ジョギング並みのスピードで迷走した台風10号は九州北部を横断して瀬戸内海をゆっくり東進中です。台風発生当初は紀伊半島周辺への上陸が予想されていました。ところが南海上の寒冷渦の影響が想定以上に大きく(背負い投げ現象?)台風は西へ向かい、九州の西を発達しながら北上。のろのろスピードで上陸して、まだ今後の進路の予想が難しい状況にあります。
今回の台風の特徴は、①寒冷渦の影響で西向きに進路が変わったこと(これはよくあるそうです)、②九州に近づいてから急発達を続けたこと、③上陸してもノロノロ迷走したこと(そのために急速に衰えました)、④広範囲に集中豪雨をもたらして交通機関に大きな影響を及ぼしたことが挙げられます。
③の迷走の理由について、日本気象協会の説明を引用します。太平洋高気圧と西側のチベット高気圧の狭間に入り、偏西風は日本の北を流れているため、台風を動かす原動力が弱く日本付近に停滞してしまったようです。7月の夏台風は太平洋高気圧に押されて西へ進み、8月末から9月に九州の西海上を北上する台風は偏西風に乗って日本海を北上するのが例年のコースなのです。
②の九州に近づいてから急発達した理由は、九州の西海上の海水温が30℃以上あることがその一因と考えます。一時は925hPaまで発達する予想となっていたため、史上最強クラスなどとマスコミで表現されていました。
平年と比べても2~3℃高い状況が続いているのです(個人的には三陸沖の異常高温のほうが気になりますが・・・)
50m深水温も高いため、海水が攪拌されても勢力が衰えません。実際、九州に接近してから980hPaから950hPaに急発達したのです。ただし九州西岸に上陸してからは陸地をノロノロ北上したため、急速に勢力が弱まってきました。また、台風のスピードが10km程度とジョギング並みだったため、台風の東側に入っても最大瞬間風速が60m/sを越えるような壊滅的な暴風にはなりませんでした。ただし強風が長時間吹き続けたことによる影響が心配です。
④広範囲に集中豪雨が今回の台風の大きな特徴です。太平洋高気圧の縁に沿って南から湿った空気が入り続け、そこに台風10号の外側の雲が重なったため、山地や半島の南東斜面を中心に線状降水帯が発生しやすく、九州だけでなく、四国、紀伊半島、静岡県から関東山地にかけて記録的な大雨が降りました。九州の大雨のピークが過ぎた昨日13時から今日の13時までの24時間降水量の分布を気象庁HPで調べてみました。静岡県から関東西部の雨量が際立っています(九州南部の記録的豪雨はこの時間帯より前に発生)。
実は、予定を早めて今朝、茨城県から高尾へ車で戻ってきました。昨夜の豪雨の影響で圏央道や中央道の八王子以西は通行止めとなっていたため、常磐道、首都高、中央高速(国立府中で降りました)を利用しました。圏央道や中央道の通行止めは、まだ継続中です。京王高尾線も今朝から運休となっていて、19時頃になってようやく運転再開となっています。
昨日13時から今日の13時までの24時間降水量を気象庁HPで調べてみました。八王子では345.5mmと記録的な降水を観測しています。奥さんの話では、昨夜の高尾付近で長く続いた豪雨は凄まじかったそうです。線状降水帯がちょうど八王子付近にかかり続けたようです。
八王子での記録的な豪雨といえば令和元年の東日本台風(台風19号)を思い出します。南浅川が氾濫して橋が流されたり、高尾駅北側の甲州街道が浸水したりして大きな被害が出ました。浅川、多摩川や荒川なども決壊の一歩手前の状況でした。今回、河川の増水はそこまで危機的な状況ではなかったようです。台風本体の雨ではなく南から流れ込む暖かく湿った空気で発生する線状降水帯による雨であることや、山間部の降水量がそこまで多くなかったことが幸いしていているのかもしれません。明日以降も雨が降り続く予想です。まだ油断できません。