ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

長崎大学病院150周年記念式典にて(その2)

2011年10月04日 | 日記

さて”長崎大学150周年記念式典にて”の2回目ですね。

IDE(現代の高等教育)誌から「大学と地域医療」という原稿を依頼されて、締切日が過ぎてしまって、それに時間をとられていたので、なかなかブログ更新ができませんでした。IDEの記事については、後日ブログ上でも紹介することにしたいと思っています。

前回はスライド3枚ほどの解説で終わっています。今日は4枚目からですね。

4枚目は、今では、一般社会と同様に、大学においても「大いなる不安定」の時代となっており、それを象徴するエピソードの一つを紹介しています。

これは、平成19年に新聞にのった記事で、”「競争」したら国立大半減””三重など24で消失か?”という見出しです。

なんで三重大が名指しをされたのか、よくわからないんですけど・・・(場内爆笑)

当時は、経済財政諮問会議が新自由主義にもとづくさまざまな提案をしており、国立大学についても、運営費交付金を科学研究費の取得額で傾斜配分するという試案が、財政制度等審議会の資料に出ました。そうすると、多くの地方国立大学で運営費交付金が半減するという計算になります。財政が厳しい折、地方国立大学の存在意義が問われました。

それに対して、当時三重大学長であった私は緊急記者会見を開き、地方大学がいかに地域に貢献しているかを訴えました。そうしたら、当時の三重県知事と津市長がただちに動き、近畿知事会、そして最終的には全国知事会の反対決議にまで至りました。

地域の皆さんから支持をいただいたのは、やはり、各大学が、特に国立大学法人化後、地域貢献に努力してきた賜であると思っています。

骨太の方針の原案で、最初は運営費交付金の「大幅な傾斜配分」と書かれていた文言は、最終的に「適切な配分」に変更され、地方大学にとっての危機は一応回避されました。



この図は、国立大学病院をめぐる、特に法人化前後からなされた政策と、それに伴って起こったできごとを、単純化して連関図で示してあります。あくまで、私の個人的な考えですけどね。

一貫した医療費と医師数の抑制政策の中で、新医師臨床研修制度の導入、国立大学法人化(競争原理、傾斜配分)、国立大学への交付金削減と債務負担増、診療報酬マイナス改定などの政策がなされ、赤字病院の増、若手医師流動化、大学間格差拡大などを招き、若手医師不足と研究時間の減少を招いて、地域病院への医師供給機能の低下と学術の国際競争力の低下を招いた、というのが、この図の主旨です。

このスライドは、このような事態に対して、国によって最近なされた主な政策を簡単にまとめたものです。

まず、平成20年から医学部学生定員が増やされましたね。ほんとうに医師が不足しているのか、科学的に証明することはなかなか難しいことなのですが、私は、この政策は正しい政策であると思っています。

また、。診療報酬もマイナス改定が行われていましたが、平成22年度にプラス改定がなされました。これで、病院は一息つくことができました。

平成23年度の大学関係や科学技術関係の予算は、当初10%減のシーリングがかけられていましたが、昨年行われた政策コンテストで、圧倒的多数のパブコメが集まったこともあり、政治主導で復活しましたね。

この続きは、次回にしたいと思います。

もう少し早く更新をしないとね。

 


 

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2 コメント

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大学評価について (kohakku)
2011-10-10 17:34:39
初めてコメントします。8月26日の評価制度に関する文章の後半部分について、確かに評価を受けた後については不透明だと思います。

近年、国立も私立も「大学評価」は大学関係者の中で最も関心があり、話題に上がるテーマだと思います。
私立は認証評価の結果で経常費補助金が減額されることはありませんが、運営交付金にも反映される国立大学法人評価などを見ていると国立の方がよりシビアだと思います。

評価にも「認証評価制度」「国立大学法人評価」「専門分野別評価」などがありますが、目的の一つに評価の結果を社会に公表して、理解してもらうということがあります。多額の税金が投入されている以上、国立も私立も社会から評価を受けるのはある意味当たり前だと思います。

大学評価・学位授与機構のホームページには、認証評価制度の目的は、「大学等の質を保証する」 「評価結果が公表されることにより、大学等が社会による評価を受ける」 「評価結果を踏まえて大学等が自ら改善を図る」、としています。

そもそも評価制度は誰のためにあるかと考えましたが、上記三つの内、「大学等の質を保証する」 「評価結果が公表されることにより、大学等が社会による評価を受ける」は社会や費用負担者である保護者、受験生、高校のためのものと考えて良いと思います。

ここで一番の問題は、大学評価が「社会から認知されていない」ことだと思います。高校教員数名に、大学の評価制度について尋ねてみると、全員が「知らない」と言っていました。高校教員が理解出来ていないことを、受験生や保護者が知っているとは考えにくいですし、大学関係者以外に評価制度のことを理解している人はほとんどいないと思います。

大学評価・学位授与機構などの評価機構も、大学内での影響についての調査はしていますが、自分で調べた限り、社会からの認知度に関する調査はしていないようです。
確かに評価結果に基づいて大学が改善されると目的の一部は達成したということになりますが、最も大切な部分が置き去りにされたまま評価事業が進んでいる印象が拭えません。

※三重県内私立大学30代の男性事務職員です。よく事務局でお見かけします。ブログ開設以来のファンです。
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コメントありがとう (つぼやき)
2011-10-21 17:42:54
kohakkuさん。コメントありがとうございます。おっしゃるように、大学評価制度の社会からの認知度については、あまり調べられておらず、どうも低いようですね。社会が興味を持つのは、雑誌社が出している興味本位の大学ランキングですね。有益性よりも害の方が大きいようにも感じていますが、一般の人々は、ランキングだけを見て行動を選択することもありうるので、無視できない状況になっていますね。
きちんとした大学評価制度が国民に理解されるようになって欲しいものです。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。


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