今週末は小学校の運動会が予定されていましたが、雨のため火曜日に順延となってしまいました。仕事をやりくりして何とか休暇を取得せねば! 同じようなことを考えているお父さんが多いのではないでしょうか。。。
昨日は久しぶりにのんびりできたため、7月にBS2で放映されたスヴャトスラフ・リヒテルのドキュメンタリー(謎のピアニスト・リヒテル)をじっくりと見ました。今年は没後10年にあたり、リヒテルが死の2年前(1995年)に自らの生涯を語ったドキュメンタリーです。リヒテルのユーモアを交えた語りを中心に、貴重な映像が織り交ぜられて番組は進行します。映像は演奏会だけでなく、非公式な場での様子が多く収録され、時折首をかしげたくなる場面(主にリヒテルの私生活)もあって、意外な一面をうかがい知ることもできます。
番組は2部構成。前半「才能と苦悩のはざまで」では、自らの生い立ちと鉄のカーテンに閉ざされたソ連時代の様子が語られます。
「私には3人の師がいる ネイガウス、父、そしてワーグナー」
ワーグナーが好きだったみたいです。意外・・・
「私はリストのソナタを通してネイガウスから静寂を感じ取ることを教わった」
そしてリストのロ短調ソナタの映像。この曲、大好きです。
また、「プロコフィエフはラフマニノフのことが嫌いで、ラフマニノフの練習曲をどれも良くないと酷評していた。それは何故か。影響されていたからだ。特に練習曲集・音の絵からだが、彼はその曲が大嫌いであった」
これには爆笑。そして練習曲集・音の絵からの演奏会の様子。1984年の来日公演の録画で、私は見にいきました。
さらに「喧嘩で右指を怪我したとき、もうピアノは弾けないと当局に脅しをかけ一度だけプロコフィエフを指揮した(怪我は大したことなかった)」
意外な一面として「バッハはたまには聴くもの。精神衛生上良いからだ」。そしてバッハ平均律クラビィーアの演奏。
番組後半「音楽そして友との交わり」はメンデルスゾーンの「厳格な変奏曲」でスタート。実は、私はこの曲を知りませんでした。続いて、映画グリンカでリスト役を演じた様子。
1960年のカーネギーホールでのアメリカでビューについて、本人は大失敗と語っていたが、ラベルを3曲聴いたルビンシュタインは「ピアノを通じて歌い上げた」と大絶賛。
グールドのリヒテル評「シューベルトには魅力を感じない。演奏の時に座っているのが辛い。でもリヒテルの演奏には恍惚と聞き入った」。あのグレン・グールドがリヒテルを尊敬しているのは知っていましたが、これほど心酔してたとは・・・ リヒテルの素っ気無いコメントとは対照的です。
意外だったのは、カラヤンとのベートーベンピアノ三重奏曲録音時のエピソード。
意見の相違によりカラヤン・ロストロポービッチ組とオイストラフ・リヒテル組が対立し悪夢であったとのこと。4人揃っての写真ではカラヤンのポーズと残り3人の作り笑い・・・
ベンジャミン・ブリテンとの連弾(モーツアルト2台のピアノのためのソナタニ長調)。表情豊かなブリテンと黙々と演奏するリヒテルのミスマッチが対照的ですが、音楽はとても素敵です(後半の映像ベスト1)
フィッシャーディスカウのシューベルト、ウオルフの歌曲伴奏。これはプロとプロのせめぎ合いに圧倒されます(後半の映像ベスト2)
そして、カガン、グートマンとのチャイコフスキーのピアノ三重奏曲、ハイドン演奏における音色の美しさが印象的。
またモーツアルトを評し、「ハイドン、ベートーベンでは当たり前のフレーズがモーツアルトにかかると途端に難しくなる」。なるほど・・・
晩年は音感がずれたと苦悩の表情で語り、「1~2度高く聞こえ、耳で聴いた音がピアノで再現できなくなった。もう引退だ」
このシーンにはジーンと涙が出てきました。そこには音楽家ではなく一人の老人の姿が・・・
このインタビューの1年前に神奈川県立音楽堂で開催されたリヒテルの演奏会(グリーグの抒情小曲集)での素晴らしい体験は今でも瞼に映ります。音楽への自己集中、ピアノの音色・響きの美しさ、そして人間的なあたたかさを音楽に感じさせてくれただけに。
私は、リヒテルのコンサートを幸運にも2回経験しています。一度目は1984年の人見記念講堂。この時はブラームスのピアノソナタ2番とラフマニノフの練習曲集「音の絵」より。前半のブラームスはピアノが鳴らなかったせいか、かなり激しい演奏であったと記憶していますが、後半のラフマニノフは圧巻。あの巨体を揺らす演奏も健在でした。そして2度目は1994年の神奈川県立音楽堂。先にコメントのとおりです。
リヒテルのような音楽に陶酔させてくれる演奏会はなかなか経験できません。アシュケナージが15年前に来日してベートーベンの後期ソナタ(31,32番)を演奏したときは、これは!と期待したのですが、最近は指揮活動が忙しいようで。。。
昨日は久しぶりにのんびりできたため、7月にBS2で放映されたスヴャトスラフ・リヒテルのドキュメンタリー(謎のピアニスト・リヒテル)をじっくりと見ました。今年は没後10年にあたり、リヒテルが死の2年前(1995年)に自らの生涯を語ったドキュメンタリーです。リヒテルのユーモアを交えた語りを中心に、貴重な映像が織り交ぜられて番組は進行します。映像は演奏会だけでなく、非公式な場での様子が多く収録され、時折首をかしげたくなる場面(主にリヒテルの私生活)もあって、意外な一面をうかがい知ることもできます。
番組は2部構成。前半「才能と苦悩のはざまで」では、自らの生い立ちと鉄のカーテンに閉ざされたソ連時代の様子が語られます。
「私には3人の師がいる ネイガウス、父、そしてワーグナー」
ワーグナーが好きだったみたいです。意外・・・
「私はリストのソナタを通してネイガウスから静寂を感じ取ることを教わった」
そしてリストのロ短調ソナタの映像。この曲、大好きです。
また、「プロコフィエフはラフマニノフのことが嫌いで、ラフマニノフの練習曲をどれも良くないと酷評していた。それは何故か。影響されていたからだ。特に練習曲集・音の絵からだが、彼はその曲が大嫌いであった」
これには爆笑。そして練習曲集・音の絵からの演奏会の様子。1984年の来日公演の録画で、私は見にいきました。
さらに「喧嘩で右指を怪我したとき、もうピアノは弾けないと当局に脅しをかけ一度だけプロコフィエフを指揮した(怪我は大したことなかった)」
意外な一面として「バッハはたまには聴くもの。精神衛生上良いからだ」。そしてバッハ平均律クラビィーアの演奏。
番組後半「音楽そして友との交わり」はメンデルスゾーンの「厳格な変奏曲」でスタート。実は、私はこの曲を知りませんでした。続いて、映画グリンカでリスト役を演じた様子。
1960年のカーネギーホールでのアメリカでビューについて、本人は大失敗と語っていたが、ラベルを3曲聴いたルビンシュタインは「ピアノを通じて歌い上げた」と大絶賛。
グールドのリヒテル評「シューベルトには魅力を感じない。演奏の時に座っているのが辛い。でもリヒテルの演奏には恍惚と聞き入った」。あのグレン・グールドがリヒテルを尊敬しているのは知っていましたが、これほど心酔してたとは・・・ リヒテルの素っ気無いコメントとは対照的です。
意外だったのは、カラヤンとのベートーベンピアノ三重奏曲録音時のエピソード。
意見の相違によりカラヤン・ロストロポービッチ組とオイストラフ・リヒテル組が対立し悪夢であったとのこと。4人揃っての写真ではカラヤンのポーズと残り3人の作り笑い・・・
ベンジャミン・ブリテンとの連弾(モーツアルト2台のピアノのためのソナタニ長調)。表情豊かなブリテンと黙々と演奏するリヒテルのミスマッチが対照的ですが、音楽はとても素敵です(後半の映像ベスト1)
フィッシャーディスカウのシューベルト、ウオルフの歌曲伴奏。これはプロとプロのせめぎ合いに圧倒されます(後半の映像ベスト2)
そして、カガン、グートマンとのチャイコフスキーのピアノ三重奏曲、ハイドン演奏における音色の美しさが印象的。
またモーツアルトを評し、「ハイドン、ベートーベンでは当たり前のフレーズがモーツアルトにかかると途端に難しくなる」。なるほど・・・
晩年は音感がずれたと苦悩の表情で語り、「1~2度高く聞こえ、耳で聴いた音がピアノで再現できなくなった。もう引退だ」
このシーンにはジーンと涙が出てきました。そこには音楽家ではなく一人の老人の姿が・・・
このインタビューの1年前に神奈川県立音楽堂で開催されたリヒテルの演奏会(グリーグの抒情小曲集)での素晴らしい体験は今でも瞼に映ります。音楽への自己集中、ピアノの音色・響きの美しさ、そして人間的なあたたかさを音楽に感じさせてくれただけに。
私は、リヒテルのコンサートを幸運にも2回経験しています。一度目は1984年の人見記念講堂。この時はブラームスのピアノソナタ2番とラフマニノフの練習曲集「音の絵」より。前半のブラームスはピアノが鳴らなかったせいか、かなり激しい演奏であったと記憶していますが、後半のラフマニノフは圧巻。あの巨体を揺らす演奏も健在でした。そして2度目は1994年の神奈川県立音楽堂。先にコメントのとおりです。
リヒテルのような音楽に陶酔させてくれる演奏会はなかなか経験できません。アシュケナージが15年前に来日してベートーベンの後期ソナタ(31,32番)を演奏したときは、これは!と期待したのですが、最近は指揮活動が忙しいようで。。。