長崎大学病院150周年記念式典での講演の報告の3回目ですね。前回までは、世の中が大いなる不安定の状態になっており、大学や大学病院もその中に巻き込まれて、存続そのものが不安定になっていることをお話ししました。
今回は、わが国の大学病院の学術の競争力がどう変化しつつあるかということの説明です。
これは、文部科学省の科学技術政策研究所のデータをもとに、私が作図したものですが、臨床医学の論文の中で、被引用数がトップ10%の論文、つまり質の高い論文数の変化を示したものです。欧米主要国が軒並み右から上がりであるのに、日本だけが減少しています。
それを大学群別に調べてみると、まず、国立大学の論文数が圧倒的に多いことがわかりますが、その国立大学の論文数が急激に減少していることがわかりますね。
この図は、PubMedという、ネット上で公開されている医学論文のデータベースを用いて、北大病院呼吸器内科の西村先生と私で分析をしてものですが、臨床医学の著名な119のジャーナルに掲載された論文数の変化を示しています。つまり、これも質の高い臨床医学論文数を反映していると考えられますが、中国、韓国が急増しているのに反し、日本は急減しています。
それを、大学群別に調べたのが、この図です。すべての大学群で減少しているのですが、その中でも、地方国立大学の変化が、より急激です。2000年ころまでせっかく論文の質を高めてきた地方大学は、その後、急激に論文の質を低下させています。
これは、大学間格差の拡大を反映していると考えられます。
これは全分野についてトップ10%の論文数を示したものですが、主要国で減少しているのは日本だけですね。
このようなわが国の研究機能の低下しつつある現状を、7月4日付けの日経新聞に投稿した私の記事です。
わが国の財政はひっ迫しており、24年度の科学技術や高等教育予算についても、マイナス10%のシーリングがかかりました。昨年も、マイナス10%のシーリングがかかったのですが、財務省が政策コンテストでパブコメを募ったところ、大学や科学技術の要望について、圧倒的多数のパブコメが集まり、大学や科学技術予算は政治判断で復活しましたね。
でも、今回は政策コンテストやパブコメは行われず、予算の復活はたいへん厳しい状況であると考えられています。わが国が直面している現下の厳しい状況を乗り切るにはイノベーション力をさらに高めるしか方法がないように思うのですが、シーリングが復活せずにイノベーション力を低下させる政策がなされた場合、果たして、わが国の将来はどうなるんでしょうかね?
いずれにせよ、国立大学や付属病院が、この国家財政の苦しい時に、税金の投入について国民の理解を得るためには、下のスライドにお示しした「公的使命の実践」と「広報」を実行するしかないと思われます。
続きは次回のブログで。
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