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ウイリアム・フォークナー(William Faulkner)の「エミリーのバラ」(A Rose for Emily) を読んでから、彼の小説に興味を持っていて、機会があれば別の作品も読みたいと思っていた。
若いころの話である。
東京御茶ノ水の丸善を覗いていた時、「アブサロム、アブサロム!」(Absalom,Absalom!)を見つけたのをいい機会に、思わず買ってしまった
特にこの本を探していたわけでなく、数ある彼の作品の中で、唯一「アブサロム、アブサロム!」がそこにあっただけである。
家に持って帰って読み始めてみると、いかにも難解で、というのが英語そのものが読み難いことの上に、筋が入り乱れて複雑であること、描かれている出来事が、あちこち錯綜していること、登場人物の心の中にある意識が語られていて、ある意味読みづらいと同時に、面白くないとさえ感じてしまうほどだった。
彼は、20世紀のアメリカを代表する作家で、もう一人の巨匠アーネスト・ヘミングウエーと共にノーベル賞ももらっていて、評価も高い作家なのである。
ヘミングウエーは、大衆性のある小説家である。
文章も、簡潔で読みやすい、筋がシンプルで分かりやすい、したがって多くの人に人気があった。
彼の書いた作品の多くが、映画になっていて、一般受けのする作家なのである。
一方、フォークナーは、初めのころ、アメリカでは受け入れられることはなく、どちらかというと、ヨーロッパ、とくにフランスで高い評価を受けていた。
彼は、生まれ故郷のミシシッピー州オックスフォードの町に住み続けて、オックスフォードの地を、架空の「ヨクナパタファ郡ジェファーソン」と言う町に置き換えて、そこに暮らす人物、出来事を連綿と描き続けた。
「サートリス」、「響きと怒り」、「兵士の給与」など有名な作品を書き続けるが、それぞれの作品に登場する人物が、他の作品にも出てきて、それらを繋ぎ合わせて読み進むと、事件との関わりや人となり、その人の歴史などが鮮やかに浮かび上がって来るようになっている。
南部の保守的で閉鎖的な風土の中で、どうしょうもない因習、いびつな人と人との関わりあい、それらの人たちが引き起こす出来事などが描かれているのである。
彼の描く世界は、「ヨクナパタファ・サガ」と呼ばれ、独特な南部の閉鎖的な世界である。
ここでフォークナーを話題にしたのは、実は彼が、ミシガン州立大学など、アメリカ中西部から西部カリフォーニアに至る州立の名門大学に、いわゆる「パブリック・アイビー」(Public Ivy)の名を授けた人だからである。
最初、イギリス人が、新境地を求めてアメリカに移住してくる。
彼らが「ニューイングランド」と名づける土地に、新しい社会を築こうとしたのである。
しかし、彼らが持ち込んだものは、旧来のイギリスそのものだった。
政治、経済、教育などイギリスにあるものをそのまま移しただけであった。
教育制度も、オックスフォードやケンブリッジの高等教育の制度をそのまま、新しい地に構築したのである。
イギリスのよき時代の教育機関が次々に誕生する。
ハーバード大学ができたのは1636年である。
イエール、コロンビア、ペンシルバニア、ダートマス、ブラウン、コーネルなどができていった。
400年を経て、今や世界に冠たる名門大がに育っていったのである
これらは、何れも私立の大学で、これらを総称して「アイビー」と呼ばれるようになった。
もともとは、Inter-Varsity(大学連盟)と言っていたもので、IVYをこの文字の中から取り出し、略称として「Ivy」と呼ぶようになったようである。
トシの友人に、
「何故ハーバードをアイビーと言うの?」と訊いたことがある。
何れも古い建物で、赤レンガの建物に蔦が這っているさまから、「ツタの学校」と言われるようになったのだろう、というのが返事であった。
それは、正しい。
ある時、ニューヨークの新聞が、同じ理由から、これらの大学を「ツタの学校」と言って記事にしている。
最近では、一般にも、そのように解釈されているようなのだ。
南北戦争のさなか、1862年に、アメリカ合衆国議会において、「モリル・ランドグラント法」が通過した。
これは、連邦政府が所有している土地を提供して、中部から西部の内陸部の各州に、軍事や農学の高等教育機関をつくるというのが目的だった。
この恩恵を、最初に受けたのがミシガン州立大学だった。
ミシガン州立大学は、それに遡ること7年、1855年の創立である。
ウイリアム・フォークナー(William Faulkner)の「エミリーのバラ」(A Rose for Emily) を読んでから、彼の小説に興味を持っていて、機会があれば別の作品も読みたいと思っていた。
若いころの話である。
東京御茶ノ水の丸善を覗いていた時、「アブサロム、アブサロム!」(Absalom,Absalom!)を見つけたのをいい機会に、思わず買ってしまった
特にこの本を探していたわけでなく、数ある彼の作品の中で、唯一「アブサロム、アブサロム!」がそこにあっただけである。
家に持って帰って読み始めてみると、いかにも難解で、というのが英語そのものが読み難いことの上に、筋が入り乱れて複雑であること、描かれている出来事が、あちこち錯綜していること、登場人物の心の中にある意識が語られていて、ある意味読みづらいと同時に、面白くないとさえ感じてしまうほどだった。
彼は、20世紀のアメリカを代表する作家で、もう一人の巨匠アーネスト・ヘミングウエーと共にノーベル賞ももらっていて、評価も高い作家なのである。
ヘミングウエーは、大衆性のある小説家である。
文章も、簡潔で読みやすい、筋がシンプルで分かりやすい、したがって多くの人に人気があった。
彼の書いた作品の多くが、映画になっていて、一般受けのする作家なのである。
一方、フォークナーは、初めのころ、アメリカでは受け入れられることはなく、どちらかというと、ヨーロッパ、とくにフランスで高い評価を受けていた。
彼は、生まれ故郷のミシシッピー州オックスフォードの町に住み続けて、オックスフォードの地を、架空の「ヨクナパタファ郡ジェファーソン」と言う町に置き換えて、そこに暮らす人物、出来事を連綿と描き続けた。
「サートリス」、「響きと怒り」、「兵士の給与」など有名な作品を書き続けるが、それぞれの作品に登場する人物が、他の作品にも出てきて、それらを繋ぎ合わせて読み進むと、事件との関わりや人となり、その人の歴史などが鮮やかに浮かび上がって来るようになっている。
南部の保守的で閉鎖的な風土の中で、どうしょうもない因習、いびつな人と人との関わりあい、それらの人たちが引き起こす出来事などが描かれているのである。
彼の描く世界は、「ヨクナパタファ・サガ」と呼ばれ、独特な南部の閉鎖的な世界である。
ここでフォークナーを話題にしたのは、実は彼が、ミシガン州立大学など、アメリカ中西部から西部カリフォーニアに至る州立の名門大学に、いわゆる「パブリック・アイビー」(Public Ivy)の名を授けた人だからである。
最初、イギリス人が、新境地を求めてアメリカに移住してくる。
彼らが「ニューイングランド」と名づける土地に、新しい社会を築こうとしたのである。
しかし、彼らが持ち込んだものは、旧来のイギリスそのものだった。
政治、経済、教育などイギリスにあるものをそのまま移しただけであった。
教育制度も、オックスフォードやケンブリッジの高等教育の制度をそのまま、新しい地に構築したのである。
イギリスのよき時代の教育機関が次々に誕生する。
ハーバード大学ができたのは1636年である。
イエール、コロンビア、ペンシルバニア、ダートマス、ブラウン、コーネルなどができていった。
400年を経て、今や世界に冠たる名門大がに育っていったのである
これらは、何れも私立の大学で、これらを総称して「アイビー」と呼ばれるようになった。
もともとは、Inter-Varsity(大学連盟)と言っていたもので、IVYをこの文字の中から取り出し、略称として「Ivy」と呼ぶようになったようである。
トシの友人に、
「何故ハーバードをアイビーと言うの?」と訊いたことがある。
何れも古い建物で、赤レンガの建物に蔦が這っているさまから、「ツタの学校」と言われるようになったのだろう、というのが返事であった。
それは、正しい。
ある時、ニューヨークの新聞が、同じ理由から、これらの大学を「ツタの学校」と言って記事にしている。
最近では、一般にも、そのように解釈されているようなのだ。
南北戦争のさなか、1862年に、アメリカ合衆国議会において、「モリル・ランドグラント法」が通過した。
これは、連邦政府が所有している土地を提供して、中部から西部の内陸部の各州に、軍事や農学の高等教育機関をつくるというのが目的だった。
この恩恵を、最初に受けたのがミシガン州立大学だった。
ミシガン州立大学は、それに遡ること7年、1855年の創立である。
「パブリックアイビー」は「アイビーリーグ」の公立版と考えていいのでしょうか?
「アイビー」の正しい意味 初めて知りました。
エミリーの薔薇って、どんな内容ですか?
私もアイビーの意味初めてしりましたよ。
知識が豊富で(当然ですが)、インテリそのものです。
とてもお詳しいので、この場でにわか勉強させてもらいます。
>何れも古い建物で、赤レンガの建物に蔦が・・・
甲子園の蔦を連想しました。
蔦に覆われている建物は歴史を感じます。
当初は、軍事と農学の機関でしたが、その後、あらゆる学部を網羅して発展しました。
基本的には、各州に、一つづつ総合大学が出来ていったのです。
アメリカでも、この物語をeccentric(異常な)、そして悲劇的な話と評する人がいますが、私には、何かエミリーに同情してしまう気持ちになります。
アイビーリーグの大学は、400年の歴史を経て、世界に冠たる高等教育機関に発展してきました。
今では、イギリスのオックスフォードやケンブリッジなどを卒業した人たちが、逆にアメリカに来て、これらの大学で学んでいます。