ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

山中伸弥先生のノーベル賞(大学改革の行方その14)

2012年10月09日 | 高等教育

 昨夜の山中伸弥先生のノーベル賞受賞へのお祝いの言葉がtwitterやfacebookで溢れていますが、僕も改めておめでとうを言わせていただきます。このところの日本は暗い問題が多かっただけに、この国民を勇気づけてくれる受賞は、ほんとうに価値ある明るいニュースでしたね。山中先生のご講演は、今までに3回ほどお聞きしたことがあり、つい最近も、京都大学が9月19日に東京で開催した「京都大学フォーラム」でお聞きしたばかりです。この時は川端達夫総務大臣や森口泰孝文部科学次官がご挨拶されました。森口次官のご挨拶の中で僕の記憶に残っているところは、「”山中先生がマラソンに参加をして研究費の寄付を呼び掛けておられるが、文科省はちゃんと支援をしているのか”、などと、いろんな人から言われているが、それは誤解であり、文科省はしっかりと支援をしています。」とのお言葉でした。山中先生が朝の報道番組に出演されて、非正規の研究者を正規雇用するためにお金がいるので、基金に寄付をしてほしいと訴えておられたことは、僕の以前のブログでも書きましたね。

 文部科学省関係の25年度の概算要求を見てみると、「ライフイノベーションの推進」の中に「再生医療実現拠点ネットワークプログラム(拡充)」という項目があり、約87億円が要求されており、24年度よりも42億円の増を要求しています。その説明としては「疾患・組織別に再生医療の実用化研究等を実施する拠点を整備するとともに、iPS細胞研究中核拠点を中心に、効率的かつ安全なiPS細胞の樹立に資する基盤研究を実施する。」とあります。

 また、それに加えて「特別重点要求」として、「iPS細胞研究等による再生医療の実現」として80億円が要求されています。「iPS細胞」という、狭い範囲の専門用語をタイトルに使って要求されている点も異例ですね。

 もちろんこれがすべて山中先生に配分されるわけではないでしょうけれども、森口次官のおっしゃるように、しっかりと支援されているように思えます。特に今回ノーベル賞を受賞されたことで、「特別重点要求」も財務省にお認めいただける可能性が高くなりましたね。

 もっとも、1件300億円~400億円のプロジェクトが並んでいる原子力や宇宙開発と比べると、比較になりませんけどね。

 いずれにせよ、日本の学術論文数が低迷して、国際競争力がどんどんと低下している状況で、今後の科学技術予算を確保する大きな追い風となることを大いに期待したいと思います。

 何回も中断してすみませんが、国大協のセミナーの僕の講演の後半部分は、次回に回します。

(このブログは豊田の個人的な感想を述べたものであり、豊田が所属する機関の見解ではない。)

 

 

 

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1 コメント

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医学だけでなく純粋数学の研究環境担保につながる議論を (tribute-2x2)
2012-10-09 22:46:41
整数論に関するABC予想に一石を投じた京都大学数理解析研究所の望月新一教授のような、基礎研究の極致である数学者が、10年間も同一問題に関して人生をつぎ込める生活の保障ができる提言となっていることを期待しております。

望月教授の成果は、整数論での大きな一歩であり、楕円関数論などを通じて暗号理論やセキュリティなどへの影響が生じる点で、iPSなどの医学分野と実生活への影響度は肩を並べるものであります。

iPS が予算を得るのに、純粋数学は予算を得られないので良いのか。それを当然踏まえた議論を期待します。

京大教授、数学の難問「ABC予想」解明か ニュース 教育 YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20120919-OYT8T00643.htm

16歳で米大学に入学 「ABC予想」望月京大教授、異例ずくめの経歴 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/science/news/120919/scn12091900540001-n1.htm

『今回発表した500ページにわたる4編の論文は1人で書き上げた。望月さんを知る研究者は「今回の論文執筆に少なくとも10年、間断なく集中してきた。まだかなり興奮しているのではないか」と話した。』
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