陽だまりの中のなか

前田勉・秋田や詩のことなど思いつくまま、感じたまま・・・。

高橋憲三詩集 『星に祈りを』

2020-08-30 | 詩関係・その他

      

 青森県黒石市在住の詩人で『詩と散文「飾画」』同人の高橋憲三さんが、
第5詩集となる『星に祈りを』を刊行された。

 これまで詩集を2003年に『走り始めた空』、2011年『青くあれ』、
2013年『深層風景』、2016年『地球よりも青く』と意欲的に出版され
ている。

 先の『地球よりも青く』に見られた硬質な言葉と組み立てが、この度の詩集
でも魅力的に展開されている。読み手は心地よい緊張感を得ながら収録された
20編の作品に触れていくことになる。世のこと、生(せい)のこと、政
(まつりごと)のこと、戦(いくさ)のこと、自分の在り方のこと・・・。

 先の詩集のあとがきで「(略)いつも書きたくて、書きたくて鉛筆をとる。
そして、書きためた作品をだれかに読んでもらえれば嬉しいと思う気持ちも
強い。あとどれだけ書けるものかはわからぬが、とにかく書けるまでは書き
まくりたい。(略)」と書いていた。その意欲に驚いたものだ。
この度の『星に祈りを』のあとがきは、より素敵な一文になっている。
「ぼくが思ったこと、これだけしかない。/思ったことを星に祈ろう。/星に
祈りを…。」(全文引用)


    「星に添うとき」
   少年は/新たな野辺にさしかかる/そして/青いときめきを/少しずつ
           /ひとつずつ/ポケットに押し込ん
   でいく//
哀しみに過不足なくひたる幸い/想いが生まれ/体中の巡り
           を使い切って/夢の質量を アイン
   シュタインに尋ね、/
楽曲の 音のない部分に意味をさがす//夏は暑
           かった/夏は短かった/ジリジリと
   //
季節が/傾く//豪雨と強風が幾度も通り抜け 変形した地勢/偏
           在する絶対者 信じ仰ぐ群 傾斜す
   る排斥/暴徒化した力学電子化学反
応式 夷狄の叛乱/マイクロプラス
           チック 命の腸(はら)に見えぬ充
    満//
終わりまで生き通す少年は/落ち着けぬ気持ちを整理しようと/
            ひたすらうたい続けるだろう/同じ
    血の流れがひび割
れぬよう/まるで/神のような心細さで

 

 高橋憲三(たかはし・けんぞう)1949年 青森県黒石市生まれ。同市在住。
 発行日:2020年8月15日
 発行所:土曜美術社出版販売(☎03-5229-0730)


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