陽だまりの中のなか

前田勉・秋田や詩のことなど思いつくまま、感じたまま・・・。

鈴木修一詩集『緑の帆船』

2020-07-09 | 詩関係・その他

      

 鈴木修一氏の第一詩集『緑の帆船』が出版された。
 新旧90編の詩を6つのテーマに分けて配列し、各章の扉には著者の俳句を並べている。
更に特徴的なのは、各章の終わりに掲載作品の初出を掲示し作品を振り返る、背景に触れる
著者の言葉を付していること。ある意味作者と読者とを結びつける、作品へより近づけるヒ
ントにもなっている。

 心象や事象を豊かな言葉で纏っている作品群は、俳人として活躍されてきた著者の詩情が
なせる世界とも言えそうだ。

   
    「緑の帆船」 ー教室の窓にそよぐ樹々に寄せてー

    風をはらんでゆさゆさと
    大樹の緑が揺れている

    春の日
    わずかに萌え出した枝々から
    空の青さを仰いだ時
    太い幹が帆柱となって
    ぐらりと揺らぐ目まいを覚えた

    夏を迎えようとする今
    木々は緑の帆を張って
    春の予感を鼓吹している
    われらこそ
    大空をわたりゆく帆船の群であると……

    そしてそのことを
    私もまた諾うほかはない
    送り返す光のシグナルは
    地球をひと巡りしてきたものの喜び
    巡る度に繁りゆくものの誇りの証しであるから

    帆をふくらませている風と
    同じ風に吹かれて
    私の内部に満ちてくる思いがある
    おまえもまた大空をめぐる旅人
    繁りゆくこの帆船の水夫であったのだと……

 

著 者  鈴木修一(秋田県現代詩人協会会員、現代俳句協会会員、俳誌「海原」同人)
出 版  書肆えん(秋田市新屋松美町5-6)
発行日  2020年7月7日
定 価  2,000円+税


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