マディと愛犬ユーリ、親友のクリスティ、それにハワイのこと

ハワイに住んでいたころ、マディという女の子が近所に住んでいて、犬のユーリを連れて遊びに来ていた。

" I've seen black bears ! "  ( クマを見たよ! )

2014-01-23 08:58:05 | 旅行

 

(6)

 

 

 ジムは、メイン州のバクスターからトレイルに入った。
 一日目は穏やかな天気だったが、2日目から3日間を通して雨が降り続いた。もちろんフッドのついた防水着、防水パンツ、登山靴のトレッキング用装束をしていたが、周りの景色も見えない、冷たい風雨が吹きつける、道は雨でぬかるんで、時に濡れて滑る岩山をよじ登りながら、ルートに沿って時々現れる「sign post」(標識)を手探りで見つけながら歩くのは、とにかく辛かった。
 勿論こんな天気では、道端で野宿は難しいが、時々小さなシェルターが沿道にあって、そのどれかに夕暮れ時辿り着いたときに泊まることにしていた。
 シェルターと言っても、あくまで避難用の小さな小屋で、「three-walled shelter」と言って三方が壁になっていて、表の一方は何もついてなく、壁もドアもない吹きさらしだった。
  一晩中蹲ったまま朝が明けるのを待っていた。夜の帳が降りると、どう過ごしていいのわからないほどだった。本をもってきていたが、明かりがない。ひたすら吹きつける雨に身をさらしながら耐えていたのである。早く朝が訪れればいいと願いながら、立膝を両手で抱きながらじっと座っていた。
  
 歩き始めたばかりだし、一度諦めて、再度別の日に挑戦したほうがいいのではないかと、すでに音をあげて帰りたい気持ちでいっぱいになっていた。
 それでも岩場を見つけて、しゃがみ込み風雨に打たれながら休憩をしたりしながら、自分を励まし頑張ろうという気を起こすのに必死だった。
 帰ろうと思えば簡単だった。いつでも帰れる。しかしそうしたらどうなるのだろう。ますますみじめな自分がいるだけである。やはり頑張ろう。一週間もするとなんとかやれるのでは、と言う前向きな気持ちになってきたのである。
 
 天気も晴れてきた。ある時、靄でかすむ道を歩いていると、風の音でもない、動物が騒ぐ音でもない、確かに人間のカサカサという足音が近づいてきた。まさしく人間だった。
 お互いにすれ違う時に、「やあ!」と声をかけていた。
 「あとどれくらいですか?」とその人が言った。
 ジムと違っていかにも山歩きに慣れた人に見えたので、「あなたの足なら、3,4日もあれば」と答えた。彼は思わず万歳のボーズを取り、大仰にうれしさを表現した。
 「6か月かかって、ついにスルーハイクだ!」といかにも嬉しそうだった。
 「ジョージアから来たのですか?」「そうです!」 ジムも、自分のことのようにうれしい気持ちになった。
 彼と、尾根の岩場に座りながら、しばらく話をした。
 彼はリュックからソーセージを2本取り出し、ひとつをジムに与えた。プラスティックのボトルを取り出し中の水を飲みだした。そのボトルを差し出し、彼にも飲むようにと仕草をした。
 「自分は、まだ歩き始めたばかりで音を上げているのに、彼は、6か月も歩き通して、しかも終点に近づいているのだ!」と思うと、ジム自身頑張る意欲のようなものが生まれてきた。

 ネズミや蛇、クマなどは御免だが、時々愛すべき動物たちに出会うことがあった。
 一度などカメが黙々と道の真ん中を歩いていた。思わず立ち止まり、甲羅を指で突いてみると、顔を出しこちらを見た。
 「コンニチワ!ドコニイクンダイ?」
 「オジサンハ、ドコニイクノ?」
 「ジョージアマデイキタイケド、イケルカドウカワカラナイヨ」
 暫し立ち止まり、彼?との会話を心の中で楽しんだ。甲羅から顔をのぞかせた時の彼の愛くるしい顔は忘れられない。

 クマ( black bears )にも何度か出会ったが、ワイオミングやサウスダコタで見た、あのような大きいものではなく、「叱!叱!」と追い払えば、クマのほうから逃げていくから、そんなに恐れることはないようだ。


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4 コメント

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Unknown (さくら)
2014-01-25 20:28:33
野生のクマを見たことはありません
きっと固まってしまうか、大急ぎで逃げるか・・・
分かりません  
出来れば一生会いたくないです

クマがよく出てくるような環境、に住んでいる人は慣れているのかしら 
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さくらさんへ (yamada)
2014-01-25 22:17:15
 アメリカでは、身近なところにいろいろな動物がいます。

 ペンシルバニア大学のキャンパスではシカがいました。

 夕方近くになると一斉にウサギが出てきて遊んでいました。

 ウイスコンシン大学では、冬の雪の上をたくさんのリスが走っています。

 ミネソタでは、ビーバーをよく見ました。

 イエローストーンでは、大きなクマたちが道をふさいで遊んでいました。さすがに運転手は。襲われるから外に出ないようにと言っていました。
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クマとは驚きです (ほっとひと息)
2014-01-26 09:49:27
知床に行った時に「クマ出没注意」の看板は見ましたが
出会ったことはありません。
考えるだけで怖いですね。

野生の動物で出会ったことがあるのは猿(奥日光)、
キタキツネ(阿寒湖の近くの道端)、
タヌキ(我が団地)位ですかね。
ウサギ、リス、ビーバーは出会ってみたいですね。
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ほっとひと息さんへ (yamada)
2014-01-26 17:06:02
 ロッキー山脈には、リスがたくさんいて、人を怖がらず、手を差し出すと乗ってきたりしていました。

 ヨセミテでは、屋外のテーブルで食事をしていたら、リスがよじ登ってきて、我々の皿の食べ物を一緒に食べました。

 ウイスコンシンではアライグマがよく見ました。

 ミネソタでは、車に衝突したシカが道に転がっていました。

 ハワイでは、小鳥たちが家に入ってきて、食べ物を強請ってきます。
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