(24)
我が家には、公的な機関から依頼されて、また、個人的にやって来る「ホームステイ」する外国人は、いろいろいた。
ほとんどは、アメリカ人だったが、タイ人、エジプト人などもいた。
食事は、いつも、自分達が食べている物しか出さない。
朝など、みなさん、「味噌汁」を美味しそうに?啜っている。
「箸」をぎこちなく動かしながら、それでも、一生懸命に食事をする風景は、ちょっと言えば、滑稽でもある。
野菜の煮物、焼き魚、漬物など、いつもの食事である。
女性の場合、台所に一緒に立って、ワイワイ、がやがやしゃべりながら、手伝いもする。
好奇心のある人は、いちいち料理のことを尋ねながら、ノートに書き留めている。
勝手にスーパーなどに行って、食材を買って来ては、我々をもてなすつもりか、故郷の料理を作ってくれたりするのである。
頼まれない限りは、勝手に、なんでもさせている。
洗濯機や乾燥機をまわして、洗濯などもしている。
庭に出て、花の手入れを手伝ってくれたりもするのである。
デパートの地下の食品売り場が気に入る人は多い。
あちこちを試食しながら歩き回る。
言葉が通じないのに、盛んに身ぶりを入れながら、質問をしている。
彼女らが、共通して気に入るのは、レストランのショーケースにある模造のメニューの陳列である。
これらが、本物でないことにいたく感動するようで、
「ほしいなあ!」
「何処に行ったら、買えるの?」とか言った人もいた。
タイから来た女子学生とは、湯布院に一緒に旅行した。
ホテルの浴場に娘と入って行ったが、みなさんが裸で入浴しているのを見て、すっかり怖気づいてしまった。
バスタオルを体中に巻き付けて、風呂場の隅っこにじっとしていたようだった。
タイでは、大勢の人が裸で、一緒に風呂に入るなどといった習慣がないのだろう。
びっくりしたのは、レストランでメニューを見ていた時、彼女が、
「 Is this hen?」 (これはチッキンですか?)と言った。
アメリカでは、鳥料理は、「チッキン」 (chicken)と言う。
「 hen 」は、雌鶏という意味はあっても、料理では、チッキンの代わりに使われているのを聞いたことがない。咄嗟に、
「 What's hen, anyway? 」 と聞き返した。
アメリカ人の女性たちが滞在中、丁度台風が襲って来た事がある。
こちらとしては、台風が早く通過してくれることを願っているのだが、
「ビューン、ビューン!」と音をたてる強風が、よほど珍しかったのか,外に出て、木々が折れ曲がるさま、瓦が散乱するさまを、
「オウッ!」とか叫びながら、その瞬間を写真に収めて感動する人もいた。
どう見ても、白人にしか見えないアメリカの女性が来た事がある。 実は、祖母が日本人ということだった。
出身が鹿児島で、この機会にということで、バスを乗り継ぎ、鹿児島まで墓参りに行った。
食事は、原則、日本食しか出さなかったが、例外が一人いた。
エジプトから来た高校の物理の先生で、彼はイスラム教徒であるために、食べる物が戒律で厳しく制限されていた。
事前に、食べていいもの、いけないものを聞いていて、それに合わせることにしていたのである。
彼が「ホームステイ」していた間は、我々も、彼と同じ食事にした。
彼は、一日に数度、メッカの方に向かって祈りをささげていた。
いい人で、庭で何かをしていると飛んできて手伝ってくれた。
何より話好きで、ほとんど、独りでしゃべりまくっていたのである。 かなり、癖のある英語で、聞き取るのに苦労をした。