に出てくる音を奏でるようなプリンスがそこにいました。
“One Nite Alon...Live!”はその"The Rainbow Children"の楽曲を中心に構成された、プリンスの実に楽しそうなライヴ演奏が収められたアルバムです。The Rainbow Childrenの閉鎖性も、ライヴという雰囲気の中で解放された楽しさへと変化しています。興味のある方は聴いてみて下さいね。
こうした過程を経て、プリンスはことしの5月に"Musicology"というとても生き生きしたアルバムを発表しました。