ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

国立大学運営費交付金8%減額に対するシミュレーション

2010年07月17日 | 日記

 前回までのブログで現政権による中期財政フレームによれば、社会保障費の増1.3兆円をまかなうために政策的経費を8%削減する必要があり、単純計算をすれば、大学関係の政策的経費1.5兆円から1200億円削減する必要があることをお話しさせていただきましたが、参議院選挙も終わって、各大学関係者から声明や要望が増えてきました。

現在まで以下の声明や要望が出されています。(すべて把握できていないかもしれませんが)

単独大学の声明や要望
5日:新潟大学
9日:香川大学
12日:千葉大学
13日:茨城大学、愛知教育大学
14日:岩手大学、福島大学

団体あるいは複数大学の声明や要望
7日:国立大学協会
9日:中国地区国立大学長会議
10日:国立大学法人32大学理学部長会議
12日:国立大学協会関東・甲信越地区支部所属大学等
14日:国立大学協会・日本私立大学団体連合会
16日:北海道内7国立大学

また、私が理事長をしている国立大学財務・経営センターの研究部長の金子元久先生が、運営費交付金が8%削減になった場合のとりあえずのシミュレーションを財務・経営センターのメールマガジン「国立大F&Mマガジン」に発表。

http://cz.biglobe.ne.jp/cl/P01/2281277/3093/2201000109

なお、「国立大F&Mマガジン」の新規登録は以下のサイトでどなたでもできます。

http://cz.biglobe.ne.jp/cl/P02/2281277/3093/2201000109


国立大学の財源には、運営費交付金以外の財源もあるわけで、運営費交付金の8%減イコール予算の8%減というわけではありません。また、人件費を急激に削減することは困難であることから、それ以外の教育研究費をまず削減することになります。また、附属病院を入れると教育研究に与える影響の分析が極めて複雑になることから、診療経費を除いた分析をする必要があります。このような考慮をして分析した結果から、金子先生は

「交付金の8%減は、ほとんどの国立大学にとって財源の5%以上の削減を意味する。その結果、教育研究に直接に支出できる額は8割の国立大学で10%以上減少する。すべての国立大学で5%以上減少し、20%以上減少する大学も9校に達する。その結果として、大学の収入総額に対して教育研究にふりむける財源が3割以下にとどまる国立大学は9校、4割以下にとどまる大学は32校に達することになる。教育研究機能の達成が極めて困難となることになる。」

と結論づけておられます。

7月23日の閣議決定で骨子が決まるとのことで、それまでに各大学関係者には引き続き最大限の国民や為政者に対する理解を得る努力をお願いしたいと思います。

必要なものまで切ると公言されている予算の厳しい状況の中で、財務・経営センターなんて吹っ飛んでしまいそうな感じもしますが、予算削減によって国立大学法人や附属病院の経営がますます困窮する中で、その経営支援をする財務・経営センターの役割が、ますます重要になることを、為政者や国民にご理解いただきたいと思います。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 各国立大学は、緊急アピール... | トップ | 独法の理事長はなぜブログや... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
アピール (しみず)
2010-07-23 06:53:26
①大学の内部の人間に対して、②大学の外の社会の人たちに対して、①どのようにしてこの現実の危機を伝えるか、②どのようにして実感を持ってもらうか、③どのようにして大学のファンになってもらうか、だと思います。
現在、大学内には、そのような実状を伝えるものは、附属病院にも大学にも、何も貼ってありません。理事会や教授会から職員への説明や通知も、一切ありません。ましてや、地域社会への訴えなど、皆無です。先生が上に挙げられたアピールを出された大学では、内部へ、そして外部への告知や訴えが、具体的な形でなされているのでしょうか。あるいは準備中なのでしょうか。本来は、大学内が、大学病院内が大騒ぎになるべき問題でしょう。でも、ほとんど誰も知らず、何もありません。平穏そのものです。もちろん、職員たるもの、それを積極的に知るようにすべきとは思いますが、なかなか知る機会、現実感を持つ機会がありませんし、大学や附属病院の経営など、内部にとっても、地域社会にとっても、一部の首脳の問題で、自分たちからは遠い世界だと思っています。為政者側も、そのように見ていると思います。大学の理事会からだけのアピールだと。これを、大学全体、大学を含む地域社会全体からのアピールだと為政者が感じるようにしないと、アピールの数が増えても効果は限定的など思います。もちろん、数を増やすことは重要ですが、そのひとつひとつのアピールがどういう形のアピールなのかに、為政者は興味と注意を払います。点のアピールなのか、面のアピールなのか、です。
返信する
学費を値上げすべき (T.N.)
2010-07-27 00:10:56
世間の人々に最も直接的に訴えるやり方は、学費の値上げです。子供手当や高校無償化の分、どこかで負担は増えるのであり、それを直接的に皆さんにわかってもらうべきでしょう。

大学の運営はすでにぎりぎりであり、運営費交付金分の収入は、大学教育の維持のためには最低限必要です。すでに先進国で最低の水準に陥っている大学の予算をこれ以上減らすことはできません。国が交付金を減らすというのであれば、学費の値上げで対応するしかないでしょう。
返信する

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事