陽だまりの中のなか

前田勉・秋田や詩のことなど思いつくまま、感じたまま・・・。

いとう柚子詩集『冬青草をふんで』

2019-06-07 | 詩関係・その他

      

 山形市、いとう柚子(いとう ゆうこ)氏の第4詩集『冬青草をふんで』が届いた。
 読み終わってみると、私の心がすごく落ち着いている。何がそうさせるのだろうかと振り返ってしま
う、不思議な余韻のある作品が多い。

 目で詩行を追い頭の中で情景を描きながら作者の”心”を覗いてゆくと、見えてくる作者の姿勢そのも
のが”静”であるということに気づいた。決して起伏のある感情でも冷たい感情でもなく、しっとりした
ようなもの。
静かに流れる時間が、作者との距離感をよく表している。沈思する作者の眼が見えてくる
詩集だ。

 
  序詩  冬青草をふんで

 秋野の果てをふみこして/足裏にはいま/冬草の原/片時雨がやんで/みじかい草々に/いつくしむ
 ように陽差しがそそいでいる
 いっしゅん青緑の広がりに/なつかしい匂いがみちわたる/記憶の底ふかくから掬いあげられる/春
 のさざめきを/夏のまぶしさを/もうしばらく抱きしめて歩いてみよう
 すぐそこであるような/まだすこしむこうであるような/ほんとうの果てで/一人称の物語が閉じら
    れる/
その日も きっと/この草の原から遠くはなれた/見知らぬ明るい地で/見知らぬだれかの胎
    内に/
あたらしい命が育ち始めている
 

 発 行   2019年6月21日(まだ発行日前だが奥付をそのまま記載する)
 著 者   いとう柚子
 編集発行者 鈴木比佐雄
 発行所   ㈱コールサック社
   定 価   1,500円+税   

コメント
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