史跡訪問の日々

幕末維新に関わった有名無名の人生を追って、全国各地の史跡を訪ね歩いています。

南あわじ

2016年11月03日 | 兵庫県
(福良八幡神社)
 南あわじ市福良まで来ると、淡路島も南端に近い。街の中心部に八幡神社がある。境内に護国神社があり、幕末から日清・日露戦争さらに第二次世界大戦に至る戦争で英霊となった三百五十四柱を祀っている。


福良八幡神社

 護国神社の祠の側に三百五十四名の名前が刻まれた石碑が建てられているが、知った名前は福浦元吉だけである。
 福浦元吉は文政十二年(1829)、淡路国三原郡福良浦に生まれた。早くから同国の先輩古東領左衛門に薫陶を受け、また剣客梶浦四方之助について刻苦修練した。領左衛門が京摂に出て奔走すると、常にこれに随伴してこれを助け、同志の間に寵用された。文久三年(1863)、天誅組義挙の際、元吉も参加して専ら藤本鉄石に近侍してその行動を援け、各地に奮戦して武勇を馳せたが、鷲家口に至って和歌山藩の大兵に包囲され、双刀を振って鉄石を援け、力戦数人を斬ったが、群槍の中に斃れた。年三十五。


護国神社

(賀集八幡神社)
 賀集八幡神社の参道途中に南淡町歴史民俗資料館という施設がある。どうやらかなり以前に閉館してしまったようで、建物の周りは雑草が延び、建物もメンテナンスされている様子が感じられない。その敷地内に増井文太の碑が建てられている。


賀集八幡神社

 増井文太は、武田万太夫、田村平一郎と同じく庄屋の出で、彼らとともに猟師隊を編成した。


志士増井文太翁之碑

(栄福寺)


栄福寺

 栄福寺に岡田鴨里の墓を訪ねた。栄福寺の墓地は、霊園として整備され古い墓石は見当たらない。裏山にわずかに古い墓石が残るが、そこには鴨里の墓はない。裏山を遭難するんじゃないかというくらい歩き回って、終に蜘蛛の巣だらけになって車に戻った。
「ひょっとしたら」
と思って、探した道をはさんで反対側の山の中に、周囲を竹柵で囲まれた一族の墓があった。三十分以上、炎天下を歩いて汗だくになった。


岡田鴨里墓

(岡田鴨里旧宅)


岡田鴨里先生邸宅趾

 栄福寺から数百メートル離れた住宅街の中に邸宅趾を示す石碑が建てられている。

(養宜館跡)
 養宜館とは、暦応三年(1340)、足利尊氏に淡路平定を命じられた細川師氏が、立川瀬の戦いで南朝方を破り、守護大名となった際に入った館である。養宜館は中世以来大土居と呼ばれ、南北朝時代から室町時代にかけて百八十年余りの間、七代にわたり細川氏の居館であり、政庁でもあった。永正十六年(1519)、七代尚春が阿波で三好勢に謀殺され、その後間もなく養宜館も廃されたといわれる。館は、東西百二十メートル、南北二百五十メートルの敷地の周りに、土塁と空濠をめぐらせた長方形の豪壮な構えであった。現在は土塁と空濠がわずかに残る程度である。


養宜館跡

 養宜館跡に一つの石碑が建っている。武田万太夫の顕彰碑である。


志士武田萬太夫翁碑

 武田万太夫は、文政八年(1825)三原郡福良の生まれ。武田民十郎の養子となった。安政年間、尊王攘夷運動が高まると、田村平一郎、増井文太らと率先して猟師隊を編成して、松本奎堂らと時節の到来を待ったが、文久三年(1863)天誅組の大和挙兵の前に同志とともに捕らわれて投獄された。四年半ののち、維新を迎え許されて出獄したが、家運振るわず、神戸に出て余生を送り、明治二十一年(1888)、六十四歳で病没した。

(大宮寺)
 大宮寺の本堂裏に天明志士紀念碑と天明志士之碑がある。


大宮寺


天明志士紀念碑

 天明志士とは、江戸時代中期の天明二年(1782)、世に縄騒動と呼ばれている百姓一揆が山東地区十二ヵ村の農民たちによって起こされたもので、一揆の指導者広田宮村の才蔵と山添村の清左衛門のことである。当時、悪天候と災害による凶作が打ち続き、農民は疲弊し、藩の財政もまた困窮した。そのため徳島藩では淡路仕置をして新法を設け、農民への収奪を強化した。なかでも「縄趣法」と称する縄供出令は灰縄上納の口碑、伝統を生んだほど苛酷なものであった。重税に耐えかねた農民たちは、旧暦五月三日から十五日にわたり新法の廃止を要求して蜂起した。その結果、要求は容れられたが、一揆の指導者であった才蔵と清左衛門は、天明三年(1783)二月二十三日、打首獄門となった。以来、島の各地では密かに両志士の霊を祀り、その事績を語り伝えてきた。近代になって島民有志により両志士の顕彰碑の挙が企てられ、明治三十年代に天明志士之碑と天明志士紀念碑が一揆ゆかりのこの地に建立された。


天明志士之碑

 天明志士之碑は、明治三十一年(1898)、板垣退助撰文、巌谷修(一六)の書。

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