ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

長崎大学病院150周年記念式典にて(最終章)

2011年10月25日 | 日記

長崎大学病院シリーズの最終章です。

今までのブログでご紹介しましたように、長崎大学病院では、現場の皆さんの懸命のご努力により、病院の経営が明確に改善しましたね。では、それが研究機能に与えた影響はどうだったのでしょうか?

下の長崎大学病院によるデータによると、医師の診療時間が増え、研究・教育時間が減っています。これは、他の国立大学でも同様の現象が起こっていますね。

しかし、臨床系教員の業績の年度別推移は、法人化前の平成15年に比べるとわずかに減っているかもしれませんが、それほど大きくは減っていません。


それを、他のデータベースでも調べてみました。下の図は旧帝大を除く35の国立大学の個別の臨床医学論文数について、トムソン・ロイター社学術の論文データベースUSI1981ー2009のデータから分析したものです。大きく減っている大学と、あまり減っていない大学とがありますが、長崎大学は減っていない大学の一つです。(個別の大学名は、トムソン・ロイター社との約束から出せないことになっています。)

ただし、このような論文データベースは、毎年、論文数をカウントする学術雑誌が変更されて数が増えていきますので、それまで、書いていたけれどもカウントされなかった論文が、ある年以降からカウントされ出すことがあります。つまり、見かけ上論文数が増えていても、実際のアクティビティーは変わらなかったり、見かけ上論文数が不変でも、実際のアクティビティーは低下していることもあり得ます。(ただし、見かけ上減っている場合は、確実にアクティビティーも低下している。)


さらに、医学論文については、PubMedという公開されている学術論文データベースが利用できるので、それでも調べてみました。下の図は、世界的に著名な臨床医学雑誌119誌の掲載論文数の変化(つまり、質の高い臨床医学論文数の変化)を、同じく旧帝大を除く35国立大学で個別に示したものです。



このグラフでは長崎大学はマーク付きの赤線で示してあります。

ほとんどの大学が急速に質の高い臨床医学論文数を減らしているのに対して、唯一長崎大学だけが現状を維持しておられます。そして、2010年は、旧帝大も含めた国立大学の中で上から9番目に位置しています。

論文数には複数のファクターが影響するので、確実なことは言えませんが、やはりこの結果は長崎大学の先生方の頑張りの賜物ではないかと思っています。

ただし、最近2年間、長崎大学病院ではかなりの経営改善努力をされたので、そして、そのような負荷が論文数に反映されるのには、多少のタイムラグがあるので、今後の長崎大学の論文数の変化については、注視させていただきたいと思っています。いずれにせよ、今後も、なんとかがんばって論文の質と数を維持していただきたいですね。

(現状では”増やして”ほしいとは言えずに、”維持”してほしいとしか言えないのが、悲しいところです。)

今、国の財政が苦しいことから、平成24年度の大学予算についても10%減のマイナスシーリングがかかっていますね。これが復活せずに、大幅な予算削減になれば、さすがの長崎大学も、持ちこたえられないと思います。

下は最後のスライドです、


ちなみに、この150周年記念講演には、何人かの国会議員さんも出席されておられました。為政者の皆さんには、このような状況をぜひとも分かっていただいた上で、政策を決定していただきたいと思っています。

 

これで、長崎大学病院150周年記念式典のブログはやっと終了です。読者の皆さんには長いおつきあいをありがとうございました。




 

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