毎年この時期に参加させていただいている、オープンセミナー(監査法人主催)ですが、今年はグローバル化する経済とナショナリズム化する政治というテーマです。
登壇されたのは前外務事務次官 斎木昭隆氏です。ご本人は、以前は立場上自主規制していたが、退官したので少し話せる範囲を広げて・・とおっしゃっていましたが、講演そのものは今日の世界情勢を非常に要領よくまとめたかたちのお話でした。ここではトリビア的なお話をいくつか紹介しておきます。
日韓合意(2015年12月末)について、この年はちょうど日韓国交正常化50周年にあたり、当時の岸田外相が合意締結に特に熱心だった。外相は安倍首相に決断を迫ったが、首相は黙ったままだった。外相が「今まとめないと(この問題は)漂流してしまう」と畳みかけると、首相もようやく「わかった」と答えたという。
昨年の「蒸し返し」、当時の日本側にはそうなるのではないかという懸念が相当あったという。検討委員会の結論も、何だかわからんという意見も聞くが、「ここが我慢のしどころ。日韓がケンカをすると喜ぶ国が、周りには二つあるのだから・・」
「戦略的互恵関係」胡錦涛主席時代、国家主席が言い始めた言葉なのだそうで、その後日本の首脳もよく使うようになった。ところが中国はさいきん、この言葉を使わなくなった。「たぶん、習氏はあれは前任者の使った言葉だから、使うのが嫌なんじゃないか・。」
次に登壇された五百旗頭真氏は、前防衛大学校学長で小渕首相から福田首相のじだいにかけて、政策ブレーンとしても活躍された方です。スライドを使わず、ソフトな語り口でユーモラスに語りかけておられましたが、非常に中身の濃いお話でした。
氏は2014-15年ごろが、国際社会が経験した大きな試練の、一つのピークであったといいます。それは、イスラム過激派の躍進と、中国の台頭です。
ただ、国家樹立を宣言したISは掃討され、また北京オリンピックとリーマンショックに自信を得た中国の、暴走気味の拡張政策は次第に軌道修正(伊勢志摩サミットでの航行の自由宣言、国際仲裁裁判所での判決)を余儀なくされつつあります。
と、思っていたら2016年には、これまで国際社会をりーどしてきた英米がともにおかしくなって。。という。
面白い脱線はたくさんしてくださって、ベトナムの話などは秀逸でした。ベトナムは古来、外国から再三攻め込まれ、そのたびに撃退してきた。日本も二度、元から襲来を受けましたが、ベトナムも3度も受けている。そのたびに撃退し、4度目は政治的に動いて思いとどまらせた。その後も明、フランス、アメリカと、いずれも撃退している。
実は日本の外交も近頃はしたたかで、アメリカ(トランプ)とうまくやりながら、反国際主義には乗らずに日欧EPAやTPP11をまとめようとしている。これからも日米の同盟、日中協商は堅持しながら、相手に攻め込められたりしない、何かを持つこと(で、周辺諸国と上手く共存していく)ことが必要だ、と締めくくられていました。