マディと愛犬ユーリ、親友のクリスティ、それにハワイのこと

ハワイに住んでいたころ、マディという女の子が近所に住んでいて、犬のユーリを連れて遊びに来ていた。

アメリカでの味噌汁の味

2010-10-09 17:22:16 | 日記

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 もう、ずい分昔のことである。
 初めてアメリカを訪れて、行った先がペンシルバニアだった。
 アパラチア山脈に囲まれた、のどかで、平和なところで、リス、鹿、ウサギなどが身近なところにいて、人間と共存しているようなメルヘンチックなところだった。
 周りを見ても、日本人はいなくて、研究機関にいた神戸大学から来た人と東北大学から来た人の二人ぐらいしか知らない。
 もう一人りというか、日本人の教授家族が住んでいた。
 この家族に、どのようにして知り合ったのか分らないが、ある時、唐突に、
 「家に夕食に来ませんか」と誘われたことがある。
  教授と奥さん、それに小学生の男の子の家族だった。
 奥さんが作った、久しぶりに食べる日本食には感動した。
 何より味噌汁が美味しかったのである。
 この辺りには、日本食堂などない。
 スーパーに行っても、日本的な物は、何も手に入らなかった頃である。
 大根、葱、白菜などの野菜は売っていないし、豆腐、醤油、味噌などもない。
 日本食が恋しくなると、かろうじて、街に小さな中華料理店があって、そこまで歩いて行っていたのである。
 焼き飯とワンタンスープが、お気に入りだった。

 この教授家族は、京都の出身だった。
 奥さんが作った味噌汁は、京都風のようだった。
 京都の味噌汁は、確か、このようなものだったと、思い出しながら頂いた。
 赤味噌かなあと思える、ちょっと濃い色の感じで、しかし、味は、あっさりしていて、中には、具がたくさん入って居るわけでない。
 そのあっさりした味の感触が、たまらなく美味しくて、思わず、
 「美味しいですね!」と、独り言のように言ってしまった。
 ひょっとしたら、味噌を日本から送ってもらっているのかと思い、訊いてみたら、1月に1度ぐらい車で、ニューヨークまで買い物に行くそうである。
 その時に、何から何までというわけではないが、出来るだけ日本食材を買いそろえるということだった。
 後日、アメリカ人のグループに誘われて、ニューヨークに行ったことがあるが、途中休憩を入れて、5時間ぐらいかかる距離だった。
 かなり、大がかりのな買い出し旅行のようだ。

 地元では、日本食の材料を手に入れることができない。
 当時は、醤油、豆腐、白菜、葱なども手に入らなくて、奥さんは、  「材料がなくて、すき焼きなど出来ません!」と言っていた。
 美味しい食事を感謝して、玄関で、
 「ありがとうございました」と言いながら、その家を辞そうとしていたら、
 「また、今度、味噌汁を召し上がりにいらっして下さい!」と言われた。
 今思い出しても、温かい味噌汁の感触が心にしみるように懐かしい。

 最近は、アメリカでも、日本食が持て囃されていて、テレビやマスコミ報道などで、「健康に良い」とか、「ダイエットに良い」などのキャッチフレーズで広く知られるようになってきた。
 日本人が、ほっそりしているのは食事がいいからだとかの噂話みたいなものが広まって、「日本食志向」が、巷で喧伝(けんでん)されているようだ。
 若い女性が、「おーい!お茶!」のボトルを手に、歩いていたりすると、思わず笑い顔になってしまう。
 
 どこのスーパーマーケットに行っても、キッコマンから味噌、豆腐、寒天、うどん、そばなど、それこそ何でも手に入るのである。 ウイスコンシン州のマディソンという街で、正月にお節料理を作った事がある。
 ほとんどの、食材を手に入れることができた。
 雑煮もつくった。
 ひとそろい、日本で作るようなお節料理が設えられたのである。
 一つ一つをテーブルに並べて、写真に撮ってみると、アメリカで作ったと思えないような、まさに日本の正月の風情が、目の前にあったのである。
 この日本の正月のセッティングのことを聞きつけた知人、友人たちが、面白がってやってきて、パーティのようになってしまった。

 一つには、日本のテレビで「料理の鉄人」(?)という番組があって、それをそっくりアメリカで、テレビ番組として流したら、これが好評だった。
 街で遊んでいた友人が、
 「今から帰る!『料理の鉄人』がを見ることにしているから」と言ったのには驚いた。
 今では、「料理の鉄人」を、そっくり真似した番組がある。
 アメリカ版の料理番組、その名も「アイアン・シェフ」 (Iron chef)が人気番組になっている。
 これは、料理の作り方を見せるというより、料理をパフォーマンスとした、言ってみると娯楽番組である。
 アメリカでは、日本食への関心が、ますます高まってくるようだ。